愛知県中央を流れる矢作川の取り組み (日本・愛知)

視察日:2000年4月16日

 矢作川は、愛知県中央部(三河地方)を貫くように流れる(長野県岐阜県にもまたがる)総延長137キロメートル西尾市から下流にもおよぶ河川です。愛知県内においては、上流の方から藤岡町、足助町、旭町、小原村、下山村、豊田市、岡崎市安城市、西尾市、碧南市などの市町村を流れて、三河湾にそそいでいます。正確には、矢作川流域の市町村は、愛知、岐阜、長野の3県で27市町村にも及んでいます。

 まずホームページ上の3枚の画像の説明をしますと、一番上の画像は、下流に近い部分に位置する西尾市の上塚橋から下流の三河湾の方角を写したものです。雄大さが感じられるのではないかと思います。上から2枚目の画像は、徳川家康のお膝元でもある岡崎市の堤防から日名橋を望む上流に向けてを写したものです。まだまだ、河川幅は広いですが、徐々に河川幅が狭くなっていくのが感じられるのではないかと思います。上から3枚目の画像は、矢作川の支流にあたる桜の咲き乱れる巴川(豊田市松平橋付近)を写したものです。下流辺りでは、すっかり桜吹雪となっておりましたが、山間部のこの辺りは4月中旬においても見ごろでした。

 矢作川流域は地域ぐるみの環境保全活動で先頭を走っており、「矢作川方式」と呼ばれる独自の水質保全ルールを持っていることで知られています。愛知、岐阜、長野の3県にまたがる27市町村において、矢作川に濁流が流入しないように独自の取り決めがあります。例えば、工場や道路などを建設しようとする際は、開発業者が、まず矢作川沿岸水質保全対策協議会の同意を得た上で、県などへ許認可を申請するという、他にあまり見られない“紳士協定”が存在しています。
 水質基準はBOD(生物化学的酸素要求量)が国の基準1リットルあたり岡崎市から上流160ミリグラムに対し、矢作川沿岸水質保全対策協議会は10ミリグラムなどケタ違いに厳しいです。矢作川沿岸水質保全対策協議会は、1969年に設立され、30年にわたり活動を行っています。形態としては、矢作川流域の市町村や河口がある三河湾の漁協など計52団体の会費で成り立っている任意団体です。法的根拠のない任意団体が「開発者にモラルに訴える」という形で確立できるまでには、長い道のりがあったようです。

 高度成長期に、流域は工場や土砂採取などの排水で農漁業に深刻な被害が出ており、矢作川流域での開発の件数が多すぎて、国の規定ではとても川を守れないということから、1969年に矢作川沿岸水質保全対策協議会が設立されています。設立当初は、悪質業者の工場をパトロールするなどの徹底した監視・告発活動を続けていたようですが、力で押さえつける手法では限界があると感じ、行政を巻き込んだ現実的な対話路線に方向を展開しています。1970年代以降は、環境への理解も深まったこともあり、矢作川沿岸水質保全対策協議会の取り組みが定着していって現在に至っています。
 今では、同地域に関係する建設会社も全面的に協力しており、各社の技術者が集まり濁水防止法を研究したり、他の地域で工事する場合も、独自に濁水防止装置を付けるケースも出てきているようです。また、建設省は2000年度の重点施策で、非営利組織(NPO)と連携して河川の水質保全を図る方針を打ち出していますが、同省は、「この矢作川の地域ぐるみの取り組みは、これからの河川行政を先取りする動き」と評価しています。

 ここにきて、市民レベルにおい支流の巴川の桜て環境という視点が大きくクローズアップされてきており、全国的にみても、下流域の住民・市町村と上流域の住民・市町村が交流したり助けあったり、漁業者が山間部の木々を育てたりする動きもでてきて、良い方向に進んでいると思います。日本各地の砂浜が少なくなっている背景を見ても、地球温暖化による海面上昇もありますが、河川からの自然な土砂の流れの体系が崩れていることも挙げられます。より広い視点(広域的な視点)で物事をみて、広域的な連携がさらに進んでいって欲しいものです。

 矢作川流域の最近の動きを見ますと、今年(2000年)1月に豊田市が水道料への上乗せで水源保全のための基金を設けています。これは、豊田市が上流の5町村(藤岡町、足助町、旭町、小原村、下山村)と結んだもので、人の手が入らず荒れている森林を、5町村が所有者に代わって管理し、水源を守り、その費用を豊田市民の基金でまかなうという仕組みです。

 また、豊田市の西広瀬小学校では、24年にもわたり脈々と受け継がれて、矢作川の水質調査を続けています。矢作川の掃除から始まったこの活動は、矢作川の水をとおして、子どもたちに環境問題をとても身近に考える良い機会となっているようです。自然を大切にする心が受け継がれていくことは素晴しいと思います。

 最近、環境教育という視点で、自然の生態系をつくる学校ビオトープなどの動きもでてきて、取り組みが始まっております。私が子供のころは、田舎ということもあり(今では宅地工場開発などされていますが)、学校周辺が自然豊かでビオトープそのものだったこともあり、学校ビオトープの動きに、あまりピンッときませんが、それだけ生態系にとって住みにくくなっているのでしょう。学校ビオトープという点で考えますと、周りに自然があふれていますと自然があるのは当り前と考えがちで、維持保全という視点になかなか目がいきませんが、子どもたち自らが、ビオトープをつくっていくことは、環境にふれること以上に、自然環境の維持保全における考え方、視点が身についていくのではないかと思います。

 今回、河川という視点で矢作川を紹介して参りましたが、“いつもきれいな川”を維持していくには、流域に住む人々の長い年月の積み重ねが大切ということを強く感じた次第です。未来を築いていく子供たち含め市民、行政が連携して取り組んでいくことが大切であり、今後、よりNPO的な存在が大きくなっていくように思います。

By Nagura

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