ニューヨークの街並み (アメリカ・ニューヨーク州)

視察日:1999年2月11日〜13日

 名古屋から出国し、成田経由で13時間余かけニューヨークのジョン・F・ケネディ空港に降り立ちました。今回は、いつもと違いJAL(日本航空)を使ったこともあり、国内線感覚でニューヨークに5番街イメージ降り立ったという感じも否めませんでした。一昨年ほど前に、名古屋−鹿児島間を頻繁に往復していたこともあり、確かに12時間以上と時間はかかっていますが、海外に来たというよりも鹿児島に着いたのかなという錯覚さえ覚えました。

 しかし、車で空港からマンハッタン島に入っていくに従って、“ニューヨークに来た”という実感が湧いてきました。今回行ってきましたニューヨーク、アトランタは私にとって初めていく都市ということもあり、事前に資料等は揃えていますが、聞くのと見るのは大違いということもありますので、非常に期待感を込めて行った次第です。

 まず、ダウンタウンに入り、ニューヨーク一の繁華街・タイムズスクエア辺りを歩いたのですが、第一印象としては、路上にゴミひとつ落ちてなく、思った以上に街全体がきれいに整備されていることに驚きました。“危険な街”という印象の強かったニューヨーク(ニューヨーク州人口約732万人)が、空前の観光ブームを引き起こすほど、どのようにしてきれいになったというか浄化されていったかは後ほど、詳しく紹介していきます。
 イエローキャブはじめ走っている乗用車を見ていましても、おんぼろ車はほとんどみられず、きれいさが目立ちました。最近では、アメリカの株価も不安定な動きも見られ、特にインターネット株は過熱気味ですが、私が行ったこの時期のニューヨークというものは、我が世の春を謳歌している様子そのものを映しているようでした。1年半ほど前にシカゴ(ニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐ大都市)に行った時は、けっこうおんぼろ車も見られただけに、車一つとっても今のアメリカは好調なんだなと思った次第です。
 そして、ニューヨークの犯罪面ですが、統計をみましても1998年の犯罪件数は1タイムズスクエアイメージ992年の半分ほどに減っています。私自身、海外の街を歩く時は、国内の街を歩く時に比べて、危険度に対するアンテナの感度を高めて感覚的に危険を察知するようにしていますが、タイムズスクエアからグランド・セントラル駅にかけて歩いた限りにおいては、まあ昼間ということもありますが、危険という感じはなく、東京の雑踏の中を歩いているような感覚さえしました。最近では、東京の方が危険に遭遇する割合が高いかも知れませんが・・・。上から2番目の画像が、タイムズスクエア辺りの人々が行き交う路上の風景を写したものです。
 また、海外に行った時は、だいたいダウンタウンの中にあるホテルに泊まるのですが、ロサンゼルスにしてもシカゴに泊まった時にしても、夜中に数回警察のパトカーのサイレンの音が聞こえ、何かあったかなと思ったものです。しかし、今回ニューヨークに泊まっている間においては、ぐっすり眠っていたということもあるかも知れませんが、夜中に警察のパトカーのサイレンの音を聞いたという覚えがありませんでした。

 ニューヨークが観光ブームというのは、ホテル代の高騰、市内観光などのオプションツアーの高騰、今アメリカで一番人気のあるミュージカル“ライオン・キング”のチケットがほとんど手に入らない状況をみましても、手にとるようにわかります。
 ニューヨークへの観光客はここ5年間増え続けており、フロリダ、ラスベガスに次いで全米3位となっています。昨年(1998年)1年間でニューヨークに訪れた人は史上最高の約3,400万人にのぼり、日本人だけでも約42万人の人が訪れています。
 このような観光ブームに、観光業界は大喜びしていますが、この地域に住む住民たちにとっては複雑な心境もあるようです。繁華街の歩道を旅行者が占め、レストランは予約でいっぱい、ホテルの宿泊料は急グランドセントラルイメージ騰し、そのあおりで古いホテルに20年、30年と住んできた低所得者たちが住み家を追われるという状況も出てきています。
 また、タイムズスクエアの通行量調査によると、昼食時の2時間だけで約7千人が押し寄せるという数値がでています。そしてその7割近くが観光客か買い物客ということです。そのため、付近で働く人たちは、混雑を避けるために時間をずらし、裏通りを遠周りして昼食に行っているそうです。確かに、歩いていましても、タイムズスクエア地区における飲食店の数の多さが目立ち、実際に午後2時過ぎにイーツィーズのイートイン(店内での飲食)コーナーで食べましたが、観光客風ではないふつうの人々で混雑していました。

 それでは、現在のニューヨークの街並みの様子・雰囲気はこのくらいにして、本題の“危険な街”という印象の強かったニューヨークが、どうやって空前の観光ブームを引き起こすほど安全できれいな街になったのかという部分に触れていきます。

