うだつの上がるまち・美濃市を訪ねて(日本・岐阜)

視察日:2012年10月23日&11月27日

 江戸時代に築かれた伝統的な建造物が多く残っている岐阜県美濃市(人口22,534人、8,112世帯、面積117.05平方キロメートル:屋根神様&うだつ平成25年2月末現在)を訪ねてきました。美濃市は日本の中央に位置し、天下の名川「長良川」や緑濃い山々など豊かな自然に囲まれています。また、美濃は、1300年の伝統を誇る「美濃和紙」が有名です。そんな見どころたくさんの美濃市を今回、紹介していきます。

 今回、美濃へは、うだつの上がる町並みのエリアにある商店街のお手伝いで、「美濃の地に合った集客方法・事業展開」を考えるワークショップ(講習会)のコーディネーター・アドバイスでお伺いしました。美濃の商人(あきんど)たちが頑張っている様子も最後に少し紹介したいと思います。

 まず、今回のタイトルにも付けている「うだつの上がるまち」、美濃の古い町並みの景観の中でも象徴的な存在になっている「うだつ」をご存知でしょうか。うだつとは、日本家屋の屋根に取り付けられた小柱、防火壁、装飾のことを指します。平安時代は「うだち」と言っていたそうですが、室町時代以降「うだつ」と訛って、今にいたっているようです。うだつは本来、町屋が隣り合い連続して建てられている場合に隣家からの火事が燃え移るのを防ぐために防火壁として造られたものです。しかし、江戸時代の中期頃になると装飾的な意味に重きが置かれるようになっていきます。

 このように装飾的な意味合いが強くなると、自己の財力を誇示するための手段として、上方(大阪や京都など)を中心に商家の屋根上に競って立派なうだつが上げられるようになりました。うだつを上げるには、それなりの出費が必要だったことから、うだつが上がっている家は比較的裕福な家だったと言えます。そのことから、屋根の上に上がっているうだつは、慣用句の「うだつが上がらない(生活や地位が向上しない、状態が今ひとつ良くない、見栄えがしないという意味)」という語源のひとつとして考えられています。

 一番上の画像と上から2番目の画像でうだつを見ることができます。一番上の画像は、古い町並みの中にある薬屋さんの外観を写したうだつの上がる町並みものです。薬屋さんの店名がずばり「うだつ薬局」ですが、そのうだつ薬局さんの屋根と隣の家の屋根の間にある三角形の立派な屋根瓦がうだつです。また、一番上の画像は、正面から写したものですが、上から2番目の画像は、少し斜めからうだつを見ることができます。

 あと、屋根周りで珍しいものとして、少し見づらいかも知れませんが、一番上の画像におけるうだつの左斜め下にある1階廂屋根の上に何か祀ってある四角いものにお気づきになりましたでしょうか。これは「屋根神様(やねがみさま)」というものです。東海エリアにお住まいの方はご存知かもしれませんが、愛知県や岐阜県などで昔よく見られた屋根の上に祭られた祠(ほこら)です。

 ひさし屋根や軒下など地面から高いところに祭られることから「屋根神」と呼ばれるようになりました。屋根神様は、一般に火伏の秋葉神社や厄除けの津島神社のほか伊勢神宮や氏神を祭っており、町内や隣組といった地域の小組織で祭祀を行っています。現在では、屋根や軒下など高所に上がっての祭祀が危険ということから地上におろされた社も多いようです。名古屋市内では、戦災被害の少なかった西区に多く残っており、以前、視察しましたレポート「名古屋の下町・円頓寺商店街界隈」の中でも、屋根神様の画像を載せておりますので、合わせてご覧頂けましたらと思います。

 一番上と上から2番目の画像でみられるうだつの上がる町並みは、国の伝統的建造物保存地区に選定されており、ご覧頂いたようなうだつが上がる裕福な家々が多くあります。うだつの上がる町並みは、江戸時代から明治時代にかけて造られた商家が軒を連ね、なんとも言えない心地よい古いたたずまいを見せています。なかでも、国指定の重要文化財になっている造り酒屋の小坂家住宅は、屋根全体が円弧を描くように起り(むくり)になっている珍しい貴重な建物です。また、市指定の文化財の旧今井家住宅は、庭や蔵などに往時の繁栄を今もとどめていま小倉城址からの長良川の眺めす。庭には、水琴窟があり、水滴が落ちて発するきれいな音色を楽しむことができます。

 冒頭で1300年以上の歴史と伝統を誇る美濃和紙と書きましたが、うだつの上がる町並みを歩きますと、ところどころに美濃和紙を使ったあかりのオブジェが飾ってあります。美濃和紙は経済産業省伝統的工芸品に認定されています。美濃は紙の原料となる楮(こうぞ)の質がとても良く、またたくさん採れたことから、全盛期には約5,000戸の紙すきの家がありましたが、現在では、30戸弱が残っているだけです。しかし、和紙の丈夫さ(色が変わりにくく長持ちする)や美しさが日本だけでなく、海外からも見直されるようになってきています。

 小さくて見づらいとは思いますが、一番上の画像におけるちょうど屋根神様の下の路上に美濃和紙を使ったあかりのオブジェが飾ってあるのがご覧いただけます。また、上から2番目の画像からも美濃和紙のあかりのオブジェがずらっと路上に並んでいるのがご覧頂けると思います。これらのあかりのオブジェは、毎年開かれている美濃和紙あかりアート展で出品された作品の一部です。飾ってある作品のオブジェは一般の方々の作品です。全国から美濃和紙を使った「あかり(光・光源)を用いた一体型立体造形」作品を公募して、毎年500近い作品が届きます。美濃和紙あかりアート展は1994年から毎年行われており、まもなく20年を迎えます。

