まちなか産直市&商店街100円市を訪ねて(日本・愛知)

視察日:2010年3月27日、4月24日、5月22日

 愛知県安城市(人口180,443人、67,649世帯:2010年6月1日現在、面積86.01平方キロメートル)の中心市街地の商店街で毎月第四土曜日に行われている「まちなか産直市」を訪ねてきました。まちなか産直市は、地元産の農産物を販売する産直市を開催し、中心市街地内の活性化を図ることを目的に始まりました。中心市街地の活性化に携わる各団体の連絡協議組織のまちづくりAnjoが主となって平成18年(2006年)から開催しています。

 JR安城駅周辺の中心市街地は、平成14年の更生病院移転や郊外型店舗の増加などにより人通りは中心市街地から郊外に移っているのが現状です。まちなかに病院があった時と病院が移転した後の病院に近い通行量調査のポイントをみると半減近くになっているところも見られました。このような状況の中、平成18年にまちなかへの来街者を増加させ、中心市街地の活性化と更生病院跡地の有効利用を含めまちなか産直市が始まりました。

 全国的にシャッター通りになってしまって、どん底になってしまっている商店街も見られますが、ここ安城市の中心市街地商店街は、まだまだまちなかにしっかりと商店が根づいており、全国的に見れば、危機感はありますが恵まれていると思います。そして、先ほど述べたまちなかの病院跡地の12,000平方メートルの活用についても、ようやく計画が決まりつつあり、数年後には、まちなかの拠点になる施設が出来上がる予定です。また、中心市街地活性化協議会が立ち上がりつつあり、新たな中心市街地の基本計画づくりも進みつつあります。安城のまちなかの将来展望が見えつつあり、今が過渡期と言えます。

 それでは、まちなか産直市を紐解きながら紹介していきたいと思います。現在のまちなか産直市は、まちなかの3会場で行っており、参加団体もどんどん増えて、開催当初の地元産の農産物に加え、いろいろな物が売られるようになり、さらに、商店街としての独自の取り組みの「商店街100円市」や「コロッケ市」なども始まっています。

 最初は、農家のお母さんたちの集まりの安城市内で愛知県認定農家女性団体である「農村生活アドバイザー」のパワーあふれる女性たちの力で始まりました。平成18年度には、商業系でなく、農政系の補助金に応募し、選ばれました。「地産地消」と「商店街の活性化」を目的とした愛知県の「農商連携地域活性化対策事業」の補助金です。

 上から4番目の画像は、まちなか産直市の立ち上げ当初から現在も行っている農家の女性の皆さんの様子を写したものです。農村生活アドバイザーと書かれた看板がご覧いただけると思います。旬の採れたて野菜だけでなく、花き農家の方もおり、花もあり、漬物などの加工品なども並びます。生産者自らが売っていますので、食材に自信を持っており、食材の調理方法なども教えてくれるので、お客さんと談笑しながら買い物されている様子が見られます。

 上から3番目の画像は、2010年1月から始まったまちなか産直市「おさかなコーナー」を写したものです。まちなかに魚屋さんが少ないこともあり、加わりました。安城には海はありませんが、一番近い三河湾で朝、水揚げされたばかりの新鮮な魚がお徳な価格で並びます。愛知県幡豆郡一色町の魚屋さんに加わって頂き実現しています。画像からも多くの種類の水産物がご覧いただけると思います。実際に魚屋さんが来て売っていますので、威勢のいい声が飛び交っており、ここも産直野菜同様に、魚のおいしい食べ方など教えてくれるなど会話しながら買い物することができます。

 また、2010年3月からは、商店街やデンパーク(デンマークをイメージした「花・みどり・暮らしの提案」をコンセプトにつくられた農業を全面に出したテーマパーク)内の飲食店も加わりました。上から2番目の画像は、商店街の女将さんのグループの「安城駅前元気会」が有機野菜を販売している様子を写したものです。元気会の女将さんたちは、毎週木曜日に商店街の中のかつお節専門店の軒先きで有機野菜の販売を既に行っており、販売する日を追加する形でまちなか産直市にも加わりました。販売している有機野菜は、地元の農家さんと協力して朝摘みの新鮮野菜が並んでいます。

 上から5番目の画像は、入場料が必要なデンパーク内でしか買えないデンパーク内の飲食店がまちなか産直市で販売している様子を写したものです。右側に写っている冷蔵庫上にポップも見えると思いますが、デンパーク自慢の手作りソーセージが販売されています。手作りソーセージは、国際コンテストで受賞したことがあるそうです。その左側には、人気商品の「米粉パン」が種類豊富に並んでいます。この米粉パンは地元の安城のお米を使っています。当方も毎回買っておりますが、もっちり、しっとりした食感で本当にうまいです。米粉パンの食パンを手でちぎりながら食べるとよりもちもち感が感じられ、美味です。

