安城市の都市再生を考える
学生たちの取り組みを訪ねて 
(日本・愛知)

2004年2月24日〜28日

 愛知県安城市において、現役の大学生たちが学び、そして、実際にまちを歩き、地元の方々とふれあい、さらに、調査した上で、更生病院跡地街づくりへの提案をする取り組みを訪ねてきました。この取り組みは、JR安城駅周辺の活性化を検討する「都市再生大学校・安城校」で、大学生21人が2004年2月24日〜28日まで5日間にわたり泊まり込みで参加しました。都市再生大学校は、内閣府都市再生本部事務局及び地域振興整備公団地域政策課等の協力を得て、都市再生プロジェクト推進事業として平成15年度に行われたものです。平成15年度の都市再生プロジェクト推進事業は、今回紹介します安城市と滋賀県大津市の2カ所で行われました。大津でも同じように、学生たちが、大津のまちづくりへの提案をしています。

 今回の都市再生プロジェクト推進事業の特色として、地域住民だけでなく、高校生や大学生をも巻き込んだまちづくりが展開されました。大きく3つのワークショップに分かれており、中心市街地内の住民の方々による「都市再生大学校芸術学院」、まちづくりや都市再生を専門とする大学生による「都市再生大学校」、そして次世代のまちづくりを担う高校生による「都市再生大学校附属安城高校」から成っています。私は、そのなかの「都市再生大学校芸術学院」に地域住民のひとりとして参加しました。その都市再生大学校芸術学院の中で、長浜・彦根に視察に行き、その模様は、視察レポート「観光資源を創出した長浜&情緒ある街並みを生み出した彦根を訪ねて」で紹介しておりますので合わせてご覧頂けましたらと思います。そのなかでも、都市再生プロジェクト推進事業の取り組みに触れております。

 それでは、どんな学生たちが参加したのかを見ていきます。都市安城七夕まつり計画、建築、都市環境、経営、コミュニティ福祉などひろく“まちづくり”を学んでいる学生たちが参加していました。その中の約半数が、修士課程の大学院生で、大学生も4年生が多く、最終日には、彼らの発表を聞きましたが、まとめ方やプレゼンの仕方もうまくさすがに場慣れしている感じもいたしました。発表の感想およびさらに彼らに期待することは後ほど述べます。

 学生たちは、けっこう遠くからも来ておりました。ざっと大学名を挙げてみますと、まず、愛知県内では、豊橋技術科学大学、名古屋大学、名古屋工業大学はじめ、県外では、岐阜経済大学、早稲田大学、千葉大学、福井大学、あと、呉工業高等専門学校からも来ておりました。少し残念だったのが、地元の愛知学泉大学の学生たちが参加していなかったことです。愛知学泉大学には、コミュニティ政策学部というまちづくりにはもってこいの学部があるだけに、せっかくの機会を逃したような気もいたします。

 ここで、主催者側の今回の大学生によるまちづくり提案の意味合いおよび目的を少し述べます。大学等の教育機関では体験できない実習や世界の都市再生専門家・実務家・行政担当者等によるレクチャーや多方面のジャンルの学生による交流活動、まちづくりに熱心な地元住民の方々との交流を柱にワークショップ形式でスキルアップを図る意味合いがあります。要都市再生大学校は、大学構内における机上の勉強を補完する意味合いの大学の外に出た実社会における実践の場と捉えることができます。今、流行りのインターンシップ的とも言えます。

 より具体的に、今回の目的として大きく「まちづくりの推進」「人材育成」「若者の雇用促進」の3つを掲げています。まちづくりの推進は、従来の住民と行政のまちづくりに民間や他国の専門家や柔軟な知恵を持つ学生の参加により飛躍的な効果を期待しています。人材育成は、実際にまちづくりが進められていく場は学生たちにとっては貴重なフィールドであり、また同じまちづくりを学ぶ他大学の学生との交流も貴重な機会でありスキルアップを期待しています。若者の雇用促進は、このような一連の取り組みが実を結べば育成された若手人材が専門家として活躍できる機会を生み出していくことを期待しています。

 安城市が都市再生プロジェクト推進事業に選ばれた背景には、中心市街地にあった病院が郊外に移転したことによる病院跡地並びにその周辺市街地の活用化があります。一番上の画像が、病院跡地を写した画像です。広々とした様子(約12000平方メートル)が伺えると思います。病院が移転したことで、旧病院前の歩行者の通行量が半減しており、今回の学生たちはじめ、市民やさまざま関係機関で跡地利用の計画が検討されています。病院が移転して、今現在、人の賑わいがなくなっているのは寂しい限りですが、空の広さがすがすがしいです。一番上からの画像からご覧頂けますが、昼間は青い空が広がり、夜は星を見ることができます。今までは、中都市再生大学校心市街地から空を見上げるなんてことが、できなかっただけに、あらためて、中心市街地から空を見るここちよさを感じました。

 この広い空を眺めることができる安城ならではの中心市街地は、他ではなかなか見られないと思います。是非、この広い空を生かして、建物はできるだけ低層で、水、緑あふれる自然空間を大切にして欲しいと個人的には思っています。とは言っても、一等地だけに、地価も高く、それに見合う収益性と集客性も求められ、バランス感覚のある土地利用が望まれています。病院跡地のすぐ近くに文化センターがあり、そこにはプラネタリウムがあります。プラネタリウムで学んでから、実際に、病院跡地の広場で、星空ウォッチングもいいと思います。その際、商売の視点も必要ですので、灯りを最低限にしての夜市や商店街が営業時間をその日だけ延長してお店に呼び込むなど連携させたいものです。

