三河湾に浮かぶ“ふぐの島”篠島を訪ねて(日本・愛知)

視察日:2011年12月23日

 ふぐ三昧の宴会を兼ねて、愛知県の知多半島と渥美半島に挟まれた三河湾に浮かぶ“ふぐの島”篠島を観光してきました。篠海水浴場島は、知多半島と渥美半島のほぼ中央に挟まれた三河湾の入口に位置し、明治以前には三河国幡豆郡(現:愛知県西尾市)に属していましたが、現在は、愛知県知多郡南知多町(人口20,137人、7,013世帯、面積38.24平方キロメートル:平成24年2月末日現在)に属しています。

 篠島は三河湾国定公園内にあり、知多半島の先端の師崎港から海上わずか4キロほどの近さで、都心部の名古屋から1時間ほどで来れる便利な島です。篠島は周囲6キロほどで、実際にその周囲を半分程度歩いてきましたが、海岸線は変化に富んでおり、飽きることなく風景を楽しみながら歩くことができます。また、篠島は、大小十数の島々からなっており、まさに「自然がつくりあげた芸術品」のようで、昔から「東海の松島」とも呼ばれています。

 冒頭で篠島のことをふぐの島と書きましたが、全国的に“ふぐ”と言えば、下関の玄界灘のふぐが有名ですが、ここ三河湾の篠島の“ふぐ”も負けてはいません。今では、とらふぐの水揚げ高が、愛知県が全国トップになる年もあり、山口県と並ぶとらふぐの産地としての認知度が高まってきています。玄界灘で水揚げされたとらふぐしか食べたことがない方は、是非、一度、三河湾の篠島で水揚げされたとらふぐも味わってみられてはいかがでしょうか。

 一般的に「ふぐ」と呼ばれていますが、地域によってそれぞれ異なった呼ばれ方をしている場合もあります。ふぐで有名な玄界灘のエリア(山口県や九州など)では、「ふく」と呼ばれています。由来ははっきりしていないそうですが、「ふぐ」では「不遇」「不具」となり縁起が悪いということで、「ふく」であれば「福」につながり縁起が良いというものです。また、ふぐを料理する際に布を巻いて、一晩寝かせた後に調理したので「布久」の当て字とした説もあります。

 また、関西では「ふぐに当たれば死ぬ」ことより「テッポウ」、もしくはこれを短くした「テツ」などと呼ばれています。他に、長崎県島原地方では「釣り針の浜辺ガンバ」と呼ばれているそうです。「ガンバ」とは、島原では棺桶の方言のことであり、美味なふぐを食する際は傍らに棺桶を用意せよとの言われからだそうです。

 ふぐの旬は「秋の彼岸から春の彼岸まで」と言われていますが、中でも冬の寒い季節が美味しく、今回、篠島で旬な「ふぐ」をこれでもかというほど食し、ふぐ三昧を堪能してきました。とらふぐとともに、普段ではけっして市場に出回らない、地元の漁師だけが食する幻と言われる「芸者ふぐ」のコース料理も堪能してきました。

 芸者ふぐは、一般的に「シマフグ」と呼ばれているもので、地方名で「おてら」とか「きたまくら」とか「おまん」とか、今回、篠島の漁師さんが言われている「芸者ふぐ」などと呼ばれているそうです。漁師さんの話では、三河湾エリアでとらふぐ200匹から300匹のうち、芸者ふぐが1匹程度混じるレアなものだそうです。また、芸者ふぐは、アシが早く(鮮度が落ちるのが早い)それだけに、なかなか流通に乗らないこともあり、地元の漁師だけが食する幻のふぐと言われる由縁のようです。篠島のふぐは2年前にも食べに行きましたが、その時は、芸者ふぐが獲れてなく、とらふぐしか食べることができませんでした。今回、2年越しで、ようやく念願の幻の芸者ふぐを食べることができました。

 実際に食べる前に、水槽を泳いでいる芸者ふぐをみましたが、とらふぐに比べて、これまでのふぐのイメージを覆すほど鮮やかでした。尾びれ、背びれなどひれの部分や口および目の周りなどところどころが黄色というか鮮やかなオレンジ色に近く、さらに、身体には、一般的にシマフグと呼ばれているように、白と黒の縞模様があります。とらふぐと同じ水槽を泳いでいる「芸者ふぐ」を見ているだけでも、飽きることなくなかなか面白いふぐと思います。芸者ふぐの唐揚げ、鍋など食べてきましたが、とらふぐとはまた違ったもちもち感や甘味がありなかなか美味でした。

 また、ふぐづくしの様々な料理とともに、ふぐのひれ酒も堪能してきて、あまりのうまさに、いつも以上に飲み過ぎて酔っぱ路地らってしまった次第です。ひれ酒は、日本酒の飲み方のひとつで、ふぐのひれ酒が代表的で、最初に切り落とした鰭(ひれ)を干し、強火で飴色にあぶり、コップなどに入れ、これを熱燗の酒に注ぎます。そして、ふたなどをして、鰭(ひれ)の香味が酒にうつるのを待って飲みます。実際に飲んでみると、ふつうの日本酒とはまた一味違った日本酒に魚のヒレを焼いた香ばしさが加わって本当にうまいです。

