名古屋にオープンしたJR東海の鉄道博物館
「リニア・鉄道館」を訪ねて
(日本・愛知)

視察日:2011年6月11日

 2011年3月14日に名古屋市の金城ふ頭(名古屋港)にオープンした「リニア・鉄道館 〜夢と想い出のミュージアム〜」を訪ねてきリニア鉄道館ました。見どころがたくさんあるリニア・鉄道館を紹介していく前に、少し日本の鉄道の歴史を紐解いていきたいと思います。世界で初めて蒸気機関を利用した鉄道が走ったのがイギリスで1825年のことです。それに比べ、日本は江戸時代に鎖国制度をとっていたこともあり、遅れること日本に初めて鉄道が誕生したのは、時代が江戸から明治に変わった1872年(明治5年)のことです。

 当時は、明治維新を経て、江戸から明治に時代が大きく変わり、急速に近代化の道を歩んでいた時で、まさに「鉄道」は文明開化の象徴でした。日本で最初に出来た路線は、新橋と横浜の間です。当時の人々は、見たこともないようなスピードで走り去る蒸気機関車を海を走る蒸気船に対して「陸(おか)蒸気」と呼んで、驚嘆の目を向けていました。そして、現在につながる電気を動力源として走る鉄道車両の「電車」が初めて登場したのが市電ですが、京都市電で1895年(明治28年)のことです。

 それでは、リニア・鉄道館を見て行きたいと思います。リニア・鉄道館には、2027年に開業を目指しているリニア中央新幹線(東京〜名古屋間)の超電導リニアモーターカー(リニア新幹線)はじめ、歴代の鉄道車両が数多く展示されています。展示車両の中には、レトロな車内に入れたり、新幹線の懐かしい食堂車に入れたりします。また、それだけでなく、大人気の新幹線シミュレーターや在来線シミュレーターなどの体験コーナーや日本最大面積を誇る鉄道ジオラマがあります。その他、超電導リニア展示室、鉄道の歴史や仕組みの展示コーナー、映像シアター、体験学習室、キッズコーナー、デリカステーション、ミュージアムショップなどがあります。

 一番上の画像は、様々な車両が展示されているところを写したものです。歴代の新幹線はじめ懐かしい車両が並んでいます。正面に見えるだんごっ鼻のリニア鉄道館特徴的な車両が「夢の超特急」と呼ばれた初代の0系新幹線です。この0系新幹線は、高度経済成長期の1964年(昭和39年)に東京オリンピックに合わせて、東海道新幹線としてデビューしました。当時、東京〜大阪間は6時間以上かかっていましたが、新幹線の登場で最高速度210キロで3時間10分で結び、高速鉄道の幕開けとなりました。

 冒頭で蒸気機関車の話題を出しましたが、リニア・鉄道館に入って、最初に暗闇の中から浮かび上がってくるのがC62形の蒸気機関車です。C62形蒸気機関車は、東海道線特急「つばめ」「はと」などに利用されました。C62形蒸気機関車は、1954年には狭軌における蒸気機関車世界最速記録の時速129キロメートルを記録しています。また、実際に運転台の中に入ってみることができます。入り口を入ったところにあるシンボル展示には、C62形蒸気機関車の他に、新幹線の300系の次世代技術実験のために製作された時速443キロメートルを記録した試験車両と次に紹介する超電導リニアモーターカー(リニア新幹線)が展示されています。

 上から2番目の画像が、2027年の開業や中間駅の候補が挙がってくるなど今、注目を浴びている超電導リニアモーターカー(リニア新幹線)を写したものです。このリニア新幹線の開発が始まったのは古く、なんと今から約50年前の1962年です。当時、日本中で鉄道を走らせていた国鉄(JR東海はじめ民営分割化される前)が開発を始めました。鉄道を時速400キロ以上で走らせるためには、車体を浮き上がらせることが必要で、最初は空気の力で浮き上がらせる案もあったそうです。しかし、空気の力で浮き上がらせるには、大きな音が出たり、たくさんの燃料が必要だったりしてあきらめて、現在採用されている強力な磁石を使う方法になりました。

 開発をはじめ10年後に初めて、車体を浮き上がらせることに成功し、その後、ひとつひとつの課題を地道に解決しリニア鉄道館ていき、お客さんを乗せて走る技術が確立できたのが2005年のことです。そして、2007年にJR東海が「自分のお金だけで建設する」と宣言してようやく50年ほどかけて開発していきたリニア新幹線の実現できるめどがつき、現在に至っています。リニア新幹線は、時速500キロで走行し、東京・品川と名古屋を40分で結ぶ予定です。そして、さらに2045年までに大阪まで結ぶ計画です。

 上から3番目の画像は、たいへんな行列が出来ていた目玉でもある「鉄道ジオラマ」を写したものです。人込みでわかりにくいとは思いますが、中央あたりに名古屋駅のツインタワーをみることができると思います。この鉄道ジオラマは、奥行き4メートルから8メートル、幅33メートルというスケールの日本最大面積を誇り、鉄道にそれほど関心のない人でも十分楽しむことができます。東京から大阪までの東海道新幹線沿線などの代表的な建物や景色、日常的な人々の様子が精緻に再現されています。先ほどの名古屋駅のツインタワーはじめ、名古屋城、長島スパーランド、富士山、京都の清水寺、奈良の東大寺、東京タワー、東京スカイツリーなどリアルに再現されています。

