南知多・豊浜の天下の奇祭
「鯛まつり」を訪ねて
(日本・愛知)

視察日:2011年7月24日

 愛知県の知多半島の先端にある南知多町(人口20,322人、7,034世帯、面積38.24平方キロメートル:平成23年6月末日現在)の南知多豊浜の鯛まつり風景天下の奇祭と言われている豊浜の「鯛まつり」を訪ねてきました。鯛まつりは、毎年7月中旬に伊勢湾に面した豊浜海岸で行われます。今年(2011年)は、7月23日と24日に行われました。また、豊浜は、愛知県下ナンバー1の漁獲水揚げ量を誇ります。

 一番上の画像は、10メートルから18メートルの竹と木の骨組に白木綿を巻いてつくった重さ1トンを超す鯛の張りぼてを写したものです。鯛の張りぼてを担いでいる人たちの大きさから巨大な鯛の張りぼてが伺えると思います。今どきのかわいらしいデザインですが、実際に近くで見ると、なかなかの迫力があります。昭和初期頃の鯛まつりの鯛の張りぼての写真を見ましたが、グロテスク系の独特の当時ならではの迫力が感じられましたが、時代の変遷に伴って、その時代に合ったデザインに変わってきているようです。

 鯛まつりの歴史を少し紐解くと、鯛まつりは、明治18年頃祭礼に興を添えようと「ハツカネズミ」の張りぼてをつくったのが最初と言われています。その後、魚類になり、大正初期に「大鯛」に、昭和初期には胴内で、はやしながら海に泳がせる現在に近いスタイルになりました。そして、今も神事としての姿は守り続けられています。鯛まつりの発端とか、なぜ最初は、ハツカネズミだったのかとか、ハツカネズミから鯛の張りぼてになっていった経緯など鯛まつりのさらに詳細な歴史は深く、まだまだ過去の記録が乏しく先人からの語り伝えに頼る部分が強いですが、のちほど紐解いていきたいと思います。

 鯛まつりは、画像に見られるような10〜18メートルの大小の鯛5匹が若者たちにかつがれ、街中や海を練り回る様子は、海の祭りにふさわしく、まさに勇壮です。豊浜の象徴ともいえる「鯛まつり」は、その歴史と伝統の中で生まれ育ち、人々南知多豊浜の鯛まつり風景の心に深く刻み込まれた文化遺産でもあります。昨今の鯛まつりはそのユニークさで全国的にも名をはせ、外国の切手にも紹介されたほどです。

 鯛まつりは、豊浜の須佐地区と中洲地区の2つの地区で行われます。大鯛の張りぼては、中洲地区で1体、須佐地区では、さらに東部、鳥居、中村、半月の4地区で1体ずつ作られ、計5体つくられます。鯛まつりのクライマックスは、鯛の張りぼての鯛神輿同士がぶつかり合い、そして、最後は、1体ずつ御仮屋(おかりや)正面の鳥居めがけて猛突進する場面です。本当に迫力があります。御仮屋とは、少し山側の内陸にある津島神社の神様が年に一度、鯛まつりの会場となる浜辺に移ってくる場所のことです。神様が移ってきた御仮屋の鳥居に鯛の張りぼての鯛神輿をぶつけることで奉納します。

 上から2番目の画像は、赤い鯛と黒い鯛の鯛神輿同士がぶつかり合っている様子を写したものです。画像上の砂埃があがっている様子からも迫力が伝わるのではないでしょうか。そして、上から4番目の画像は、鯛神輿が御仮屋(おかりや)正面の鳥居に突進してぶつかったところを写したものです。画像上の鯛神輿のへこみ具合から迫力が伝わるのではないでしょうか。鯛神輿の外周を形どっているところは竹で出来ており、竹はよくしなるだけに、そう簡単には壊れないだけに、御仮屋の鳥居に何回となく激しくぶつけるところは観客含めたいへん盛り上がっていました。

 ここでさらに、鯛まつりの歴史を掘り下げて紐解いていきたいと思います。鯛まつりは、最初はハツカネズミだったと記載しましたが、そのハツカネズミをつくったのが中洲地区の船大工の森佐兵衛さんという方です。また、森佐兵衛さんは、それ以前の明治7年に森さん兄弟で、中洲村のお祭りに山車がないのをさ南知多豊浜の鯛まつり風景びしく思い、ちょっと変わった山車の舟の形をした「お舟」と呼ばれた見事な山車をつくりました。しかし、明治12年に中洲村でコレラが大流行し、27人もの死者を出し、穫った魚も売ることができず、村にお金がなくなっていき、せっかくつくった山車の「お舟」を売ることになってしまいました。

 森佐兵衛さんは、器用な方で、船を作る仕事の合間に、錦絵をかいたり、小物を作ったりしました。なかでも、ハツカネズミが餅をくわえた形をした墨つぼは、糸を引き出すと「チュッチュッ」と音を出し、見事なものだったそうです。そして、森佐兵衛さんは、明治20年前後に、祭りの添え物として、張り子のハツカネズミを作ったのが鯛まつりの始まりと言われています。張り子のハツカネズミは、畳2枚分ほどの大きさで、数人の若い衆がかついだとも、大八車に乗せてねったとも伝えられています。また、森佐兵衛さんは、ハツカネズミを作った後も、1年おきに手持ちの材料で象などを作りました。そして、中洲だけでなく、鳥居や高浜・新居へも出かけて、龍や虎の作り方を教えたとも伝えられています。だしは、1年おきにその場のおもいつきのように決められたこともあり、祭りのだし物のことを人々は「おもいつき」と呼んだそうです。この呼び方は、昭和40年代まで続いたそうです。