 最後に、まだ数店による試行段階ですが、商店街100円市の取り組みを紹介します。一番上の画像は、商店街100円市の様子を写したものです。商店街100円市は、商店街の複数の店舗がそれぞれ店頭にワゴンを並べ、それぞれ工夫を凝らした100円市を行っています。商店街100円市は、山形県新庄市の100円商店街の取り組みを学んで数店で試行的にやってみたものです。

 少し詳しく100円商店街の取り組みを紐解いていきます。100円商店街は、2004年7月に山形県新庄市の商店街で始まりました。新庄市の商店街から始まった100円商店街の取り組みは、今や全国の40近くの商店街で実施されています。100円商店街は、仕掛けとして奥深いものがありますが、簡単に言えば「100円の商品をお店ごとに店頭に並べ、商店街というストリート全部で100円ショップになる」という感じです。商店街100円ショップで来店のきっかけを図ろうというものです。

 新庄市における100円商店街のいきさつは、衰退した我が町の商店街の活性化のために、地域で活動し始めた人達のグループと商店街の協力で始まりました。新庄市から始まった100円商店街の取り組みが今や全国に広がっていますが、どんな取り組みでもそうですが、単に真似るだけでうまくいくものではありません。これまで、全国の商店街で先進地視察に行っては、いろいろなイベントや取り組みを真似てやっても、なかなかうまくいかなく、続かなかった例は枚挙にいとまがありません。

 100円商店街の取り組みもまさに同様で、商店主が商店街としての衰退や自分のお店の売り上げ減(店頭への来店数減)にしっかり危機感をもって、何のためにやるのか、なぜやるのかなど念頭において、100円商店街の意味・ルールをしっかり落とし込んで、魂を吹き込まない限り、いくら見よう見まねでやってもなかなか思うような成果は出てこないと思います。商店街挙げて、複数の店舗がしっかり理解し、ルールを守ってやってこそ、はじめて商店街としての全体の相乗効果が出てくると思います。そこが簡単なようで難しいところです。

 新庄市の商店街は、100円商店街3ケ条を掲げてやっています。その1「100円商品は外に陳列すべし」、その2「外でお客様と会話すべし。100円商品の精算は必ず店内ですべし」、その3「お客様を店内に誘い込み、プロパー商品を見せるべし。100円商品のみ買わせるなかれ、通常より多く売るべし」の3つです。お客さんが手軽に手を出しやすいワンコインでお客さんと会話しながら楽しくお勧めし、レジを店内ですることにより、お店に入ってもらうきっかけをつくる。そして、せっかく店内に入ってもらったのだから、自分が自信のある商品を見てもらって、けっして無理強いするのではないけど、店主が熱く語っていくことにより、店頭のワゴンの100円商品とともに、買って頂く努力をする。そこでたとえ買ってもらえなかったにしても、そのお客さんにとって、どんなお店でどのような商品があることがわかり、なおかつ店主との会話を通して、店主の人となりもわかり、次に来店しやすくなります。今までまちなかに来なかったお客さん、または、その店が気になっていたけれど、入りづらかったお客さんに100円商店街を通して知ってもらうことができます。

 先ほどの3ケ条は、どれも商売の基本として当たり前と言えば、当たり前のことですが、その基本がなかなかできていないというか、忘れてしまっているのが現状と思います。ある意味100円商店街の取り組みは、商店街の店主たちが奥底に本来持っている「商人魂(あきんどだましい)」、商売の楽しさをもう一度呼び起こす起爆剤なのかも知れません。

 また、100円商店街がユニークなのは、100円で物だけでなく、サービスを提供してもいいので、幅広い業種のお店に参加頂けます。それぞれのお店が知恵を絞って行うことができ、次は何をやろうという考える楽しさが商売の基本を呼び起こしているように感じます。ユニークな例を挙げますと、理髪店が「顔そり顔半分100円」、クリーニング店が「スラックス片足プレス100円」、エステ店が「15分マッサージ100円」、板金塗装屋が「自動車のつや消し途中まで100円」などきっかけづくりに頭を絞っています。

 農家のおばちゃんたちが4年ほど前に始めた「まちなか産直市」が、今ではその輪が徐々に広がりつつあります。これも、農家のおばちゃんたちが地道にやめることなく続けてきた賜物と思います。まちづくりや商店街の活性化は、一長一短でできるものでなく、「あわてず、あせらず、あきらめず」辛抱強くやっていくことが肝心です。生まれたばかりと言える徐々に広がりつつある輪は、まだまだトライ&エラーの段階で、試行錯誤しながら進んでいくことと思います。まちなか産直市というソフト面に加え、ハード面の拠点となる病院跡地のまちなかの計画も進みつつあり、これからの安城のまちなかがどのように変わっていくのかが楽しみなところです。

By Nagura

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