安全安心の街づくりに取り組んでいる
明大前商店街を訪ねて 
(日本・東京)

2005年11月1日

 商店街が主導となって地域住民とともに“安心安全の街づくり”を進めている東京都世田谷区松原地区にある明大前商店街を訪ねてきま明大前商店街した。上から5番目の画像に商店街の通りに架かっているフラッグが見えますが、そこには、祝、街路灯完成、時計塔完成の下に画像からは読みづらいですが、「元祖 安全安心の街づくり 明大前商店街振興組合」と書かれています。今回の視察レポートでは、元祖と謳うだけをことを商店街と地域住民が連携して取り組んでいる様子を紹介していきます。そして、その地道な取り組みが実を結び、彼らの当初の願いが叶う見通しとなっています。

 明大前商店街は、京王線と京王井の頭線が交差する明大駅前を中心に広がっています。京王線沿線一の規模を誇る商店街(約280店)で、すずらん通り、学園通り、富士見通り、松栄会の4つの商店会で構成されています。1996年に合併してできた商店街振興組合です。上から2番目の画像は、明大前駅の改札を出た広場から写したものです。画像から若者の姿が伺えますが、大学の名前が駅名になっているように、すぐ近く(徒歩5分ほど)に明治大学の和泉キャンパスがあります。明治大学は、ここ明大前の和泉キャンパス以外に、駿河台キャンパス(東京都千代田区)、生田キャンパス(神奈川県川崎市)があります。

 特に、ここ和泉キャンパスは、文科系6学部(法学部、商学部、政治経済学部、文学部、経営学部、情報コミュニケーション学部)の1・2年生が通っている明大前駅ので、若さと活気にあふれています。都心へのアクセスも抜群の立地にありながら、和泉キャンパス内は、閑静で緑豊かな環境にあります。渋谷、新宿、吉祥寺の繁華街には、電車で10分以内です。上から4番目の画像が、明治大学和泉キャンパスの正門を写したものです。ちょうど、行った日に学園祭をやっていました。

 前置きが長くなってしまいましたが、物騒な世の中になってきており、安心安全がまさに求められているなか、明大前商店街は、数年前から地域住民とともに、民間交番をつくって、地域の安心安全を自分たちで守っています。きっかけは、治安の悪化です。2000年にかけ、商店街を囲む世田谷区松原地区で空き巣やひったくり、痴漢が増加しました。年間400件と、地元警察署管内で最も治安の悪いと地域となっていました。

 まず、商店街振興組合は、交番を誘致しようと関係先に働きかけましたが、交番として適当な用地が確保できずに実現しませんでした。そこで、「安心して買い物ができる街にしたい」という利用者の声の高まりもあり、自分たちの街は自分たちで守ろうとボランティアによる自警団の設置を考えました。2001年9月に地元警察署署長及び町会長を相談役として迎え、明大前商店街振興組合自警会が結成されました。愛称は、明大前ピースメーカーズ(MP)で、2001年10月から隊員10名が商店街周辺地域のパトロールを開始しました。

 上から3番目の画像が、明大前駅前にある明大前ピースメーカーズの拠点となっている民間交番を写したものです。この民間交番明大前民間交番は、京王電鉄と世田谷区から駅前の用地を無償で借りたもので、民間交番には振興組合の職員が午前9時から午後5時まで常駐しています。その後の時間は、その日のパトロールを行う隊員が22時過ぎまで詰めています。少し見にくいかも知れませんが、MPというシンボルマークと明大前PEACE MAKERS BOXという文字が書いてあります。上から2番目の画像の明大駅前広場のちょうど右手側にあります。2001年10月から隊員10名で始めて、7カ月後には痴漢件数が0になりました。

 明大前ピースメーカーズのメンバーは、今では、商店主28名のほか、地域の学生、会社員、主婦、アルバイト、空手道場関係者など15名も加わり、43名が6組から7組に分かれ、朝、夕を含めて週11回の巡回に出ています。犯罪防止、早期通報が目的ですが、帰宅途中に足を痛めた高齢者を自宅に送ったりするなど、時にはきめ細かな住民支援サービスの役割も担っています。民間交番では、1日40件ほどの道案内や万引きの通報などに対応しています。

 活動は、隊員の自主性を重んじており、パトロールも商店街の個々の店の閉店時間に合わせ、人員配置を工夫するなど、隊員の都合に合わせた活動を行っています。不測の事態に備え、パトロール中に死亡したり、怪我をした時のための保険を新たに保険会社に作ってもらったそうですが、活動開始以降事故は起きていないということです。

 また、警察の助言を受け自警会規約を制定しています。規約は細則で武器を所持しない、加害行為はしない、パトロールは必ず2名以上で行う、必ず制帽明大学園祭・制服を着用する、パトロール順路を常に変更し同じ道順は避ける、パトロール中は赤色燈を常時点灯しベルを鳴らすなど、隊員の行動規範を明確にし、隊員が活動しやすくしています。チキーン、チキーン、チキーンという北海道から取り寄せたクマよけの鈴を鳴らしながら、明大前ピースメーカーズの隊員が明大駅近くの閑静な住宅街などを巡回しています。

