再開発が進む静岡駅前&
呉服町名店街を訪ねて
(日本・静岡)

視察日:2009年9月7日

 静岡県静岡市(人口727,470人、296,080世帯:2009年8月末現在、面積1,411.82平方キロメートル)の再開発静岡駅前ロータリーが進む静岡駅北口広場含めその界隈を訪ねてきました。4年ほど前に静岡に行った際は、駅前のロータリーが工事中でしたが、今回、久しぶりに行ったらきれいに整備されていました。地元の方にお聞きしたら今春(2009年春)整備が終わったばかりということでした。

 一番上の画像は、きれいに整備されたロータリー部分を写したものです。今回、整備されたロータリーの北口広場には、静岡だけあり、徳川家康公像と家康の幼名の竹千代君像の2体が立っています。建立した2体の像は、昨年度行われた大御所400年祭の記念事業の一環として製作されました。今春の除幕式には、徳川宗家第18代当主の徳川恒孝氏も多くの来賓とともに参加されたそうです。

 今回も駅前からほど近い商店街の呉服町名店街を歩いてきましたが、4年ほど前の視察レポート「一店逸品の取り組みで有名な静岡呉服町名店街を訪ねて」も合わせてお読み頂けましたらと思っております。のちほど、現在も地道に継続的に行っている「一店逸品」の取り組みを再度、少し紹介したいと思います。多くの商店街が、いろいろな取り組みを試みる中、打ち上げ花火的に行って、一時はテレビ、新聞などメディアで取り上げられて脚光を浴びますが、その後、継続がままならずジリ貧になっていくところが見られるなか、ここ静岡呉服町名店街の商店街は現在も進行形で続けているところに頭が下がります。この継続性、団結力こそ静岡呉服町名店街が元気な商店街と言われる由縁になっていると思います。

 ここで、静岡駅前の再開発を含むまちづくりに入る前に広く静岡市のまちづくりの方向性に触れていきたいと思います。静岡市は、2003年4月1日に旧静岡市と葵タワー清水市が合併して、現在の静岡市となっています。静岡(旧静岡市)の歴史は古く、市内の登呂遺跡には弥生時代の生活の跡が残されています。奈良時代には国府が置かれ、南北朝、室町、戦国時代には今川氏の城下町として栄えてきました。徳川家康が駿府城に入城してからは、城下町としてのまちづくりが本格的に進み、大御所時代の徳川家康が居城した駿府城(駿府公園)は、日本の重要な政治経済拠点となっていきます。現在の静岡駅界隈のまち割は、基本的に徳川家康が築いたまちづくりを継承しています。

 清水(旧清水市)は、港とともに発展してきたまちとして知られています。清水港が歴史に登場するのは7世紀で、駿河国の豪族が率いる水軍が白村江の戦いに参戦したころに始まります。天然の良港を擁することから、今川氏や武田氏などに戦略上の要衝として利用されてきました。17世紀には水運の拠点となり、駿府城の築城や補修の資材は清水港から巴川を遡り運搬されたそうです。

 上記で、旧静岡市と旧清水市の歴史を少し紐解きましたが、現在の静岡市は、中心市街地といっても必ずしも一つではなく、大きく「静岡駅界隈の静岡地区」と「清水駅界隈の清水地区」の二つに分けられます。今年(2009)年3月に、静岡市中心市街地活性化基本計画の認定を国から受けましたが、「静岡地区(面積約250ヘクタール)」と「清水地区(面積約140ヘクタール)」の一つの市で2地区の計画の認定を受けることができました。一つの市で2地区の計画の認定を受けたのは、北九州市に次いで全国で2例目となります。

 ちなみに、静岡市中心市街地活性化基本計画における静岡地区の基本コンセプトは「“商都しずおか まちなか空間グレードアップ”〜商業集積とまちのスケールを活かした快適で楽しい都市空間づくり〜」で、清水地区の基本コンセプトは「“みなとまち清水 暮らし・にぎわいルネッサンス”〜ひと、まち、港がつながる豊かな暮らし・にぎわい拠点づくり〜」となっています。また、静岡地区の基本方針は「“ゆったり”滞在型都市空間づくり」「“わ呉服町名店街くわく”集客・交流型都市機能づくり」で、清水地区の基本方針は「暮らしやすい生活基盤づくり」「みなとまちを楽しむにぎわいづくり」「魅力がつながる連携づくり」となっています。

 上から2番目の画像は、市街地再開発地区にある静岡駅前に完成予定の静岡市の新しいシンボルタワーになると思われる「葵タワー」を写したものです。地下2階、地上25階、高さ約125メートルで来年(2010年)3月に完成予定です。総事業費は230億円です。事務所や店舗、宴会場、レストランなどのほかに3階フロアには市立美術館も開設予定となっています。隣の地上10階、地下1階建ての駐車場棟はすでに完成して利用されています。

