超低床路面電車が走る熊本の街を訪ねて (日本・熊本)

視察日:1999年8月20日

 超低床路面電車が走る熊本県熊本市(人口約64.2万人)を訪ねて参りました。今回熊本市を訪ねたのは、この超低床路面電車に一超低床市電イメージ度乗ってみたいと思ったのがそもそもの始まりでした。一番上の画像が、その超低床路面電車を写したものです。画像を見ていただきますとわかりますが、従来の“チンチン電車”と呼ばれる路面電車と違って、デザインのスマートさとともに、車両が2両編成となっているのが伺えると思います。

 超低床路面電車に乗ってみてまず感じたのが、路面電車特有の揺れがほとんどなく、加速減速がスムーズで、かつスピードが速かったことです。この超低床路面電車に乗る前に従来の路面電車に乗っていただけに、まったく違う乗り物に乗っているような感じさえいたしました。画像からもわかりますが、窓が大きいため、車内はたいへん明るく、車窓からの眺めもきわめて良好です。また、超低床路面電車には、女性の車掌さんが乗っています。

 熊本を走る超低床路面電車は、高齢化、福祉社会を迎えてお年寄りや障害者に優しい市電をめざして、1997年夏に日本で初めて導入されました。欧州の街並みでよく走っているのが見られますが、この超低床路面電車もドイツで開発(車体の製作・組み立ては日本で行われました)されたものです。そして、今春に2編成増強され、現在3台の超低床路面電車が走っています。3台走っていることもあり、今回、たまたま運が良かったのか、それほど待つことなく、超低床路面電車に乗ることができました。現在のところ、日本において超低床路面電車が走っているのは、ここ熊本市と今年(1999年)6月から走り始めた広島市だけです。広島市の超低床路面電車は、5両編成でグリーンムーバーと呼ばれています。

 超低床路面電車は、“超低床”という名前の通り、床高さ36セン下通り商店街イメージチメートルで車いすやベビーカーのまま乗り降りすることができます。停留所からごく自然に乗り込むことができます。高齢者、身体障害者の方々のみならず、健常者にとっても乗り降りしやすく、バリアフリーのまちづくりにおける交通機関と言えます。また、この超低床路面電車の乗っていると、窓越しから“超低床のバス”循環バスが走っているのも見られました。

 しかし、路面電車の停留所の整備は、まだこれからのようです。現在34ある停留所のうち、幅1メートル以上ある停留所は10しかなく、超低床路面電車の持っている“超低床”というポテンシャルを最大限には生かし切れていないのが現状です。多くの都市の路面電車がそうですが、軌道が道路中央にあるため、高齢者、身体障害者の方々にとっては停留所に行くのにもけっこう苦労します。中には、歩道橋を渡らなければ、停留所に行けないところもあり、これらをすべてバリアフリーに改善するにはかなりの困難が予想されます。
 また、超低床路面電車の“超低床”という利点の他に注目されるのがスピードの速さです。先程、従来の路面電車とスピードの速さが違うと書きましたが、本来の持ち前のスピードはもっと出せるようです。しかし、車の多さと車と同居する軌道のため、スピードも制限されてしまっているのが現状です。

 今回、熊本市を訪れまして、従来の路面電車、超低床路面電車にトータルかなりの時間乗って、乗り心地とともに車窓を眺めました。その時に感じたのが、車の多さと繁華街の道路幅はそれなりに広いのですが、少し郊外に行けば、道幅はそれほど広くなかったことです。現状の延長線上で、超低床路面電車のポテンシャルを生かすのは極めて難しく、たとえ熊本城イメージ整備したとしても時間とコストがかかりすぎてしまうように感じました。ここは、郊外に車をおいて路面電車に乗り換えるパークアンドライド、そして市街地は、路面電車と歩行者専用にするトランジットモール化するなど発想の転換を図って、取り組んでいくのがベストのように感じました。
 超低床路面電車は、従来の路面電車とは違う新しい交通機関という認識で育てていって欲しいものです。これから生まれてくる子供たち含め、従来のチンチン電車を知らない世代にとっては、この超低床路面電車とチンチン電車の相関関係というか移り変わりというものは、まったくわからないものになってくるのではないかと思います。
 また、超低床路面電車が走っているここ熊本も例外ではありませんが、各都市において、路面電車が廃止されて廃車となった古い路面電車が走っています。路面電車というとノスタルジー・懐かしさというイメージが思い浮かびますが、今回、超低床路面電車に乗ってみて、新しいファッショナブルな乗り物という認識がより強くなりました。世界的に“環境問題”の見直し、市民レベルの環境意識の向上も進んでおり、路面電車に追い風が吹いているだけに、これからの新しい取り組みが楽しみです。この超低床路面電車は、新しいまちづくりの指針となっていくような気がいたします。

 超低床路面電車の話題は、このあたりにしまして、その他の熊本市内における魅力を紹介していきます。肥後の国・熊本は、森の都と呼ばれ、16世紀に城下町として整備され、日本三名城の一つとして有名な熊本城を加藤清正が築城しています。江戸時代に入ると細川藩の城下町として発展し、明治以降は九州の政治軍事の中心といきます。また、熊本城は、明治に入っても、明治10年(1877年)の西南の役の時に、西郷隆盛率いる薩摩軍を相手に50日余も籠城し、難攻不落の城として真価を発揮しています。時代は昭和に入り、戦後は、九州の文化経済の中心的な地は、福岡市に移行していった形となっています。

