学生たちが商店街で活躍する
三田市中心市街地を訪ねて 
(日本・兵庫)

2003年2月6日

 兵庫県三田市(人口約11万5千人)を訪ねて参りました。三田市へは、日本商工会議所主催の第9回地域振興セミほんまちラボ外観ナー「にぎわい創出に学生の知恵」で行ってきました。セミナーは2日間にわたり、1日目が三田市で、2日目が大阪府守口市の商店街で活躍する大阪国際大学の学生たちの様子を視察してきました。また、前回の第8回地域振興セミナー「地域の活性化は、まちなか研究室から!」では、岐阜県大垣市の商店街で活躍する岐阜経済大学の学生たちの取り組みを見てきています。

 昨今、中心市街地の商店街のなかで、大学の研究室や学生たちのサークルの事務所、学生たちによる店舗運営など見られるようになってきていますが、その先駆けとなったのが、今回紹介します関西学院大学の取り組みです。関西学院大学総合政策学部教授の片寄俊秀先生の研究室が三田市本町センター街商店街のど真ん中に開設したのが1996年6月1日です。一番上の画像で外観がご覧いただけますが、約8坪の小さな建物を借りて「まちかど研究室・ほんまちラボ」という名称で立ち上げました。また、一番上の画像の左上に見られる街灯は、商店街の方々とともに学生たちがデザインを手伝ったものです。

 また、この建物がたいへんなお宝で、享和元年(1801年)建造の豪商神田惣兵衛の屋敷(油谷邸)の一角だったそうです。ですから、築200年以上経っているわけです。ここ本町センター街商店街は、江戸時代から栄えた由緒ある商店街で、米(こめ)商人の神田惣兵衛は、一夜にして藩主の年収を稼ぐと言われていたそうです。(この建物(町家)は、1995年の阪神・淡路大震災の影響を受けて廃屋状態となっており、一級建築士でもある片寄先生と学生たちがゼミの時間などを利用して、柱の補強、障子の張り替えなど1カ月余りの作業で再生させました)

 今回の視察では、他に用事があり片寄先生はいらっしゃいませんでしほんまちラボたが、以前、愛知県岡崎市の商工会議所のシンポジウム&懇親会の際にお会いして、お話させて頂いたことがありますが、実践教育を伴ったたいへん学生思いの先生であり、言い意味で型破りという印象が残っています。なぜ、片寄先生が、関西学院大学三田キャンパス内ではなく、三田市の中心市街地に研究室を立ち上げたかという背景には、三田市の地域特性も影響しています。

 まず、三田市の地域特性をみていきますと、三田市は、京阪神都市圏の外縁部に位置し、今やベットダウンとなっていますが、1980年代はじめに丘陵地にニュータウン開発が始まる前までは、ながらく約3万5千人ほどの人口規模でした。三田市は、1996年までの10年間、連続して人口増加率日本一を記録するほど激しい変化を受けてきた地域です。現在、人口は約11万5千人で、昔から住んでいる旧住民とニュータウンに引っ越してきた新住民の割合は逆転し、旧住民3割ほどに対し、新住民7割ほどになっています。このような激しい地域変化を受けて、三田市は、ニュータウン、既成市街地、そして近郊農村という3つの顔をもつきわめて特徴ある地域となっています。

 上記のような三田市の地域特性のあるなか、片寄先生には「調和ある街づくりを目指すには、ニュータウン地域だけでなく、伝統ある旧市街地の活性化が必要である」という考えがあり、研究拠点にふさわしい場所を当時探していたところ、三田市本町センター街商店街の町家(空き家)に行き着いたそうです。上から2番目の画像は、ほんまちラボの入り口部分を写したもので旬の市す。片寄先生取り巻く学生たちの商店街での取り組みとしては、本来の学びの場としてのゼミ活動はじめ、定期的に「ほんまちラボ」新聞を発行しており、三田祭り、天神祭りなど商店街のイベントに参画しています。その他、商店街の範囲に留まらない活動として、総合学習の一環として、子供たちと一緒に商店街を探検したり、農家の女性グループと協力して商店街のなかに産直市を開いたりなど広がりある活動をしています。

 三田市の中心市街地商店街における学生たちの活動が脚光を浴びるきっかけとなったのが、1998年11月にNHKで放映された「新日本探訪」です。当時、私は、独立してまちづくりを行う会社を立ち上げた(1998年10月6日に有限会社ケイプラン設立)ばかりで、出張先の東京でたまたま見た記憶が残っています。学生たちが、ある店の商品の売り文句などのポップを一緒に考えて書いたり、商売を手伝ったり、商店主と学生たちの微笑ましい光景が残っています。テレビを見てからかれこれ5年近く経っていますが、学生たちが卒業していくなかで入れ替わるなか、継続して商店街と学生たちが連携して取り組んでいる点は本当に素晴らしいです。さらに、今年度(2003年4月から)、まちづくりワークショップという形式で、「ほんまちラボ」を卒業して社会人である先輩が、「ほんまちラボ」の現役生である後輩たちに教える取り組みが始まります。先輩たちの培った商店街との絆というか経験が、後輩に伝わる素晴らしい取り組みであり、さらなる新たな展開が生まれることを期待しております。