 タイムズスクエア地区を歩きますと、ところどころに“The NEW(新生)”と描かれた旗がはためていています。そのThe NEW(新生)・まちづくりへの立役者となったのが、BID(ビジネス・インプルーブメント・ディストリクト)と呼ばれる民間組織です。民間(住民)主導により、住民の声に耳を傾け、小さなことから手掛けてきたことが今のニューヨークの再生へとつながっています。今、日本全国で商店街の衰退が叫ばれており、中心市街地活性化法のもと、タウンマネジメント機関(TMO)が設立されてきていますが、米国のBIDは、日本におけるTMOのモデルともいうべきものです。
 BIDは、州によってはDID(ダウンタウン・インプルーブメント・ディストリクト)とも呼ばれていますが、形態としては民間NPO(非営利組織)で、特別税徴収権があったり、連邦政府の補助金の受け皿となるなど準行政機関メトロポリタン美術館イメージ的な性格を持っています。現在、カナダも含めた北米で約1,000のBIDが活動しています。

 タイムズスクエアBIDは、1992年に地区内の大企業、小売業者、約3万人の住民の各代表で設立されました。清潔、安全、親切の3つを目標に掲げ、一時、荒廃と治安の悪化から再生不可能とまで言われたタイムズスクエア地区をここ数年で見違えるようににぎわいをよみがえらせています。今や、商業、観光、文化の中心地としての復活を果たし、“米国の顔”を取り戻しています。
 全米中に“タイムズスクエアの復活”と印象づけた清掃と警備は、市や市警察の行政サービスに上乗せする形で実施されています。ここタイムズスクエア地区には、赤い制服を着た専門清掃員と黒い制服を着た専門警備員がまわっており、ごみの散乱や違法駐車、客引きなどがあまり見られません。タイムズスクエア地区の「地域清潔度」は1991年の歩道66%、道路36%に対し、現在は歩道90%以上、道路80%以上に急上昇しています。犯罪面は先ほど述べましたように、現在は1992年の半分ほどに減っています。
 タイムズスクエアBIDの資金は、主に地区内から徴収する特別税でまかなっており、予算規模は98年概算で約765万ドル(日本円で約9億円:1ドル118円として計算して)にのぼっています。支出先は清掃、警備、ホームレス援助などのコミュニティーサービス、大みそかのカウントダウンイベント、観光促進など大半がソフト事業として使われています。

 次にタイムズスクエアから10分ほど東に歩いたところにあるグランド・セントラル駅を見事によみがえらせたグランドセントラルBIDの取り組みをみていきます。上から3番目の画像が、グランド・セントラル駅構内を写したものです。画像からも美術館のような美しさと21世紀にふさわしい機能を備えた駅に生まれ変わった様子が伺えるのではないかと思います。行った時は、駅構内で記念写真を撮っている家族連れの姿も見られ、観光名所となっている様子が伺えました。
 現在のグランド・セントラル駅は今から86年前の1913年に建てられたものです。取り壊しという危機も乗り越え、15年近くの歳月と莫大な費用をかけ1998年10月に改修オープンされる前までは、暗く、汚く、わかりにくいという“三重苦”を背負った駅でした。雨漏りはするし、窓にはほこりがこびりつき太陽光線が入ってこなく、メインコンコースの天井に描かれた天界図は汚れて真っ黒でほとんど絵が見えない有り様でした。
 現在のグランド・セントラル駅のメインコンコースの天井に描かれた天界図は、すっかりきれいになり、駅構内をガイドしてくれる無料のツアーが人気を博しているようです。その他、マイケル・ジョーダンズ・ステーキハウスなどの飲食店、マーケット、雑貨などの店舗も入っており、グランド・セントラル駅で一日遊んで楽しめるほど充実が図られています。私が行った時は、改修オープン後4カ月たらずということもあり、グランド・セントラル駅は光輝くようにきれいでしたが、個人的には、もう少し古さを残しつつ重厚さというか歴史の重みを出しても良かったのではないかと思った次第です。
 グランドセントラルBIDの年間予算は、1,000万ドル(日本円で11.8億円:1ドル118円として計算して)を超えており、ニューヨークにあるBIDの中でも最大となっています。専属のコンサルタント、店舗デザイナー、弁護士などをはじめ、専従職員も200人を超えています。同地区の街づくりに関する限り、市よりも力を持っていると言えます。

 今回見てきましたタイムズスクエア地区の再生は、日本で言いますと、大都市における中心市街地活性化のケースに当たります。大都市は不動産所有者、商業者などの権利関係が複雑で、スラム同然の状態からはい上がるには地方都市よりはるかに多くのエネルギーが必要だったと思われます。また、ニューヨークでは、今回紹介しましたタイムズスクエアBID、グランドセントラルBIDの他に30以上のBIDが存在し、互いに競い合うことによって、変革のパワーを生み出しているというところが、最も大きな強みと言えます。

 また、今回のニューヨーク・アトランタ視察全体を通してのコラム「’99ニューヨーク・アトランタ視察を終えて」も合わせてご覧いただければと思います。

 今回、文中には出てきませんでしたが、一番上の画像は、高級店が軒を並べる五番街を写したものです。朝10時ころに行ったため、店はまだ開いていませんでしたが、五番街界隈は、ティファニー、シャネル、プラダ、ルイ・ヴィトンはじめ高級店が集積しており、華やかさは十分感じられました。
 そして、一番下の画像は、メトロポリタン美術館正面の外観を写したものです。メトロポリタン美術館の館内の様子につきましては、コラム「’99ニューヨーク・アトランタ視察を終えて」にて触れています。

By Nagura

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