 「葵タワー」という名称は、昨年(2008年)10月から今年(2009年)2月まで愛称を募集して決められました。全国から425件の応募があり、市内在住の男女2人から応募のあった「葵タワー」に決まりました。愛称は、ビルのデザインが駿府城の石垣の前にすくっと立つ満開の「タチアオイ(市の花)」をイメージさせ、市内一の高さを誇るタワーであることから考えたついたそうです。「葵タワー」の事業主の静岡駅前紺屋町地区市街地再開発組合は、「覚えやすい名前に決まってよかった」と話しています。

 上から3番目、4番目、5番目の画像は、静岡呉服町名店街の商店街がある通りを写したものです。呉服町には、その名のとおり、戦前までは十数軒の呉服店が通りに軒を連ねていたそうです。前回のレポートでも紹介しておりますが、静岡呉服町名店街の取り組みを少し紹介していきます。まず、何と言っても「一店逸品呉服町名店街運動」の取り組みが有名です。さきほども地道な活動、継続が重要な点を述べましたが、ここ静岡呉服町名店街の一店逸品運動の取り組みは、今年(2009年)で16年目を迎えています。すごいと思います。

 今や、全国各地の商店街や有志の商店主同士等で「一店逸品運動」の取り組みが見られますが、ここ静岡呉服町名店街が発祥の地でもあります。「一店逸品運動」とは、名前のごとくですが、商店街のそれぞれの店がお客様に自信をもってお勧めできる商品やサービスを作り上げ、お店とともに、地域を明るく元気にしていこうという取り組みです。

 魁である静岡呉服町名店街の「一店逸品運動」の特徴は、企画・制作段階から店主や消費者、メーカーと協力して協働して行っている点です。店頭でのやりとりや「呉服町サポーターズクラブ」を通して、消費者の声を吸い上げています。また、メーカー側にも積極的に企画・製造協力を仰いでいます。そして、一番重要な店主同士が互いに忌憚ない意見が飛び交う商店街の逸品委員会を月1回程度開いていることです。静岡呉服町名店街のホームページ上から逸品委員会の議事録を見ることもできます。

 4年ぶりに静岡呉服町名店街を歩いてきて、平日でしたがお昼時でもあり、けっこう込み合っていました。空き店舗もほとんど見られず、基本的なことではありますが、一店一店、店頭のガラスがきれいに磨かれていたり、店頭のポップ、陳列をしっかりされているなど、店主の商売への意欲が、商店街を歩いているだけでも感じられました。また、静岡呉服町名店街のある通りの商店街と大型店の配置がベストマッチングの相乗効果にもつながっているように思います。

 静岡呉服町名店街の通りにある商店街の静岡駅側の入り口にあたる部分に「パルコ」があり、商店街の奥側に「伊勢丹」が呉服町名店街あります。二つの大型店が両側にあり、二つの大型店の二つの核店舗を結ぶように商店街が広がっているような感じです。また、静岡駅界隈には、一本道を挟む感じで、松坂屋と丸井もあります。上から4番目の画像に見られる右側の建物が伊勢丹です。上から5番目の画像は、商店街の中央辺りにある葵区役所の前の緑地が広がる部分を写したものです。

 静岡呉服町名店街界隈は、大きく捉えれば、郊外の大型店に見られるような店舗配置をイメージすることもできます。例えば、愛知県岡崎市のイオンモール岡崎では、ジャスコと西武百貨店が両側に核店舗としてあり、その間に専門店街のモールが4層にわたって広がっており、エリア面積や階層などの違いはありますが、静岡呉服町名店街の界隈をそのような捉え方をすることもできるように思います。

 その他、静岡呉服町名店街を取り巻く背景には、上記の大型店との相乗効果だけでなく、県庁所在地ということで人口も多くさらに近隣からの商圏も広く、また、県庁、区役所などの行政機関も商店街から歩ける距離にあり、立地的も恵まれていると言えます。最近、あまり耳にしなくなりましたが、コンパクトシティという言葉があてはまるほど、いろいろな施設が中心部に集約している利便性が高い街と思います。そして、何よりすごいのが、このような比較的恵まれた環境に甘えることなく、商店街が自ら努力して、自分たちの街の魅力をもっと高めようと一店逸品運動はじめ、地道に活動していることです。

 今回、静岡へは2009年8月1日に施行された「地域商店街活性化法(正式名称:商店街の活性化のための地域住民の需要に応じた事業活動の促進に関する法律)」に伴い開催された静岡県商業活性化対策研究会に行きました。研究会では、「地域コミュニティの担い手としての商店街 〜地域に根ざした商店街こそコミュニティビジネスを〜」というテーマで講演させていただきました。地域商店街活性化法では、商店街を「地域コミュニティの担い手」として位置づけ、地域住民の生活に役立つ試みを支援し、地域と一体となったコミュニティづくりの推進で商店街の活性化を図っていこうというのが目的です。静岡呉服町名店街のような元気な商店街が増えていくことを願っております。

By Nagura

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