 今や、“商と学の連携”は全国各地でみられますが、さらに“農”をにぎわい館入れた“商と学と農の連携”は、あまり見られなく今回興味深くみてきました。“商と学と農の連携”として注目したいのが、商店街のなかで、運営を学生たちがボランティアで応援している農家の作り手の女性たちの生産物直売の「ほんまち旬の市」です。上から3番目の画像は、「ほんまち旬の市」の外観を写したものです。学生たちと農家の女性が写っています。

 この「ほんまち旬の市」立ち上げのきっかけは、店主が高齢のために八百屋が閉店されたのを受けて、片寄先生の肝いりで、1999年5月20日に農家の女性たち20人のグループができたことが始まりです。最初は、テントの青空市からはじまりましたが、のちに、10年来シャッターが閉まっていた空き店舗をつかって常設店舗となりました。かれこれ「ほんまち旬の市」も4年近くを迎えますが、今も、毎週月曜と木曜に営業しています。「ほんまちラボ」同様、一過性の取り組みではなく、継続的に運営している点に注目して頂きたいと思っています。

 上記の“商と学と農の連携”について、片寄先生は“農がまちを救う”という言葉を発しています。「ほんまち旬の市」で働いている農家の女性たちの働きぶりを拝見させて頂くとともに話を伺ってきましたが、本当に元気でパワーあふれていました。中心市街地の範囲内だけで、いくら対策を考えても商店街の再生に必ずしもつながっていない現状をみると、商店街と農業従事者および大学(学生)などとの中心市街地の周りとの連携が必要だなあと今回視察していてつくづく感じた次第です。あと興味深いデータとして、先程の農家の女性グループの方が中心市街地との連携において望んでいることとして「安全な野菜を提供したい」「これからの時代を担う若者に、農業と食についての意識改革を深めてもらう機会を設けたい」「商店街に活気を与えたい」「買い手のニーズをさらに把握して、生産の参考にしたい」「欲を言えば、もう少しお客様を増やしたい気持ちがある」「これまでやってきて、現状の経営については自身がついたので、少し新しいことに挑戦したい」などが挙がっています。

 先月、たまたま愛知県において、私が農村生活アドバイザーという専業農家の女性の方々を前に講演とワークショップをする機会がありました。その中で、今回の三田市の“商と学と農の連携”の事例を紹介するとともに、ワークショップ手法を用いて、「“農”という立場(農業従事者として)で、中心市街地という場を活用して、“やりたいこと・できること・やるべきこと”」というテーマで話し合って頂きました。本当に元気な女性が多く、わいわいがやがやとさまざま意見が挙がりました。産直市を開きたいという上記の三田市における農家の女性たちと同意見の他に、特に目立ったのが子供たちを対象にした取り組みでした。子供たちに野菜の名前を覚えてもらう教育の場を設けたいとか、子供たちに地元の野菜を食べてもらいたい(給食にも地元野菜を提供したい)とか、さらに、中心市街地の子供たちを外に出すことで、互いに交流を深めていこうという視点で田んぼでどろんこドッチボールなどで楽しんでもらおうという意見も出ました。今回は、農家の方だけのワークショップでしたが、商と農、さらに学を加えたワークショップを今後、是非やりたいと思った次第です。これからの中心市街地の活性化には、さまざまな人や組織の連携が必要になってきます。

 一つ画像の説明を忘れておりましたが、上から4番目の画像は、三田市商工会が自主運営している「賑わい館」の店内を写したものです。三田駅から5分ほど歩いた商店街のなかにあり、三田ブランドのPR、場所貸し的な1坪ショップコーナーによる新規開業者の支援(インキュベーター機能)、情報発信基地、休憩コーナーなどの機能を持っています。

 今回、農という視点も含め紹介してきましたが、学生はじめ大学と自治体や商店街との連携は、ざまざまなところで進んでいます。視察レポートとしては、まだまだ少ないですが、検索項目「学生・大学における連携の取り組み事例(商店街・行政などとの連携)」を設けています。クリックして頂きご覧頂けましたら幸いです。学生・大学とまちづくりという観点では、これからも数多く紹介していきたいと思っております。

 今回、三田市を訪ねるにあたりまして、主催の日本商工会議所、開催地の三田商工会はじめ、関西学院大学の“ほんまちラボ”のOBの網本さん、関西学院大学の“ほんまちラボ”の学生たち、ほんまち旬の市の農家の女性の方々にご説明いただくとともに、ご案内いただきました。最後に、紙面(ホームページ・メールマガジン上)を借りまして、お礼申し上げます。ありがとうございました。

By Nagura

リターンイメージリターンイメージリターンイメージリターンイメージリターンイメージ