 民間交番の敷地と建物は、世田谷区と京王電鉄の協力による無償で借りておりますが、ランニングコスト(運営費)は自前でやっています。通常の警察の交番では、16時間稼動で人件費等も含めてランニングコストが年間約1億円かかっていると言われています。明大前ピースメーカーズの民間交番(MPボックス)では、12時間稼動で1人常駐で年間300万円かかっています。この運営費の捻出は、商店街振興組合の予算を基本に、地域住民や近くにある明治大学からの寄付でまかなっています。また、明治大学は、生協売店の廃止に伴い、商店街の利用推進に協力しています。

 商店街と地域住民や近隣の大学が協力した明大前ピースメーカーズの取り組みによって、犯罪件数が減るとともに、商店街の活性化、地域住民の結びつきなどにも貢献しています。2003年頃からNHKの全国番組や警察白書に紹介され、暮らしやすい街として、知名度があがってきています。“明大前に住むと安全”ということから女性の乗降客数や独り暮らしの学生が増え、女性専用マンションが建つなど地域のにぎわいにも貢献しています。不動産仲介業者も以前6件だったのが、今では32件となっています。

 また、明治大学の学生たちが商店街を調べ歩き、大学祭で振興策を発表したり、季刊のフリーペーパーで店を紹介したりす明大商店街るようになってきています。明大前ピースメーカーズの取り組みや運営方法を学ぼうと、全国の自治体からも視察や講演依頼が絶えないようです。冒頭でも述べましたが、交番をつくって欲しいという要望がここに来て実現できる見通しとなってきています。

 明大前ピースメーカーズの方たちが講演等で「警察が交番をつくってくれないから民間交番をつくった」と話してきたことばかりではありませんが、現在、明大前駅周辺は線路高架化の再開発中で、今春(2006年春)には本物の駅前交番ができる見通しです。明大前ピースメーカーズは役目を果たしたことになりますが、周りから「続けて欲しい」という声も多く、活動は続ける方針で、警察署の後押しもあり、青色灯を照らす巡回車の導入など検討しています。

 ここで、少し交番配置の取り組みを紹介します。愛知県警は、県下全域の交番の配置を大幅に見直しています。2014年度までに交番のうち約14%を移転し、駐在所からの切り替えも進めています。古くからの住宅地などに交番が集中する半面、新しく開発された地域に少ないといった不均衡を是正し、増加する事件・事故や夜間の犯罪への対応能力を高めるのが狙いです。愛知県警では10年間で、385箇所の交番のうち52箇所を移転するとともに、61箇所を新設し、62箇所を廃止します。駐在所については、交番への切り替えや廃止を進めます。その結果、最終的に交番が2005年度当初と比べ52箇所増の437箇所に、駐在所は144箇所減の66箇所となり、交番と駐在所を合わせると92箇所減の503箇所となります。

 愛知県内の交番は古くからの市街地や幹線沿いに集まっている傾向があり、新興住宅地などの住民からは開設を望む声もあがっていました。古くからの交番の中には、老朽化が激しかったり駐車場所がなかったりして活動に支障が出ているといいます。また、駐在所は1人が基本的に日中だけ勤務しているため、交番への切り替えで夜間対応を強化します。また、空き交番対策として、2005年秋の異動で約150箇所の交番員を増やし、すべての交番で6人勤務(3交代制)ができるようにしました。

 交番の大規模な再配置は福岡県警などが既に実施しています。交番を大型化し勤務態勢を強化するため、2003年度、交番と駐在所を統廃合し、計570箇所から331箇所にしています。2004年には、刑法犯の認知件数が2002年より約4万件少ない12万9千件に減少し、検挙率も15ポイント増加の31%に回復し、交番再配置の効果と評価されています。

 今回の視察レポートでは、明大前商店街の取り組みを紹介してきましたが、4年半ほどにわたる地道な明大前ピースメーカーズの取り組みによって、地域の安全をつくりだし、地域の人々の絆も強まり、さらに本物を交番を呼び込んできたことは素晴らしいと思います。まさに、フラッグの書かれた言葉通り、「元祖安全安心な街づくり」を率先してきた地域と思います。

 安全安心の取り組みをきっかけに、商店街と地域住民、地域にある大学・学生たちとの絆も深まり、地域の価値というかブランドというべき住みやすさを高めてきました。これから本物の交番が出来ますが、本物の交番にできないきめ細かいサービスこそ、これからの明大前ピースメーカーズに求められるものと思います。本物の交番と明大前ピースメーカーズがうまく連携することで、安全安心で、さらに心の通った地域づくりにつながっていきます。今や、地域のことを誰よりも一番よくわかっている“明大前ピースメーカーズ”は、地域になくてはならない存在になっています。これからのさらなる取り組みを期待しております。

By Nagura

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