電子マネーのまち“伊那市”を訪ねて (日本・長野)

視察日:2001年3月8日

 長野県伊那市(人口:約6.3万人、面積:207.64平方キロメートル)を訪ねて参りました。伊那市は、長野県南部に位置し、東に南アルプス、西に中央アル伊那市商店街プスがそびえ、市の中央部には、天竜川や三峰川が流れています。伊那市は、両アルプスの間の肥沃な平地に広がっており、昭和29年に1町5ケ村が合併して伊那市が誕生し、さらに昭和40年に西春近村を合併して今日に至っています。伊那市は、電機、精密、機械、食品などの製造業が発展し、また恵まれた農地を利用した伊那米や野菜、花き、畜産などの総合産地としての地位も築いています。

 今回の視察レポートでは、伊那市において展開されている多機能型ICカード伊那市コミュニティカード“い〜なちゃんカード”に焦点をあてて紹介していきます。現在、クレジットカードなどが磁気カードからICカードに切り替わりつつある時期を迎えようとしており、皆さんもICカードという言葉を耳にしたことがあると思いますが、ここ伊那市の“い〜なちゃんカード”は、平成8年11月14日に誕生して、既に4年半以上が経とうとしています。如何に早い段階で、まち全体をあげて決断をされたかがおわかりいただけるのではないかと思います。一番上の画像は、中心市街地の商店街の様子を写したものです。アルプスの山が映えた町並みとともに、少しみにくいかも知れませんが、アーケードのところに「電子マネーの街」と掛れた看板もかかっています。

 現在、日本全国各地で空店舗等増えて、苦しんでいる商店街が多いなか、中心市街地活性化法等活用しながらカード化事業を進めているところも多いですが、ここ伊那市の場合は、それ以前に商店街とともに商工会議所、市、地元金融機関が連携をとってやってきています。カード機器端末
 伊那市においても、けっして状況が良いわけではなく、中心市街地における人口は減少傾向にあり、少子化・高齢化が進んでいることは確かです。しかし、先手を打ち、市全体を挙げて取り組まれてきたことは評価できます。

 また、伊那市も他の地域と同様に、昨年(平成12年)8月に中心市街地活性化・基本計画を提出しています。伊那市の将来都市像である「人と自然にやさしい、活力と創造のまち」を目標に掲げ、基本方針として「生活環境の高度化・多様化」「賑わい商業づくり」「身近な楽しみの創出」「回遊性の創出」の4つを挙げています。また、まちづくりの中核な機関となるTMOタウンマネジメント機関)の組織化についても現在検討しているようです。

 話を「い〜なちゃんカード」に戻しまして、伊那市におけるそもそもの多機能型ICカード化への取り組みは、大型店の進出が続いていたこととに加え、地域にある各商店街がそれぞれ個別に取り組みを行っていたことが大きかったようです。多機能型ICカードを開始する前までは、各商店街内だけで通用するスタンプシールが5〜6つほど存在していたようです。そこで、この別々のスタンプシールを統一したものに変えていこうという取り組みが各商店街組合に間において始まりました。しかし、この取り組みは、最終的にそれぞれの合意が取れずに失敗に終わっています。
 そして、翌年、再起をかけ今度は、商業者だけでなく、消費者、金融機関、県市等の行政機関、専門家の計70人にものぼる伊那市コミュニティカード調査委員会を立ち上げて(平成7年4月)、さまざまな面から勉伊那商店街レトロ強会、先進地視察、調査等を1年にわたって行って、「市内を統一した多機能型のICカードの早急な導入が必要」という調査結果を出しています。

 この伊那市コミュニティカード調査委員会の結果を受け、平成8年4月にいよいよ事業化に向けての伊那市コミュニティカード導入委員会が立ち上がります。ここからが驚くような早さで事業化までいっています。このレポートの始めの方で、事業開始日を平成8年11月14日と示しましたが、伊那市コミュニティカード導入委員会を立ち上げてから、何と約半年です。実質的には、運用前の試験段階等ありますので、ほんの数カ月の間で事業の決定から立ち上げまでこなしたことになります。

 多機能型ICカード「い〜なちゃんカード」は、約20,200枚発行されており、加盟店舗数194店(平成12年9月現在)で利用することができます。カードには、クレジット機能付きのクレジットカードタイプとキャッシュカード機能付きのキャッシュカード機能タイプがあります。両方のカードタイプに共通した機能として、ポイント機能、電子マネー(プリペイド機能)、健康データ管理機能、行政サービス機能などがあります。
 おおまかなサービス内容を紹介しますと、ポイントは100円ごとに1ポイントが付与され、電子マネーは50万円まで入れておくことができます。ここまでは、他の多くの商店街でも見られますが、全市挙げて行ってきたという実績が健康データ管理機能、行政サービス機能に表れています。健康データ管理機能は、カード内に血圧と脈拍の測定データを20回分記録させることができるものです。血圧測定器は、伊那市役所、伊那商工会議所、伊那信金本店ロビーに設置されており、自由に測定することができます。行政サービス機能は、市役所における各種証明書発行代金、市営「伊那中央総合病院」の医療費の支払い、市営駐車場の駐車料金の支払い、市民プール・市営「みはらしの湯」・市営保養センターなど利用料の支払いなどにも利用できます。また、市街地循環バス「イーナちゃんバス」の乗車運賃にも利用できます。画像の紹介を忘れておりましたが、上から2番目の画像は、食品スーパーのレジ部分を写したものです。画像中央の台の上に載っているのがカードシステムの端末です。左側に見える小型の箱部分にカードを挿入します。上から3番目の画像は、中心市街地商店街のレトロな雰囲気が残る建物を写したものです。

 新たな試みとしては、実用化までには至っていませんが、数年前から有線放送電話回線を利用して、家庭のテレビ画面で商品が購入できる電子商取引の実証実験もスタートしています。

 伊那市のように商店街のみならず、行政、商工会議所、地元金融機関などさまざまな組織が一致団結して進めてこられた流れだけをみますと、非常にめぐまれた環境にあったと言えますが、さまざまな紆余曲折のなか、事業化まで至ったことがおわかりいただけたのではないでしょうか。事業化に至るまで、だれが、どこがリーダーシップをとるかということは大切なことであり、ここ伊那市のい〜なちゃんカードにおいては、伊那商工会議所が音頭をとって導いてきました。カード事業スタート後のさらなるカードの魅力出しについては、各加盟店が良い意味競いあいながらポイントをうまく活用して売り上げアップ、顧客サービスに生かしているようです。

By Nagura

リターンイメージリターンイメージリターンイメージリターンイメージリターンイメージ