 上から5番目の画像は、今回、ふぐ三昧を堪能してきましたお店の外観を写したものです。今回が2回目となりますが、民宿も営んでいる鮨処「萬蔵」で、親父さんのうんちくのある話を伺いながら、ふぐを堪能してきました。今回は、ふぐを食べてきましたが、「萬蔵」は、鮨処だけあり、店主自慢の寿司も食べることができます。また、お店の中にある水槽には、季節ごとに鮮度抜群の海の幸が泳いで(生息して)おり、冬はふぐやホウボウ、夏は大あさり、サザエ、ウニ、シラスなどを召し上がることができます。

 これまでふぐの話題を書いてきましたが、「ふぐ」以外に、篠島には、他に様々な見どころがありますので、少し紹介していきたいと思います。一番上の画像は、篠島観光の目玉である砂浜の海水浴場を写したものです。島の人たちは、この海水浴場のことを「前浜(ないば)」と呼んでおり、昔は「神風ヶ丘」とも呼ばれていたそうです。一番上の画像を見ていただければわかりますが、本当に美しい砂浜が800メートルあまりにわたって続いています。この前浜(ないば)は、三河湾を一望でき、遠浅の海は、水が澄んでなおかつ波の静かな海岸で、お子さんも楽しめる夏は絶好の海水浴場です。

 上から2番目の画像は、魚を入れるトロ箱や網、針などを日干ししている風景を写したものです。数え切れないほどのトロ箱がずらっと日干し三河湾の眺めされている風景をみているだけでも、海に囲まれた篠島の漁場の良さが感じられるのではないでしょうか。

 上から3番目の画像は、島の方々の生活道路でもある狭い家並みの間を通っている路地を写したものです。ウォーキングの過程で、島の対岸からもう一方の対岸に移動する際に、画像に見られるような数々の路地を通りましたが、路地には、路地の先に、どのような景色が広がるのだろうかというワクワクさせてくれるような楽しみがあります。ところどころで路地を抜けたところから海が見えると感動します。

 今回、篠島の路地を歩いていて、歩いて楽しい人を中心としたまちづくりという観点で、これまでいろいろと視察してきた中で、路地を活かしたわくわく感を感じたアメリカのカーメルのまちを懐かしく思い出されました。上から4番目の画像は、対岸からもう一方の対岸に移動する峠あたりで急に視界が開け、知多半島を望む海岸線を写したものです。少し見づらいかも知れませんが、中央あたりに小さく船舶もみることができると思います。そして、船舶の後ろに見える島のようなところが、冒頭でも記載しました知多半島の先の師崎あたりです。距離にして、4キロほどです。

 上から4番目の画像のもう少し南側には、万葉集の歌碑が建てられた「万葉の丘」というところがあり、そこからの眺めは、日本夕日百選に選ばれています。美しい夕日とともに、万葉の丘からは、「東海の松島」と呼ばれる篠島全体を眺めることができます。まさに、風光明媚な場所と言えます。

 歴史的な視点では、冒頭で都心部の名古屋から篠島まで1時間ほどと記載しましたが、時代はさかのぼり、400年ほど前の160ふぐ料理の萬蔵0年代、名古屋城の築城の際に、ここ篠島の石が名古屋城の石垣に使われました。篠島には、築城のために切り出され、何らかの理由で運び残された矢穴のあいた石が約200ほど残されています。

 中でも有名な石が、築城の名手と言われ、名古屋城築城の際にも天守閣の石垣を築いた加藤清正が残していった「加藤清正の枕石」と呼ばれる石です。枕木に乗せられて海岸まで運びましたが、あまりにも巨大だったため船に載せることができずにそのまま放置されてしまったものだそうです。どうしても運び出せずに、清正公がその巨石の上に寝そべって悔やんだという言い伝えもあります。歴史好きな方は、400年前に思いを寄せて、約200ある名古屋城築城の石を探してみてはいかがでしょうか。

 あと、人気のあるところとして、篠島港の一隅を囲って作られた海上の管理釣り堀「篠島釣り天国」があります。鯛やハマチ、アジ、カンパチ、メバルなど大小さまざまな魚が放されています。ふつうの釣り堀と違って、海の魚ならではの強い引きの海釣り気分を手軽に楽しめるということで、シーズンになると朝から大にぎわいとのことです。また、年に数回は、堀内に迷い込んだ伊勢えびが釣れることもあるそうです。

 最後は、食という観点で、篠島一の食で締めくくりたいと思います。篠島の漁師の約6割が従事しているのがシラス漁です。シラス漁は4月から12月にかけて行われ、あちこちでシラスを天日干しする風景が見られます。篠島のところどころで篠島名物の「シラス丼」を食べることができます。さらに、篠島のシラスを力強く全国にPRしていくマスコットキャラクターの「しらっぴー」も誕生しています。

 篠島は名古屋から便利な立地にありますので、皆さんも機会がありましたら、篠島の自然、歴史、食などリフレッシュ兼ねて行かれてはいかがでしょうか。また、めったにお目にかかれないかも知れませんが、今回、紹介しましたとらふぐとはまた違った美味の芸者ふぐも食されてはいかがでしょうか。

By Nagura

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