 話を元に戻して、病院跡地はじめ中心市街地全体で学生たちから「地域通貨の導入」「銭湯を造って各世代の交流を図る」「更生病院跡地を使ったバーベキュー大会」などさまざまなアイデアが挙がりました。学生たちが短い時間の中で、自分たちの足で調べて、徹夜までしてまとめあげたことは、見ている方が頭が下がるとともに、彼らにとっても勉強になったことと思います。しかし、それ以上に、学生たちのがんばっている姿が地元の商店街の方々や地域住民の方々の意識改革につながったことが一番の成果のように思います。学生たちをみて、地元に住んでいる自分たちがもっと愛着をもってやれなければと多くの方が感じたことと思います。また、商業者と地域住民、商業者同士、地域住民同士の交流を深めるきっかけづくりに学生たちが果たした役割は大きかったと思います。学生たちの発表を聞いていて、一つ残念だったサンクスフェスティバルことは、地元の学生がいないこともありますが、学生たち自分自身が主となって汗水流して、商店街をステージ(場)として活用する提案が少なかったことです。

 一つ吉報としては、地元の大学で、在学中から安城のまちづくりに携わってきた子が、卒業して、安城のまちづくりの事務局の職員として今月(2004年4月)から働きだしたことです。安城のまちづくりは、まち挙げての手づくり感覚のお祭り「サンクスフェスティバル」など先進的な取り組みをおこなっていますが、ニューフェースを迎え、さらに一段高い、次のステップに向かいつつあり、これからが楽しみです。

 以前、10年近くサラリーマンをやっており、その頃は今と違って景気もよく、毎年新入社員が入ってきました。当時、私は既に管理職になっており、毎年職場に新入社員を受け入れていたわけですが、その時、注意深く見ていた点は、彼らが配属されて、半年から長くても1年の間で、彼らが職場で感覚的に感じることです。2年、3年いると、おかしいと思う仕事のやり方も慣れてしまって、おかしいと気づかなくなってしまいます。しかし、新入社員で配属された彼らは、そのあたりを感覚的に感じ取ります。新人の意見を吸い上げながら、乾いたぞうきんをさらに絞るような改善提案、改善提案の世界にいた頃をふと思い出しました。ここで言いたいことは、事務局の職員となったニューフェースが、半年から1年の間くらいで感覚的に感じ取ったことを安城のまちづくりに生かして頂きたいということです。

 最後に、もう一つおまけに学生の話題で、愛知県が主催した学生たちによる提案型地域づくりモデル事業の発表を先日(2004年3月24日)聞いてきましたので、印象に残った提案を少し紹介します。日本福祉大学豊橋技術科学大学、名古屋大学、名古屋女子文化短期大学、愛知学院大学、中京女子大学、愛知大学、愛知県立大学の学生グループから10件の提案がありました。学生たちは、県の各部署で2カ月間インターンシップで県職員の仕事を体験した後に、5ケ月間にわたって自分たちが計画した提案に基づく活動をして発表に至りました。なかでも、印象に残ったのは、名古屋女子文化短期大学の女子学生15人が行った「高齢者が美しくなる・美しくなれるメイクを提案・実践」です。

 名古屋女子文化短期大学の服飾専攻の女子学生たちで、ファッションとともにメイク実習を授業で行っているだけに、さすがにおしゃれでセンス抜群で、他のグループの学生たちとはキャラが違っていたこともありますが、それだけでなく、10のグループのなかで、一番本人たちが楽しみながら活動をしてきたということが伝わってきたことです。まちづくりは、自らが楽しみながらやるものと私は思っています。まちづくりは、楽しみながらやってこそ、相手も楽しくなると思います。感覚的に楽しみながら行うという感性が彼女たちにはあったように感じました、

 活動内容は、60歳以上のシニア層(高齢者)を対象に、女性の華やかさ、女性の年齢に関係なく美しくなりたいという願望を手助けしたいというものです。名古屋のお年寄りの原宿とも言える覚王山・日泰寺でアンケート調査をしたり、学校で実際にシニア層を招いて、メイクとファッションのコーディネートを行ったりしています。お年寄りにメイクをして喜ばれて、彼女たちも楽しくなり、共に元気になれる、共に楽しめる関係づくりという点でも素晴らしいと思います。彼女たちを安城の商店街に招いて、シニアメイクをおこなっても面白いのではないかと思っています。最近は、おもちゃ屋さんに子供用のメイク道具があふれていますが、シニアのメイク・ファッションにこそ、商店街は目を向けるべきのように感じます。

 学生はじめ大学と自治体や商店街との連携は、ざまざまなところで進んでいます。視察レポートとしては、まだまだ少ないですが、検索項目「学生・大学における連携の取り組み事例(商店街・行政などとの連携)」を設けています。クリックして頂きご覧頂けましたら幸いです。学生・大学とまちづくりという観点では、これからも数多く紹介していきたいと思っております。

By Nagura

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