 応募された作品は、2日間にわたって「うだつの上がる町並み」に上から2番目の画像で見られるように展示されます。そして、夜には、500近い応募された作品にあかりが灯り、美濃和紙の持つ柔らかさと美しさがよりいっそう江戸時代の情緒を残すうだつの上がる町並みに映えます。美濃和紙あかりアート展の当日は、出展者や全国各地から多くの来場者でにぎわいます。また、応募された作品には、審旧名鉄美濃駅査もあり、一般の部、小中学生の部に分かれて、大賞、入選作品など選ばれます。

 うだつの上がる町並みから長良川の方に少し歩いたところにある小倉山城(おぐらやまじょう)の城跡も訪ねてきました。小倉山城は、飛騨国高山城主であった金森長近が養子の金森可重に高山城を譲り隠居し、慶長10年(1605年)にこの地に隠居城として築城したものです。現在は、城は現存してないですが、当時は小倉山の山腹部分に本丸と二の丸があり、山麓には三の丸が築かれていました。城跡といっても小倉山城に登るところの石垣の上には立派な模擬櫓が建てられています。実際に頂上まで登ってきましたが、頂上には天守閣風の展望台があります。上から3番目の画像は、その天守閣風の展望台からの眺めを写したものです。展望台からの眺めは本当に絶景で、金森長近も堪能したと思われるたいへん素晴らしい眺めがご覧頂けると思います。目の前に広がる大きな川が長良川です。画像から雄大な長良川と緑鮮やかな山々が連なっている美濃の豊かな自然を感じられることと思います。

 また、うだつの上がる町並みから少し歩いたところにある平成11年(1999年)に廃止された旧名鉄美濃駅も見てきました。名鉄美濃町線は、新関と美濃の間を88年間にわたって走っていました。旧名鉄美濃駅は、現在、ホームを含む駅舎とともに、当時の車両が保存されています。上から4番目の画像は、当時のホームに停車している車両を写したものです。実際に、車両の中にも入ることができます。しかし、美濃市から管理を委託されていたボランティア団体の旧名鉄美濃駅保存会が諸事情で2013年2月末をもって管理をやめることになったそうです。今後は、市が平成25年度(2013年度)に耐震調査・修繕設計を予定しており、平成26年度(2014年度)に修繕を計画しているとのことです。リニューアルまでにはしばらく時間がかかりそうです。

 最後に美濃の商人(あきんど)たちが自分たちのまち・商店街を良くしていこうと頑張っている心意気の様子を紹介したいと思いワークショップ風景ます。うだつの上がる町並み含む中心市街地では、空き家を利用した飲食店や観光客向けの店舗が開業するなどまちづくりと一体となった賑わいの創出の取り組みは行われていますが、それでも、課題としては、さらなる空き店舗の増加や事業主の後継者の問題などがあります。

 上から5番目の画像は、「美濃の地に合った集客方法・事業展開 〜行動(実証実験)に向け、一歩踏み出すワークショップ〜」というテーマで商店主の方々が真剣に取り組んでいる様子を写したものです。うだつの上がる町並みの中にあるまちかど情報ステーションで行い、ちょうど、ふせん紙に「商店街やまちの良いところ」と「商店街やまちの課題・困っていること」を個人作業で書き出しているところを写したものです。そして、その後、それぞれ書いて頂いたふせん紙を読み上げて頂き、模造紙にまとめていきました。

 そして、ここからが要ですが、長所を活かしながら課題を解決していく方向性で、「商店街やまちの良いところ」を念頭におきながら、「商店街やまちの課題・困っていること」を踏まえて、今後のあり方を熱く話し合っていきました。話し合いは郊外の大型店の進出などの外部要因への対策からお店そのものの課題、商店街の課題、うだつの上がるまちの課題など内部要因への対策など多岐にわたり、それぞれ、自分たちでまずできること、地域住民や市民団体などと連携してやっていくこと、ハード面など行政や商工会議所などと連携してやっていくことなど話し合っていきました。

 今回、重視したのは「一歩踏み出すワークショップ」という点です。往々に話し合いで満足してしまって、なかなか次の一歩が伴わない場合も多く見られますが、今回は、多くの課題における解決策の中で、まず自分たちでやれることから始めてみるという姿勢で話し合いを通して、メンバー間の共通認識を固めていきました。話し合いの中で、「どこにどんな店があるのかわかりにくい」というものが課題の一つとして挙がり、まずはこの課題で何か行動を起こしていこうという方向性になりました。

 うだつの上がる町並みを歩く人たちにわかりやすい看板づくりやマップづくり、手に取れる「お店紹介カード」はじめ、イベントがマンネリ化しているという声も出て、お店にお客さんを呼び込み一歩入って頂く事業(イベント)への転換を図るなど様々な案が挙がり、これらの案をベースに今回、集まったメンバーを中心に話し合いを重ねながら実証実験的に向けて一歩踏み出していこうという共通認識ができた次第です。

 また、美濃市は、岐阜大学と包括連携協定を結んでおり、多様な協定の中の一つに「地域の課題解決に関すること」という項目もあり、今回、話し合った中で、広くうだつの上がるまちの課題については、大学・学生、地域と一緒になって課題の解決に向けて動いて行くこともできます。

 今回の視察レポートでは、情緒あふれる伝統的な建造物が残ってる町並み、長良川はじめ自然豊かな美濃、商人(あきんど)がまちのために奮闘している姿などをみてきましたが、一度、皆さんも機会がありましたら、是非、ご自身の足で、ご自身の目で美濃を訪ねてみられてはいかがでしょうか。

By Nagura

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