地域電子マネーを展開する熊野町を訪ねて (日本・広島)

視察日:2000年3月24日

 広島市の南東郊外に位置する広島県安芸郡熊野町(人口:26,095人:1998年)を訪ねて参りました。熊野町は、広島市、東広島市、宅配事務所イメージ呉市を結んだトライアングルのほぼ中央に位置し、3市への通勤などベットタウンとしても便利な立地にあります。鉄道は、町内を通ってなく、隣接する矢野駅(広島市安芸区)を利用する形となり、車の利用が多いため朝夕は渋滞するそうです。また、バスで、直接広島駅まで出ることもできます。

 熊野町は、筆の産地として有名ですので、ご存じの方もいらっしゃることと思います。全国生産の約80%がここでつくられています。江戸時代からの歴史を持つ書道筆のほか、日本画・洋画、化粧用などの筆などがつくられており、子供から世界中のプロにまで使われています。今回、町内の施設「筆の里工房」も見てきましたので、後ほど筆についても紹介します。

 まずは、今回の視察の目的でもある熊野町が展開する地域電子マネーの「ニコニコカード」について紹介していきます。本格稼働は2000年4月からで皆さんがこの視察レポートをご覧いただく頃にはスタートを切っていることと思います。本格稼働に先駆けて(昨年末の年末商戦から稼働実験を行っています)一足先に見てきた次第です。

 これまでにコラム、視察レポート上で各地のカード化事業について触れてきておりますが、熊野町が展開するニコニコカードのキーワードになるのが“高齢者対応”という視点です。
 ざっとカード事業概要について述べますと、カードはICカードを利用しており、機能として、お買い物時にポイントがつきサービス熊野筆イメージが受けられるポイント機能、広島県信用組合のキャッシュカードとして利用できる機能、事前にお金をカード上に入れて小銭の手間がなくなるプリペイド機能(自宅における入金も可能)、高齢者への安否確認などの緊急通報機能(在宅端末保有者に対して)など付いています。
 ポイント機能、キャッシュカードとの連携は、各地の商店街カードにおいても見られますので、先に“高齢者対応”というキーワードを述べたことにも関連しますが、自宅におけるカード上へのプリペイド機能、緊急通報機能についてさらに掘り下げていきます。

 熊野町のニコニコカード事業に至る背景をみますと、紙ベースのスタンプカードからの単純な移行という形(現在、熊野町内におけるスタンプも存在しています)ではなく、高齢者向けに数年前から取り組んでいる宅配システム「ニコニコ便」に発端があります。宅配システム「ニコニコ便」の立ち上げ当初から携わっていらっしゃる方にお話も伺いましたが、最初は、なかなか注文がこなく、ご用聞きに一軒一軒まわったそうです。そうこうしているうちに、利用者にも安心感が生まれ、口コミで広がって利用者も増えてきたそうです。増えてくるのはうれしいことですが、そこで、問題になるのが、宅配にはお金のやりとりが発生するということです。利用者には高齢者が多く、なおかつ宅配を届ける運営側も地元の方(高齢者も含め)の活用を図っており、お互いに高齢者という場合もあり、お金のやりとりは繁雑さが伴い、カードを利用して間違いなくスマートに支払いができないだろうかというところから、カード化に至ったわけです。一番上の画像は、宅筆工房イメージ配システム「ニコニコ便」及びカード事業「ニコニコカード」の事務所を写したものです。
 熊野町のニコニコカードの大きな特徴として、自宅において、広島県信用組合の自分の口座からカード上にお金を移せる在宅端末を貸し出している点が挙げられます。その在宅端末を電話線につなげるだけで、入金もでき、なおかつ緊急通報などもできます。高齢者に配慮してボタンも大きく簡単に操作できるように、インターネット上のオンラインショッピングのように1クリックで買い物ができるようなシステムが組まれています。

 熊野町のニコニコカードはこれから本格稼働(2000年4月から)となりますが、事業化に至る経緯の中で、商工会が音頭をとって町内商店主とともに進めてきた背景を伺って、ある意味画期的に感じられました。宅配システム「ニコニコ便」に端を発して、事業化に至ったニコニコカード、宅配システム「ニコニコ便」とともによりよい方向に発展していって欲しいものです。どのように地元の方にカードが使われていくのか楽しみなところです。

 最後に「筆の里工房」の紹介をします。筆の里工房は、筆づくりの歴史と文化、筆を中心に文房四宝(筆・墨・硯・紙)といわれる用具としての広がりや筆から生まれる美術、工芸などを見て、触れて、体験できる施設です。上から2番目の画像は、世界一の大筆を写したものです。また、上から3番目の画像は、昔ながらの熊野の民家で、筆司による筆づくりが見られる工房を写したものです。
 熊野町は、江戸末期から筆づくりが始まり、約160年の歴史があります。町内には約2,500人の筆づくりの職人がおり、そのうち毛筆が約1,500人、画筆が約500人、化粧筆が約500人となっています。なかでも、最近、注目を浴びているのが高級化粧筆です。白鳳堂(資本金5,000万円、従業員80人)は、高級化粧筆に狙いを定め、伝統の技を生かしながら質の高い製品を大量生産し、国内外のトップブランドのOEM(相手先ブランドによる生産)として直接メーカーとして取引している小さな世界企業として知られています。

 今回、熊野町を訪ねまして、熊野町商工会の小鷹狩(こだかり)氏とニコニコ便センターの宮田氏に「ニコニコカード事業」についてご説明を頂くとともに、熊野町をご案内いただきました。最後に、紙面(ホームページ・メールマガジン上)を借りまして、お礼申し上げます。ありがとうございました。

By Nagura

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