四日市コンビナート夜景クルーズを訪ねて(日本・三重)

視察日:2013年8月31日

 三重県四日市市(人口312,688人、131,682世帯、面積205.58平方キロメートル:平成26年6月1日現在四日市コンビナート夜景クルーズ)の「四日市コンビナート夜景クルーズ」を堪能してきました。四日市コンビナートの夜景を船から眺める「夜景クルーズ」は、2010年から始まり、今年(2014年)5月)でなんと乗客が1万人に達しました。かつて、四日市コンビナートと言えば、工場排煙や排水で公害がひどく「四日市ぜんそく」として、1950年代から1960年代に顕在化した四大公害病の一つとして数えられていました。今回の視察レポートでは、四日市コンビナート夜景クルーズの魅力もさることながら、日本の近代化に至った背景や公害を乗り越えて、その教訓を今後に生かしていく視点なども織り交ぜながら見ていきたいと思っております。

 かつて社会科の教科書で公害病のことを学び、改善に進みつつあった1970年代でしたが、実際に、私が子供のころ、四日市の沿岸部を通っている国道23号線を走っていて、子供心に伊勢の向かう車の中で、窓を閉めても臭いがひどかった記憶が残っています。それが、今や環境技術も進み、空気もきれいになり、臭いもなく、夜景クルーズを楽しめるようになってきています。

 四日市だけでなく、全国的にコンビナート、工場が人気になってきている背景には、「工場萌え」という人たちが出てきたことが大きいです。工場萌えとは、どのような人たちを指すかと言えば、コンビナートや工場の夜間照明や煙突・配管・タンク群の重厚な構造美を奏でる工場観賞(工場鑑賞)を趣味とする人たちのことです。これまでは決してきれいとは言えない外観の工場に美を見出す動きがインターネット等を通して5,6年前くらいから拡大してきています。

 直接的ではないですが、「工場萌え」つながりでは、先日(2014年6月)富岡製紙場が世界遺産に登録されました。日本の世界遺産登録は18件目で、近代の「産業遺産」としては初めてです。歴史的・文化的に価値ある工場や機械な四日市コンビナート夜景クルーズどの産業文化財や産業製品を通じて、ものづくりの心にふれることを目的とした産業観光という言葉もいまや一般化してきていますが、新たに富岡製紙場が加わった形です。富岡製紙場は、1872年(明治5年)から1987年まで115年間創業した機械製紙工場で日本の産業近代化をけん引しました。

 世界遺産の登録が決まり、富岡製糸場には見学者が殺到しており、平日でも開館前から長い列ができ、近隣の駐車場も混雑しているようです。昨年、世界遺産に登録された富士山と違い、富岡製糸場はこれまでそれほど全国的に知名度が高くなかっただけに、一気に注目され、年内(2014年6月時点で)の団体見学の予約はもう満杯で地元もびっくりするほどの観光客が来ているようです。

 その後の高度成長、公害病にもつながってくると思いますので、富岡製糸場が操業した明治という当時の置かれた状況を少し見ていきます。その後の高度成長、公害病にもつながってくると思いますので、当時の置かれた状況を少し見ていきますと、明治政府は日本を近代化し世界の先進諸国と立場にするために、昔教科書で習ったと思いますが「富国強兵」「殖産興業」を重点施策としていました。その中で、富岡製糸場の生糸は主要な輸出品目で、輸出総額の約70〜80%以上を占めた時期もありました。外国人から外国資本による製糸工場の建設の要望もあったようですが、政府は近代的な製糸工場を国内資本で建設することが日本の産業発展の基礎となると考え、富岡製糸場ができました。富岡製糸場は製糸業に関する外国資本の侵入を抑える役目も果たしたと言えます。

 また、次は2015年の世界文化遺産登録を目指して、福岡県の八幡製鉄所などを含む九州、山口県など計8県に及ぶ「明治日本の産業革命遺産 九州・山口関連地域」が動き出しています。この中には、長崎県の通称「軍艦島」として知られている端島(はしま)も含まれています。軍艦島はテ四日市コンビナート夜景クルーズレビの特集などで見たことがありますが、名前の通り、島の外観が軍艦に類似しており、炭鉱でにぎわった当時の建物(生活様式)がそのまま残っています。私自身行ってみたい島でもあります。

 今回、ちょうど船上していう時、長島スーパーランドから花火があがるなど四日市コンビナート夜景クルーズを堪能してきましたが、四日市には、公害で苦しんできた人が多くおり、その公害を乗り越えてきた歴史の上に、今があるということを忘れてはいけないと思います。ここで少し、公害の教訓を次世代に伝えていこうという取り組みをみていきたいと思います。1950年〜1960年代に顕在化した4大公害病などの公害被害地域が、公害資料館ネットワークを発足させています。ネットワークには、四日市ぜんそくはじめ水俣病(熊本県水俣湾周辺)、新潟水俣病(新潟県阿賀野川流域)、イタイイタイ病(富山県神通川流域)の4大公害病など、公害関係資料を所蔵する9都府県13団体が参加しています。

