時代が動いた明治の香りが感じられる
野外博物館の明治村を訪ねて
(日本・愛知)

視察日:2013年3月30日

 愛知県犬山市(人口75,431人、29,377世帯、面積74.97平方キロメートル:平成25年4月30日現在)にあ西郷従道邸の外観る明治村に久しぶりに行ってきました。犬山市は、愛知県の北端に位置し木曽川が濃尾平野に注ぎ出る場所に位置しています。木曽川のほとりの小高い山の上には国宝の犬山城があり、川の流れに映える城はなかなかいい眺めです。また、天守閣からの眺めも絶景です。犬山城は室町時代の1537年に建てられ、天主は現存する日本最古の様式です。

 少し余談ですが、市の名前に「犬」がつくのは、全国で唯一、ここ犬山市だけだそうです。今、ゆるキャラブームですが、そんな犬山のキャラクターは、犬をお殿さま風にアレンジしたわん丸君です。地元では、なかなかの人気です。犬山城の周辺には、古い町並みの城下町が広がっており、観光の見どころが充実してきています。犬山の城下町における市民参画のまちづくりをここ15年ほど定点観測的に見てきていますが、観光の魅力の充実度には目を見張るものがあります。

 今回は、野外博物館の明治村を中心に紹介していきますので、犬山城やその周辺の城下町の町並みは以前の視察レポート「犬山市の住民参加のまちづくりを訪ねて」「雄大な川と城の“まち”犬山を訪ねて」などをご覧いただけましたらと思います。また、博物館つながりで、犬山には、明治村とともに、野外民俗博物館のリトルワールドもあり、ここには世界各地から集めた4万点の民俗資料とともに22カ国、33施設の野外展示家屋があり、まさに生きた博物館です。リトルワールドの視察レポートも「一日で世界旅行が楽しめるリトルワールドを訪ねて」で紹介しておりますので、こちらもご興味がありましたらご覧いただけましたらと思います。

 それでは、野外博物館の明治村を見て行きたいと思います。一番上の画像は、重要文化財の西郷従道邸を写したものです。西郷従道は、倒幕そして明建物ガイドの案内治維新という大事業に向けて東奔西走した西郷隆盛の弟です。西郷従道は明治初年から度々海外に視察に出掛け、国内では陸・海軍、農商務、内務等の大臣を歴任し、維新政府の中枢にいた人物で、在日外交官との接触も多かったそうです。

 西郷従道は「西郷山」と呼ばれるほどの広い敷地内に、和風の本館と少し隔てて本格的な洋館を接客の場として設けました。一番上の画像は、まさにその洋館で、木造総二階建て銅板葺きで明治10年代(1877年〜1886年)に東京上目黒の自邸内に建てたものです。設計は、在日中のフランス人建築家のレスカスと考えられ、一番上の画像からもご覧頂けますが、半円形に張り出されたベランダや上下階の手すり等のデザインもさることながら、耐震性を高めるための工夫がこらされています。屋根に重い瓦を使わずに、軽い銅板を葺いたり、壁の下の方にレンガをおもりの代わりに埋め込み、建物の浮き上がりを防いでいます。

 上から2番目の画像は、西郷従道邸の内部を写したものです。実際に、1階、2階を見ることができ、半円形のベランダに出ることもできます。窓上のカーテンボックス、手すり、扉金具、天井に張られた押し出し模様の鉄板、流れるような曲線の廻り階段など内部を飾る部品のほとんどが舶来品と思われます。その中でも日本の技術を誇ったのが上から2番目の画像の中央に写っている暖炉の表面を飾っているタイルです。この暖炉に張られているタイルは瀬戸物で、タイルには絵が描かれています。画像からはわかりにくいと思いますが、暖炉の上のタイル、右側のタイル、左側のタイルには、宮島、松島、天橋立の日本三景が描かれています。日本の焼き物の繊細な技術力の高さを誇っています。

 今回、西郷従道邸は、上から2番目の画像でも写っておりますが、ボランティアガイドさんに詳しくご案内頂きました。ご自身のペー明治村の満開の桜スで見学されるのももちろんいいですが、明治村の貴重な建造物をもう一歩踏み込んで学び、当時の明治の生活様式を肌感覚で知るには、ボランティアガイドさんはもってこいです。また、さらにプレミアムなガイドの「プレミアムガイド」もあります。プレミアムガイドは、本格的な明治村の建造物を知り尽くした学芸員によるご案内で、有料ですが、電動車を使って広い明治村内を楽々移動でき、お客様の目的に合わせたルート設定ができます。(備考:ボランティアガイドは、ガイド料は無料ですが、ボランティアガイドの交通費として1000円が必要2013年7月現在)

 明治村には、明治の時代を彷佛とさせる様々な建造物がありますが、ここで少し明治とはどのような時代だったのか、時代背景を少しみていきたいと思います。明治時代は、我が国が門戸を世界に開いて欧米の文物を取り入れ、それを同化して近代日本の基盤を築いた時代です。まさに、幕府が倒れ江戸時代が終わり、新しい国家が生み出されて行く過程の政治・社会が大きく変動した時代でした。明治時代は、天皇中心の日本の国づくりを目指した飛鳥・奈良時代と並んで、我が国の文化史上極めて重要な位置を占めています。