 上から3番目の画像は、熊本城を写したものです。熊本城水前寺公園イメージは、別名“銀杏城”と呼ばれ、壮大な美しさがあります。実際に城内を歩くとともに天守閣まで登ってきました。城壁の高さ、角度、曲線の美しさといい石垣技術の高さには感心するとともに、難攻不落の城と言われただけのことはあると納得できます。前回の視察レポートで名古屋の豊臣秀吉のふるさとを紹介しましたが、熊本城を築上した加藤清正は、豊臣秀吉の隣の家で生まれています。熊本城に登る堀沿いには、加藤清正の像があるとともに、城内には、加藤清正を祭った加藤神社もあります。

 上から2番目の画像は、熊本城のすぐ麓に広がる繁華街の下通りのアーケード部分を写したものです。画像を見ていただきますとわかりますが、度肝を抜くようなアーケードの広さ、高さには驚かされました。熊本城の大きな石垣を見てきた後に、この大きなアーケードを見ただけに、大きいという妙な共通性が感じられ、戦国の時代から現在に至るまで脈々と熊本魂なるものが引き継がれているのかなと思った次第です。繁華街には、路面電車の通りを挟んで、上通りというアーケードもあります。こちらは、床が板張りの部分があったりと落ち着いた商店街になっています。

 ここ熊本の繁華街からの景色がまた素晴しいです。緑生い茂る山の上に熊本城を望み、その麓を路面電車が走っていくという光景は、まさに絵になります。落ち着くような気分になります。新型車両の超低床路面電車と熊本城は合うだろうかとしばらく超低床路面電車が来るのを待ちましたが、なかなかマッチしていて違和感はありませんでした。繁華街からの景色が素晴しいという都市もそう多くはありませんので、この落ち着くような景観を今後も是非生かしていって欲しいものです。

 また、ここ繁華街・熊本中心部界隈では、再開発の着工が相次いでいます。路面電車通りと上通り角地にある熊本日日新聞社が都市型ホテル経営に乗り出し、また、鶴屋百貨店の隣では、ファッションを中心とする専門店街、美術館などの再開発ビル事業が動き出しています。両ビルとも2002年春の完成をめざしており、熊本中心市街地の新たな飛躍が望まれています。再開発ビル事業は、すでに囲いがしてあり「手取本町再開発ビル建設予定地」の看板が掲げてありました。

 上から4番目の画像は、水前寺成趣園(一般に水前寺公園と呼ばれています)の庭園を写したものです。繁華街から路面電車で10分ほど郊外に行ったところにあります。ここ水前寺成趣園は、約350年前、細川忠利、光尚、綱利の3代に渡って造営された茶屋敷で、池を中心とした東海道五十三次をかたどった回遊式庭園となっています。緑があふれているとともに、庭園の優美が伝わってきて、日本人の美意識というものは、昔も今も変わらないことが感じ取れます。

 最後に日本一うまいと言われている“熊本ラーメン”の話題を紹介いたします。今回、博多から熊本に電車で乗り込みましたが、ちょうど昼時に熊本に着いたこともあり、着いたそうそう熊本ラーメンを食べにいきました。熊本駅から路面電車で一駅南に行った「二本木口」近くにある黒亭(こくてい)というラーメン屋で食べてきました。この黒亭は地元でも有名な店だそうです。着いたのは、正午少し前でしたが、すでに待っている人もいました。ラーメンを頼みましたが、熊本はトンコツラーメンなので見ためはコッテリしているように見えましたが、食べてみると意外にあっさりとしていて、おいしかったです。

 今回のレポートは、路面電車を中心に述べてきましたが、私は豊橋市(愛知県)でたまに路面電車に乗ることがあります。豊橋は、今年(1999年)6月に「全国路面電車サミット」が行われたところで、昨年(1998年)2月には、豊橋駅再開発事業に合わせて路面電車が150メートル伸びたところでもあります。豊橋の路面電車は、主に東京都、名古屋市、岐阜市、金沢市の4路線で廃車となった路面電車が走っています。一番古いもので70年以上働き続けている1927年製の路面電車も走っています。そして、今月新たに東京都(都電荒川線)の廃車2両を7年ぶりに購入しています。東京都では廃車になる1977年製ですが、豊橋市が保有する路面電車の中では、最新型となります。このことは、追い風が吹いてきているとはいっても、現状において、路面電車の経営が苦しいことを示しています。廃車車両は1両につき10万円と格安ですが、輸送費・改造費に2,000万円近くかかります。しかし、それでも、新型車両(1両1億円以上)を造るよりお買い得というわけです。豊橋市においては、市民レベルにおいても路面電車を見直す機運も高まってきていますし、中古と言えども、お客さんを確保していくために、新しい車両を更新していくという姿勢が見られます。熊本と同様に、路面電車を生かした新しいまちづくりの指針となっていくように思います。

 今回、熊本市を訪ねるにあたりまして、当方のメールマガジン「地域・まちづくり情報&コラム」をお読みいただいております熊本市在住の桐山さんに事前に熊本の情報を提供頂きました。最後に、紙面(ホームページ・メールマガジン上)を借りまして、お礼申し上げます。ありがとうございました。

By Nagura

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