 公害資料館ネットワーク発足の背景には、記憶の風化や語り部の高齢化などへの危機感が背景にあり、教訓を確実に次世代に伝えるための知恵を出し合っていこうとしています。四日市市は、来年(平成27年)3月に、公害や環境問題に対する本市の取り組みを国内外に広く情報発信する拠点として「(仮称)四日市公害と環境未来館」をオープンさせます。四日市公害の歴史と教訓を風化させることなく次世代に伝えるとともに、環境改善のまちづくりと産業発展の中で得た知識と経験、技術を生かし、都市と環境が調和するまちづくりをさらに進め、未来に豊かな環境を引き継ぐことを趣旨としています。「展示エリア」「学習エリア」「活動エリア」の主に3つのエリアで構成されるようです。

 展示エリアでは「産業の発展と暮らしの変化」「公害の発生」「まちづくりの変遷」「環境改善の取り組み」「現在の四日市」「環境先進都市四日市四日市コンビナート夜景クルーズ」の6つのコーナーに分け、公害による被害のほか、公害発生に至る経緯や環境改善の取り組みなどを展示する予定です。また、学習エリアでは、四日市公害についての語り部の講話を聞くことができたり、エコ工作のワークショップも開催されるそうです。図書スペースも充実しており、公害・環境に関する本を1万冊ほど揃えるそうです。

 教育現場でも新たな動きが出ています。石油化学コンビナートに隣接し、高度成長期に大気汚染公害に悩まされた四日市市立塩浜小学校では、この春(2014年4月)、新たな公害を乗り越えた新校歌が生まれました。塩浜小学校では、1960年〜70年代、工場群が排出した二酸化硫黄による大気汚染で50人以上の児童がぜんそくを発症し、市内の小学校で最大の被害が出ました。コンビナート企業の社宅移転や少子化により児童が減った三浜小学校と塩浜小学校が統合して、新しい塩浜小学校として開校するにあたり、新校歌が生まれました。新しい校歌を作ることには反対意見もあったようですが、子どもたちが新たな一歩を踏み出しやすいようにという意見も根強く、新たに作ることになりました。新しい校歌の最後は「自然のいぶきとかがくの光を 未来に向かって とどけよう」と結んでいます。

 最後になりましたが、四日市コンビナート夜景クルーズの見どころを紹介したいと思います。夜景クルーズには、定番の60分クルーズと充実の90分クルーズがあります。私たちは、充実に90分クルーズを堪能してきました。時間のある方は90分コースがお勧めです。90分コースは60分コースに加えて、けっこう沖の方まで出て、コンビナート夜景全体を楽しむことができます。また、じっくり時間があることもあり、ベテランガイドの方が四日市港の歴史やコンビナートにまつわる様々なエピソードはじめ、今回、紹介したような現在の四日市コンビナートの取り組みや環境対策など夜景だけでないコンビナートの魅力を話して頂けます。

 一番上の画像は、クルーズ船に乗り込む前の待合室の様子を写したものです。また、上から5番目の画像は、クルーズ船四日市コンビナート夜景クルーズを写したもので、最上階には展望デッキがあって125名乗ることができます。また、上から2番目、3番目、4番目の画像は、眼前に広がる工場夜景を写したものですが、あまりうまく撮れておりません。ぜひ、夜景は肉眼でみてください。工場のコンビナートにそれほど興味がなくても、実際に見てみると、ある年齢層以上の方はノスタルジックな雰囲気も感じるでしょうし、逆に、コンビナートの一つ一つの入り組んだパイプの造形美はCGのような幻想的にも見え、近未来的にも見えてきます。

 また、今回は、クルーズ船から海上からのコンビナート夜景を堪能しましたが、もう一つの楽しみ方もあります。それは、四日市港ポートビルの14階展望室「うみてらす14」からの眺めです。私は実際に見ておりませんが、工場萌えの人たちのために建てられたのではないかと思うほど、工場を見るための絶好のロケーションに位置しているそうです。四日市港ポートビルからの夜景は毎日見ることができるわけではなく、基本の開館時間は17時までで、夜景をみることができるのは、午後9時まで開いている土曜日と7月から11月の金曜日のみです。(2014年7月現在)

 皆さんも四日市が昭和30年代に日本で初めて形成された石油化学コンビナートを擁し、産業の街として日本の経済をけん引してきて、その発展の過程で大気汚染、工場排水による水質汚染等の公害問題が発生した歴史を踏まえながら、懸命な努力によって公害を乗り越えてきたからこそある今のコンビナート夜景を堪能されてはいかがでしょうか。

By Nagura

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