 飛鳥・奈良時代と並ぶ明治という変革期は、この大いなる変革に取り組む日本人の情熱、エネルギー、新時代への順応性はまことに目を見張るものがあったようです。明治初年期に形づくられた政治、経済、社会、文化などは現在にもつながっており、近代日本の骨格となっていることからも変革に取り組んだ当時の日本人の姿が伺えます。明治村はそのような明治時代の日本人の情熱・エネルギーを明治時代の様々な建造物を通して、当時に思いを馳せながら、明治が感じられる場です。

 当時の日本人の情熱・エネルギーは、あくまで創造しながらですが、実際の建造物からは明治建築の変遷を肌で感じることができます。冒頭で紹介しハイカラなレンガ通りました西郷従道邸はじめ明治村の明治建築を見ていますと、江戸時代から継承した優れた木造建築の伝統と蓄積の上に、新たに欧米の様式・技術・材料を取り入れ、石造・煉瓦(れんが)造の洋風建築を導入しています。明治時代の産業革命の進行に伴って、次第に、鉄・セメント・ガラスなどを用いる近代建築の素地を築いていきます。

 明治時代の建物は、和洋折衷という視点が良く見られますが、明治村を歩いていて、以前、視察した三重県桑名市の六華苑の建物が思い出されました。六華苑は、国の重要文化財に指定されており、明治末期に着工され、2代目諸戸清六氏の邸宅として建てられたものです。特徴は、和洋折衷で、洋館と和館が連続併置する形で建てられています。一見、手前から見ると洋館にしか見えませんが、その奥に和館が連続してつながっています。六華苑の設計は、鹿鳴館の設計で有名なイギリス人建築家ジョサイア・コンドル氏によるものです。また、敷地面積18,491平方メートル、建築面積1.332平方メートルと建物の前には風情ある日本庭園が広がっています。以前の視察レポート「桑名の雅楽の舞、名物の食(蛤・はまぐり)、商店街の三八市を訪ねて」の中で触れていますので、合わせてご覧頂けましたらと思います。

 明治時代になると、先ほども少し紹介しましたが、日本に西洋の文明が入ってきて、制度や習慣が大きく変化し、その現象を指す“文明開化”という言葉が流行りました。その当時、文明開化の象徴と言える食が「牛鍋」でした。今回、明治村内にある創業明治4年の牛鍋屋の大井肉店で、高級和牛と季節の野菜たっぷりの牛鍋を堪能してきました。当時、日本では獣の肉は嫌われていましたが、開国に伴い外国人が牛肉を食する習慣を知ると、「牛肉食わねば開花不進奴」と粋がる風潮が、東京を皮切りに次第に全国に広がっていったそうです。

 明治村内にある大井肉店の建物は、実際に存在したものです。明治20年(1887年)に精肉店を開いた建物で、バルコニー付きで窓にステンドグラスを寛ぐ人たちと入鹿池はめ込んだモダンな洋館造りの店舗を移築したものです。大井肉店は神戸元町にあり、当時、モダンな洋館の店舗は、神戸名物の一つだったそうです。

 神戸元町のお店では、明治20年から昭和42年の区画整理により明治村に移築されるまで、1階で独自の基準を設けた最高品質の黒気和種牛肉の販売し、階上で和牛レストランを経営していました。今回、当時と同じように階上のレストランで牛鍋を堪能してきました。たいへん美味でした。また、明治35年には保存のきく「牛肉味噌漬」や「牛肉佃煮」を研究開発し、土産用に全国で好評になりました。

 また、明治村は四季折々、様々に表情を楽しむことができます、春は梅、桜、ハナミズキ、ツツジなど明治村のあちこちで様々な植物が咲きます。夏はライトアップや花火など明治の建造物に映えるイベントが盛りだくさんです。秋は、木々が赤や橙に染まる美しい紅葉が楽しめます。そして、冬は、澄み切った空気とやわらかい光の効果で、建物がとても美しく見られる季節だそうです。また、雪景色も楽しむことができます。

 行った時は、ちょうど桜が咲いている頃で、上から3番目の画像と上から5番目の画像から桜がご覧頂けると思います。また、上から5番目の画像の奥に見える水辺は入鹿池(いるかいけ)です。入鹿池は、明治村よりはるか昔の1633年に造られた農業用人工池です。池の周囲は16キロあり、香川県の満濃池(周囲20キロ)に次いで日本で2位の広さです。入鹿池では、釣りやボート遊びなど四季を通して美しい自然を楽しむことができます。

 今回、明治村を紹介してきましたが、皆さんも機会がありましたら、明治時代に思いを馳せながら、様々な建造物をご覧になられてはいかがでしょうか。また、合わせて、犬山城や古い町並みの城下町、リトルワールド、女性の鵜匠の誕生で盛り上がっている木曽川うかい(6月1日から10月15日まで)も行かれてはいかがでしょうか。

By Nagura

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