安城市の新美南吉生誕百年祭&
安城七夕まつりを訪ねて
(日本・愛知)

視察日:2013年7月27〜30日、8月2日〜4日

 2013年は、童話作家・新美南吉(1913年(大正2年)7月30日生まれ)が生まれてちょうど100年を迎え、生まれ故郷の愛保育士さんの南吉体操知県半田市と新美南吉が先生として教えていた愛知県安城市では、新美南吉生誕百年祭の取り組みが盛大に行われました。

 半田市長も参加された安城市の新美南吉生誕百年祭を訪ねてきました。また、新美南吉生誕百年祭に引き続き、連動というか同時開催された安城七夕まつりも合わせて紹介します。

 ここ最近、JR安城駅界隈の中心市街地商店街を訪れた方は、お気づきになったと思いますが、まちなかに南吉作品のウォールペイント(壁画)があふれています。電車で来た方には、JR安城駅のホームに降り立った時からホームからも見ることができます。ホームから見える壁画は、駅にマッチしたような貨物列車が描かれています。ホームもしく電車に乗った方からも見えるように駐輪場の壁画に描かれた作品は、新美南吉が昭和15年4月に書かれた「百牛物語」の一つ「大力の黒牛と貨物列車の話」がモチーフになっています。当時の安城駅前にあった金魚屋(現在の広千)に牛が飛び込んだ話から思いついて書かれた話で、力自慢の黒牛が起こした騒動の様子が楽しく描かれています。

 JR安城駅前の中心市街地の商店街を歩きますと、現在(2014年1月現在)、お店や倉庫、事務所などの外壁に25カ所の南吉作品が描かれています。「おじいさんのランプ」「手袋を買いに」「花のき村と盗人たち」などの童話が多彩なペンキで鮮やかに描かれています。また、壁画には童話作品だけでなく「女学生と歩く南吉」「商店街を歩く南吉」「牛鍋を食べる南吉」「笑顔で走る南吉」など想像で描かれた楽しい絵もあります。大半は数十センチから数メートル四方の大きさの絵ですが、なかには巨大な壁画もあります。

 5階建ての市営駐車場の長さ70メートル、高さ15メートルの壁には、南吉作品の「巨男の話」と「木の祭り」をメインに、安城時代の作品を中心に9つの安城市長と半田市長作品が描かれています。また、2階建ての七夕まつりの作業場となっている日通倉庫の壁いっぱいにも縦6メートル、横33メートルの作品が描かれています。七夕まつりの作業場として、倉庫内には様々な飾りや資材が入っていることにちなんで、星空を背景に、南吉の肖像と南吉の7つの作品のワンシーンとともに、七夕まつりの竹飾りと安城七夕まつりの公式キャラクターの願いごとの精「きーぼー」も描かれています。

 また、まちなかには、南吉生誕100年を迎えることを機に、新美南吉をより深く知るためのスペースとして「南吉館」もオープンしています。南吉が通ったと言われる商店街にあった喫茶店を南吉が安城で活躍した時代の昭和初期風のたたずまいに改装し、安城時代の南吉の様子や執筆作品などが紹介されています。南吉館では、コーヒーやランチを楽しむこともできます。毎週土曜日には14時から南吉朗読ででむし会による新美南吉作品の朗読会も開催(2014年1月現在)されています。朗読会の後には、南吉作品に歌(作曲)を付けたオリジナル曲の横井敦志さんのギターによる弾き語りもあります。

 南吉館には、南吉作品や南吉に関する文献の販売とともに、先ほど紹介しました壁画のポストカードなどのグッズもあります。その中でも目をひくのが「新美南吉かるた」です。大人も子どもも楽しめるように新美南吉の童話や詩をかるたにしています。かるたには、1枚1枚に作品にちなんだオリジナルイラストが描かれており、46の南吉作品に触れることができます。新美南吉かるたは、活気ある商店街を目指す商店街の女将さんグループの「安城駅前元気会」と1977年に新美南吉の作品を読んで南吉を深く知ろうと発足し35年以上の歴史のある「新美南吉に親しむ会」が監修したコラボ商品です。

 一番上の画像は、新美南吉生誕百年祭のステージで、南吉たいそうコンテストのエンディングで保育園・幼稚園の先生方に親善大使の飾り作業手伝いよる南吉たいそうの総踊りの様子を写したものです。南吉たいそうは、安城市内の二本木保育園の先生方が考案されたユニークな体操です。歌詞も南吉の童話を簡単にわかりやすくアレンジしてあり、曲調はテンポ良く、1回聞いただけでも耳に曲調が残り、体を動かしたくなるような感じに仕上がっています。振り付けはラジオ体操を元に園児たちにも覚えやすいようにつくられています。

 上から2番目の画像は、新美南吉生誕百年祭のメインイベントの「祝」の灯りを灯すキャンドルナイトの点灯式で、安城市長と半田市長の両市長が南吉作品のおじいさんのランプにちなんだレトロ調のランプに灯している様子を写したものです。画像からは小さく見にくいとは思いますが、画像上のレトロ調のランプは、安城市役所の隣にある喫茶店「古雅」さんからお借りしたものです。喫茶古雅さんの親父さんは、かつてランプを収集しており、店内には江戸時代の貴重なランプなども展示されています。もちろん新美南吉生誕百年祭のキャンドルナイトの点灯式で使ったランプも飾られています。

