大人の街・表参道ヒルズ&
駅ナカ・エキュート品川を訪ねて 
(日本・東京)

2006年6月9日

 2006年2月11日にオープンした東京・表参道の「表参道ヒルズ」と2005年10月1日に開業した駅構内施設のいわゆる「駅ナカ」と呼ばれる東京・品川駅の「エキュー表参道ヒルズト品川」を訪ねてきました。また、今回は、時間がなくて見て来れませんでしたが、表参道ヒルズの近くの最寄り駅でもある東京メトロ表参道駅にも2005年12月2日に駅ナカの「エチカ表参道」がオープンしています。

 東京都心では、ここ数年、再開発が相次いでいます。これまでに、当方の視察レポートでも「都心の再開発プロジェクト“六本木ヒルズ”&“汐留シオサイト”&“LaQua(ラクーア)”を訪ねて」「生まれ変わりつつある東京・お江戸の日本橋(コレド日本橋、三越新館など)を訪ねて」「品川駅界隈の再開発&東海道・品川宿を訪ねて」「東京・丸の内の生まれ変わった“丸ビル”&リニューアルされた東京の北の玄関口“上野駅”アトレ上野を訪ねて」「再開発が進んでいる東京オフィス街・大手町〜丸の内〜有楽町を訪ねて」など紹介していますので、併せてご覧いただけましたらと思います。

 まず「表参道ヒルズ」から紹介していきます。表参道ヒルズは、ケヤキ並木の美しい表参道沿いの原宿駅と表参道駅の中間あたりにあります。一番上の画像は、参道ヒルズの外観を写したものです。ケヤキ並木に溶け込んだ外観が伺えると思います。また、上から2番目の画像は、同じ表参道のケヤキ並木の原宿駅に近い原宿クエスト前を写したものです。表参道ヒルズは、商業施設と住居(38戸)、駐車場(216台)から構成されている複合施設です。

 表参道ヒルズの商業施設部分は、地上3階、地下3階の6フロアーで構成されており、延床面積は3万4,061平方メートルあります。上から3番目と4番目の画像表参道ケヤキ並木は、表参道ヒルズの商業部分の建物内部を写したものです。画像からもご覧いただけますが、中心に吹き抜けがあり、その吹き抜けを囲むように、全長700メートルのスロープが6フロアにわたってらせん状に巡らせてあります。一筆書きのように、店舗を見ながら、ぶらぶらとまち歩きしているようなつくりとなっています。なかなか工夫されたというか空間の使い方がうまいデザインと感じました。また、らせん状のスロープにもこだわりがあり、表参道と同じ傾斜になっていたり、敷石の配置パターンも表参道と同じにしています。

 表参道ヒルズの建築は、建築家の安藤忠雄さんが設計しました。安藤忠雄さんは、私の好きな建築家の一人というか生き方に共感する人物です。安藤忠雄さん(1941年大阪生まれ)は、独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立し、コンクリートの打ち放しを駆使した建築で知られています。また、1997年には、東大教授となり、現在は特別栄誉教授です。安藤忠雄さんは、「すでにある景観を生かし、都市の記憶を次の世代に引き継ぎたかった」と建築の狙いを語っています。また、「建物の中に、もう一つの表参道を再現してはどうかというアイデアは住民の方との対話の中から出てきた」と明かしています。

 表参道ヒルズは、都心の再開発ビルに多い高層建築をあえて避け、建物はケヤキ並木と同じ高さにそろえて調和を図っています。表参道ヒルズ一番上の画像からもケヤキ並木と建物の調和が図れている様子が垣間見られると思います。建物の高さは最高で23メートルでケヤキ並木とほぼ同じ水準に抑えるとともに、その分、容積を最大限に生かすために地下は30メートル強まで掘り下げています。施行を担当した業者は、技術的にも施行管理上も例のない建築と言っています。

 表参道ヒルズは、関東大震災からの復興を掲げ、日本初の本格的コンクリート造りの集合住宅として建設された同潤会青山アパート(1927年完成)が生まれ変わったものです。表参道ヒルズができる前まで、80年の長きにわたり、表参道のランドマークとして愛されてきた同潤会青山アパートは、表参道ヒルズの一角に、当時の意匠のまましっかりと復元され、懐かしい表参道の風景を再現しています。また、表参道ヒルズの屋上は、都市の空中庭園の手本を目指して、できる限りの緑化がされています。

 表参道ヒルズのコアとなるターゲット層は、30〜40代前半を中心とした若いマインドを持ち、クリエイティビティな人々「O・TO・NA」を想定しています。「O・TO・NA」のコンセプトは、Oはオリジナル(個性あふれるライフスタイルがある)、TOはトゥギャザー(仲間を大切にする)、NAはナショナリティ(国民性を大切に思い、グローバルな感覚も兼ね備える人)です。