 次に、ハツカネズミの張りぼてが現在の大鯛の張りぼての鯛神輿になっていく変遷をみていきたいと思います。上記で述べたように、明治20年前後にハツカネズミが作られ、2年後には「象」のだし物が作られたと言われています。そして、その後、10年余りは、牛、虎、兎(うさぎ)などの動物のだし物が作られたと伝えられております。明治30年頃から、これまでの動物のだし物にかわって、海の生き物が作られるようになったようです。中洲は漁師の村ですから、土地柄に、ふさわしい海の生き物が作られるようになったのは自然と思われ、また、他の理由として、魚類の方が作りやすいこともあったようです。

 このころ作られた「おもいつき(だし物)」は、イトヨリダイ、カツオ、マダイなどで、大正の初めごろから海の中をねるようになりました。また、形もだん南知多豊浜の鯛まつり風景だん大きくなっていったようです。しかし、現在の鯛ほど大きくはなかったようです。それが昭和の初めごろから胴内に人が入り、太鼓をたたき、三味線を弾き、笛を吹くようになり、お囃子に合わせて海をねる様子に見物の人々が大喜びしたそうです。

 現在の鯛に落ち着くまでには、伊勢エビ(昭和9年)や鯨(昭和10年)などのおもいつき(だし物)も作られました。伊勢エビはたいへん大きなもので、頭や胴を丸くするのにワラを使い、海をねったところ、ワラや布が海水を含んでとても重くなり、海から陸上に上げるときには、力自慢の若い衆たちも音をあげたそうです。また、くじらもとても大きなもので、潮を吹き上げる仕組みにとても苦心したようです。胴の中に手押しポンプを入れ、人がポンプを押して潮を吹き上げるように考え、本番で海を泳ぎながら見事に潮を吹き上げた際は、見物人から喝采をあびたとのことです。

 あと画像を紹介していないところを少し紹介していきますと、上から3番目の画像は、鯛が勢ぞろいしたところを写したものです。4体のうち3体がご覧いただけると思います。海を背景に、鯛神輿が勢ぞろいするとなかなかの景観です。上から2番目の画像からもわかりますが、鯛神輿には、赤い鯛と黒い鯛がご覧いただけることと思います。この黒い鯛は、もともと赤い鯛でした。赤の真鯛から黒鯛に変身させているのです。赤い真鯛を塗り変えるだけで黒鯛に衣替えさせるようになったのは、今から約20年ほど前からだそうです。何しろ、一晩の間に塗り変えてしまうのでたいへんな作業と思います。2日間にわたってみている地元の方や観光客にとっては、一夜明けると真鯛が黒鯛になるのは、なんとも新鮮な感じに映ることと思います。また一番下の画像は、鯛神輿の前で鯛のかぶりものをしている人たちを写したものです。鯛のかぶりものをした二人が話している姿がなんともユニークでしたので、おもわず1枚撮影した次第です。

 最後に、鯛まつり以外の豊浜の魅力も少し紹介していきます。豊浜の名産品として、「アナゴの干物」が挙げられます。豊浜南知多豊浜の鯛まつり風景漁港は、沿岸、沖合漁業が中心的な存在で、伊勢湾、三河湾両湾の魚が揚がるだけに種類も豊富です。愛知県下有数の漁獲高を誇る豊浜では、家庭においても毎日のように食卓にアナゴの干物が並ぶそうです。アナゴの干物は、天日干しにこだわっており、旨み成分が凝縮され脂ののりも良く豊浜で一番愛されているそうです。豊浜に行くと「あなごマップ」があり、アナゴの取扱店がずらっと載っており、アナゴの干物作り体験ができるところもあるようです。

 また、豊浜漁港には「魚ひろば」があり、そこでは、鮮魚介類はじめ、干物や佃煮などが豊富に売られています。海のそばだけあり、新鮮な魚介類をお手頃な価格で買うことができます。その他、豊浜の楽しみ方としては、3月下旬から6月下旬にかけては潮干狩りが楽しめますし、12月中旬から5月末までいちご狩りも楽しめます。温暖な気候もあり、菜の花やポピーなど季節の花々の景観がみごとな「花ひろば」、約500メートルの道沿いに200万本のコスモスが咲き乱れる「南知多コスモス街道」、高台にある海が見渡せる桜が美しい「桜公園」、豊浜を一望できる「貝がら公園」などがあります。

 皆さんも機会がありましたら、一度、天下の奇才と言われている「鯛まつり」を見に行かれてはいかがでしょうか。なかなか見応えがあり、一見の価値はあります。また、鯛まつりの時期でなくても、四季折々、豊浜は楽しめますので、ぶらっと出かけてみてはいかがでしょうか。

By Nagura

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