 鉄道ジオラマは、車両の模型を450両所有し、そのうち約170両が随時走行しており、超電導リニアモーターカー(リニア新幹線)、0系からN700系までの新幹線やJR東海の代表的な在来線の車両を見ることができます。また、「鉄道の24時間」をテーマとしており、20分のサイクルで早朝から深夜まで見せる演出の工夫がされています。東京の空から徐々に明るくなり、駅のアナウンスが始まり、夜になると街の夜景が広がります。また、上から3番目の画像におけるジオラマの上部にモニターが見えると思いますが、印象的なシーンをクローズアップしてここのモニターに見せてくれる気配りもされています。

 鉄道ジオラマには、爪の先ほどの極小サイズのフィギュアが、約2万5000体ちりばめられており、さらにその一体一体の服装やポーズが異なっていまリニア鉄道館す。遊び心も多彩で、海の底で乙姫に見送られる竜宮城の浦島太郎、名古屋城の金のしゃちほこを盗もうとする忍者、アニメやゲームの萌えキャラを装飾した痛車(イタシャ)とメイド、怪しげな地底人など所々に意外なキャラクターが隠れています。また、夜になると新幹線が走っていた線路には、保守用車両がやってきて、深夜の点検保守作業の様子を再現する場面もあります。超電導リニアモーターカー(リニア新幹線)が走ってくる様子や様々な場面のフィギュアの様子など目を凝らしてじっくりと見ることが大切で、見つけた時は、おもわず顔がほころぶ小さな喜びが感じられると思います。

 上から5番目の画像は、最新鋭のN700系新幹線の実物大シミュレータの巨大スクリーンの走行風景を写したものです。この新幹線シミュレータは、体験しなくても10メートル×3メートルの巨大スクリーンを見ることができ、実際に振動も感じられ、運転している気分を味わうことができます。スクリーンには東京から名古屋間の走行風景のCGがけっこう忠実に写し出されています。新幹線シミュレータは1台しかありませんが、1回15分間で、東京から名古屋まで操縦することができます。

 新幹線以外に、在来線の運転シミュレータもあり、JR職員のトレーニング用がベースという本格派で8台も設置されています。また、JR東海の在来線の最新の実物大の「313系」の車両の車掌シミュレータもあります。車掌シミュレータは博物館施設では初導入で、CGで駅ホームの乗客の動きを映し出し、ドアの開閉や車内アナウンスなど、よりリアルに車掌業務を体験することができます。

 上から4番目の画像は、鉄道のしくみを展示しているコーナーを写したものです。新幹線を中心に、高速鉄道技術の進化の歴史や安全・高速・快適な運行を支えるしくみを実物の台車やパンタグラフ、模型を使用してわかりやすく説明されています。その他、デリカステーションのコーナリニア鉄道館ーでは、1964年(昭和39年)の東海道新幹線開業当時、東京駅で売られていた幕の内弁当の復刻版がリニア・鉄道館限定のお弁当として販売されています。この限定弁当の掛け紙には、当時の12両の新幹線の編成表が載っています。ちなみに、現在の東海道・山陽新幹線は16両運行となっています。また、映像シアターでは、高速鉄道をテーマに、時代をけん引した鉄道の歴史や新幹線開発の軌跡など、さまざまな映像を放映しています。

 最後に、鉄道つながりで、今回のリニア・鉄道館を訪ねるにあたって、名古屋駅から利用した「あおなみ線」について、紹介して締めくくりたいと思います。あおなみ線は名古屋市と愛知県が出資する第三セクターで、名古屋駅と今回紹介しましたリニア・鉄道館がある金城ふ頭間の15.2キロを結んでいます。あおなみ線は2004年に開業しましたが、2010年7月に事実上経営破綻しています。そして、名古屋市と愛知県が約450億円を財政支援して2013年度までの黒字化を目指しています。経営再建中のあおなみ線だけに、今回のリニア・鉄道館のオープンを何としてでも乗客数の増大につなげたいと考えています。

 そのような中、2011年7月1日の名古屋市市議会本会議で、河村たかし市長があおなみ線に蒸気機関車(SL)を2012年度にも走らせる構想を明らかにしました。赤字脱却を目指す一策ですが、実現までには、高架軌道を走らせることができる軽い車両の確保や排煙などの問題などのハードルがあります。蒸気機関車(SL)はじめ、引退した名鉄のシンボルとして長年にわたって愛されてきたパノラマカーなど様々な珍しい車両を走らせる「動く博物館」として、リニア・鉄道館に訪れる鉄道ファンはじめ観光客誘致につなげる考えです。

 以前に、リニア・鉄道館の展示車両の本館への移動に伴い閉園直前の佐久間レールパークに行ったことがありますが、リニア・鉄道館は本当に盛りだくさんで楽しむことができました。是非、皆さんもあおなみ線を利用されて行かれてみてはいかがでしょうか。いつの日か、あおなみ線にSL(蒸気機関車)が走るかも知れません。

By Nagura

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