 商業施設の93のテナントのうち、8割が新顔で、年間1,000万人以上の来場者を見込んでいます。主なテナントを挙げますと、ギーブスアンドホークス(表参道ヒルズ英王室御用達の名門テーラーブランド)、ボッテガ・ヴェネタ(イタリアの高級皮革ブランド)、はせがわ酒店(日本酒のブティック)、キョウショウ(無線操縦車サーキット)、ポワヴリエ(スパイスショップ&カフェ)、ミヤシタ(洋食)、エスジェイエックス(メンズジュエリー)、ジミーチュウ(レディスシューズ&バッグ)、タビヲ(レッグウエア)、ハンナリ(ドッグファッション&グッズ)、キサラ(ライフスタイル)、ヒダ(ファニチャー)などです。

 上から5番目と6番目の画像は、品川駅の「エキュート品川」を写したものです。品川駅は、東海道線、京浜東北線、東海道新幹線の乗降客が他県からも流入し、「エキュート品川」を訪れる客層も若者から高齢者、ビジネスマンから主婦まで幅広いです。画像からも少し垣間見られますが、女性が多く、ビジネスマンの姿も見られました。ちなみに、品川駅の1日当たりの乗降・乗り換え人数は、約110万人です。「エキュート品川」は、駅構内にあり、2層からなっており、約1,600平方メートルの敷地に46店舗のテナントが入っています。デペロッパーというか運営は、JR東日本ステーションリテイリングがしています。

 いわゆる「駅ナカ」は、「エキュート品川」はじめ、冒頭で挙げました「エチカ表参道」、アトレ上野(2002年2月開業)、「エキュート大宮」(2005年3月開業)などあり、2007年度には、「エキュート立川」も予定されています。エキュート品川好調と言われる「駅ナカ」という駅構内に商業施設を集める鉄道会社の取り組みは周囲に摩擦を生みはじめています。「駅ナカ」が便利で利用者には好評な半面、駅の外では客足が減って商売が圧迫されているとの悲鳴が相次いでいます。鉄道会社は「共存共栄を」と収益確保に躍起ですが、東京都が固定資産税の課税を強化する方針を打ち出すなど包囲網は狭まっています。(2006年7月現在)

 「エキュート品川」より半年ほど早く開業した「エキュート大宮」は、ホーム上に新たな床を張るなどして、「エキュート品川」の約1.5倍の約2,300平方メートルのスペースを生み出しています。洋・和菓子や総菜類、カレーなど69店がずらりと並んでおり、まるで「デパ地下」を思わせるような感じだそうです。初年度は、売上高55億円の目標を58%も上回り、今年度(2006年度)は、88億円を目指しています。JR側は「乗降客が前年より1.5倍増え、駅周辺にも波及効果があったはず」と主張していますが、駅前の立ち食いそば屋は「会社帰りに駅を降りてくる人が減った」、近くの百貨店の食品売り場の責任者は「売り上げは十数%減った」などと話しているなど摩擦が生じています。

 このような「駅ナカ」が花盛りのなか、東京都は「駅ナカは実質的に商業施設だ」として課税を強化する方針です。(2006年7月現在)東京23区では、駅などの「鉄軌道用地」の固定資産税の評価基準は周辺の平均路線価の3分の1に抑えられてきました。東京都は、今年度(2006年度)がちょうど3エキュート品川年に1度の基準見直しに当たるため、一定基準以上の商業施設がある駅は、用地全体を周辺と同じ「宅地」として評価し直す考えです。東京都は、年間十数億円の増収を見込んでいます。

 JRだけでなく、東京メトロ、東京急行電鉄、東武鉄道なども商業施設を相次いで開業しています。その背景には、少子高齢化で鉄道利用者の減少は避けられなく、多くの人が通過する駅の空間を最大限に活用し、収益を確保したいという狙いがあります。今や、今回紹介しました「駅ナカ」と「駅外」の摩擦だけでなく、コンビニとスーパー、ドラックストアとスーパーなども業種を越えた競争が激化しています。今回、固定資産税の見直しが取り上げられていますが、フェアーな上でのお客様ニーズにあった競争が望まれていると言えます。

 今回、東京の再開発としては、身の丈にあったというか、心地よさが残る周りの自然と調和した表参道ヒルズを紹介しました。また、今、旬とも言える「駅ナカ」の取り組みを見てきました。賛否両論はありますが、「駅ナカ」そのものは、よく考えられており、うまくテナント構成しており、学ぶべき点は多いと思います。表参道ヒルズも「駅ナカ」もこれからが正念場であり、今後の行方をみなさんも見守っていかれたらと思います。

By Nagura

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