 その他、南吉関係では、新美南吉生誕百年を機に、南吉が安城高等女学校(現桜町小学校)の先生として通っていた当時の下宿が一般公開されています。新美南吉が下宿を始めたのが1939年4月からで、その当時の南吉が過ごした下宿部屋が復元されました。実際に下宿先にも行ってきましたが、家主の大見夫妻が温かく迎えてくれました。南吉の下宿部屋は1960年代に洋間に改修して使っていた御主人が南吉の生誕百年を前に、当時の南吉の暮らしぶりを伝えようと、元の姿に戻しました。安城市の助成も少しありますが、大半は自らお金を出して改修しており、お話させて頂いて大見ご夫妻の南吉への思い入れ・心意気が感じられました。

 南吉が暮らしていた離れは8畳間の部屋で1920年代に建てたもので、南側に腰窓、縁側を設け、西側と北側に障子と雨戸があり、愛アーチ飾り板の天井と土壁という純和風づくりです。なかなか趣きのある建物でした。南吉は、1938年4月に安城高等女学校に赴任し、翌年の1939年4月から大見さん宅で下宿をはじめ、病気で退職するまでの約4年間をここで過ごしています。南吉は、ここで童話「花のき村と盗人たち」や「おじいさんのランプ」などを執筆しました。南吉が使っていた机も実際に部屋にあり、南吉が懸命に執筆していた様子が目に浮かぶようでした。

 次に、新美南吉生誕百年祭に引き続いて開催された安城七夕まつりを紹介します。安城七夕まつりは、安城の夏の風物詩で、毎年8月の第一金曜、土曜、日曜の3日間、JR安城駅を中心とした中心市街地で盛大に開催されます。昭和29年に始まり、2013年の七夕まつりは60回目の節目の年でした。

 安城七夕まつりの特徴は、竹飾りのストリートが日本一長いと言われており、同様に短冊の数、願いごとに関するイベントも日本一と思われます。七夕まつり開催期間中、約1000本の竹飾りがまちなかを彩ります。2009年にさきほど紹介しました公式キャラクターの「きーぼー」をつくって、これを機に、これまでは「日本三大七夕まつり」という謳い文句から「願いごと日本一」という謳い文句に変わりました。第60回の安城七夕まつりでは、ギネスの「短冊で世界記録に挑戦(竹にかけられた最も多い短冊の数)」して、みごとに世界記録の認定を頂きました。なんと1本の竹に、13,809枚の短冊が付きました。

 願いごとの精「きーぼー」をもう少し紹介しますと、その名前には、みんなの“希望”が託されているという意味もあります。安城七夕まつりで書いた願いごとを天の川まで届けてくれます。住んでいるところは、安城市役所の隣にある安城神社の森で、好きな食べ物はこんぺいとうです。

 きーぼーの誕生から5年が経って、今では七夕まつり開催期間中だけでなく、商店街と地域住民挙げてきーぼーのまちづく商店街アイドルの看板娘りを行っています。毎月第四土曜日には、安城駅前の道路を歩行者天国にして、「ホコ天きーぼー市」が開催されています。きーぼーグッズを売っているショップ、きーぼーの着ぐるみも登場し、移動カーのグルメや産直コーナー、手作りのブースなど所せましと出店しています。

 また、安城の中心市街地の商店街では、「きーぼーの街宣言」もしています。きーぼー宣言とは、安城七夕まつりの基本テーマ「願いごと」から「願いごとが叶うまち安城」をコンセプトに、安城のまちのブランド向上と個店の商売繁盛を応援する宣言です。

 上から3番目の画像は、安城七夕親善大使(以前のミス七夕)が先ほど紹介しました作業場の日通倉庫前でアーチ飾りに付ける花を開いて(作って)いる様子を写したものです。このような花を開く作業はじめオブジェの製作などは商店街とともに、町内会の方々も加わって一緒に行っています。ちなみに、親善大使の方々が開いているピンクの花は、上から4番目の画像のアーチ飾りで使われています。画像からは見にくいかも知れませんが、アーチ飾りのピンクの部分のどこかで使われています

 あと、一番下の画像は、七夕まつり会場における安城商店街アイドル「看板娘。」のステージの模様を写したものです。看板娘は2年前「商店街から安城を元気に!」をコンセプトに、商店街を応援しPRする商店街密着アイドルとして誕生しました。七夕まつりやホコ天きーぼー市におけるステージはじめ老人ホームへの慰問にも行っており、ファンもついてきています。2013年末には、卒業する子もおり、第二期生の看板娘オーディションも行われました。

 今回、新美南吉生誕百年祭から安城七夕まつりを紹介してきましたが、安城のまちにお越しなると日常的に、南吉の壁画はじめまちなかできーぼーグッズが買えたり、運が良ければきーぼーに会えたりもしますのでお気軽にお越し頂き、散策等されたらと思います。また、中心市街地から少し距離はありますが、20分ほど歩くと先ほど紹介しました新美南吉が暮らしていた下宿もあります。南吉が学校まで通った道を南吉先生の目線で歩かれてはいかがでしょうか。

 その他、これまでに視察レポートで紹介している「童話作家の新美南吉が安城高等女学校の先生として通った安城市の“みゆき商店街”を訪ねて」「赤レンガ建物&南吉のふるさと半田を訪ねて」「手づくり感覚の安城七夕まつりを訪ねて」「市民参加の安城七夕まつりを訪ねて」も合わせてお読み頂くとさらに見聞が広がることと思います。また、今後、さらに安城市と半田市が連携してやっていくことを願っております。

By Nagura

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