自然環境に恵まれた日野市を訪ねて (日本・東京)

視察日:2001年7月13日

 東京都日野市(人口約16.5万人)を訪ねて参りました。日野市は、東京都のほぼ中央に位置し、周りを立川市(人口約16.2豊田駅前通り万人)、八王子市(人口約51.4万人)、昭島市(人口約10.5万人)、国立市(人口約7万人)、府中市(人口約21.9万人)、多摩市(人口約14.1万人)に囲まれています。
 日野市内には、中央線と京王線の2本の鉄道が走っており、中央線の日野駅からは特別快速で新宿まで29分、京王線の場合、高幡不動駅から特急で新宿まで30分と都心部からも近く好立地に位置しています。都心部からわずか30分と近いのにもかかわらず、ここ日野市は多くの緑に囲まれ、湧き水も豊富で自然に恵まれています。それを表すかのように、日野市のキャッチフレーズは「緑と清流」であり、目指す都市像としては「水と緑の文化都市」を掲げており、自然と市民生活の調和を大切にしたまちづくりが進められています。また、東西(横)に都心部と結ぶ鉄道以外に、立川を中心に南北(縦)に東大和市から多摩市とを結ぶ多摩都市モノレールも日野市内を走っています。

 今回、日野市内でも、駅近くに緑があふれている中央線の豊田駅周辺を重点的に見て参りました。また、中央線沿いの日野駅、八王子駅、立川駅近辺もあわせて駆け足ですが見て参りました。4つの駅を東京方面から順に並べますと、立川、日野、豊田、八王子となり、日野、豊田の両駅が日野市に位置します。

 一番上の画像は、豊田駅北口から駅前のメイン通りを写したものです。道路の両側にみごとに育ったけやきを望むことができます。駅を降り立ったその時から緑が目に飛び込んできます。そして、さらにすごいのは、豊田駅から数十分歩いたところに雑木林が広がっていることです。電車に乗っていても、日野駅から豊田駅に向かう右手側に車窓からもこの雑木林を眺めることができます。この雑木林は、“黒川清流公園”という名前がついており、1975年には東京都の緑地保全日野緑地地域(面積は60平方メートル余り)に指定され、1.7キロメートル余りの細長い雑木林のほとんどが、樹木や植物の保全がなされています。公園内には、散策路が整備されており、歩きやすく、主だった樹木にはネームプレートがついており、のんびり歩くだけで散歩が楽しめる空間が広がっています。上から2番目の画像が、黒川清流公園の入り口部分にあたる雑木林を写したものです。自然そのものの雑木林が広がっている様子が伺えることと思います。私は、かつて日本のデンマークと言われた田園風景が広がる愛知県安城市に住んでおりますが、最近は宅地化が進み、自然の雑木林が少なくなっている中、ここ日野市の緑あふれる雑木林を見ていると、懐かしささえ覚えました。

 “黒川清流公園”には、“清流”という名前が用いられていますが、まさしく川のような清流が流れているわけではなく、小さな湧き水がいくつもあり、それらが落ち葉の下からしみでているかわいらしい清流といったところです。水辺には、クレソンやミズホオズキの花が咲く場所もあります。これらは、湧き水が流れるきれいな水辺でしか生きることができなく、市街地の水辺ではめったに見かけることができません。都心から近いここでみることができるのは、それだけ水がきれいであることを示しており、非常に貴重とも言えます。レストランの食事の時などにお皿に添えられているクレソンは、オランダガラシとも呼ばれ、白い花が5月から7月頃にかけて咲きます。また、ミズホオズキは、夏から秋にかけて、小さな黄色い花を咲かせます。

 上から3番目の画像は、豊田駅から黒川清流公園に向かう間にある“湧き水”の出ているところを写したものです。緑地保全のために柵はありますが、それでも子供たちがきれいな水辺に触れている様子が画像からも伺うことができると思います。画水、クレソン像の右端に看板が立っているのがお分かりいただけると思いますが、そこには、動植物と湧水池の保護のために、“立ち入りはご遠慮下さい”という文面に続き、“なお、観察等でご利用になりたい場合は、下記にご連絡下さい”と東京都、日野市の担当部署の電話番号が書かれています。自然保護のために柵はありますが、水辺観察の利用には柔軟性のある対応がなされています。また、黒川清流公園含め近隣の自然観察会なども頻繁に行われているようです。

 水という視点では、日野市内には、多摩川、浅川(多摩川と合流)という2大河川が流れています。多摩川は、東京を南東に貫いて流れる大河であり、山梨県笠取山を源とし、東京西部、南部を流れて東京湾に注ぐ流路延長138キロメートルの河川です。多摩川にはかつて、渡し場がかなりあり、渡し跡をみるのもまた趣きがあり一興と思います。

 これまで日野市の“緑”“清流”について触れてきましたが、都心部からこれだけ近くて、豊かな自然が広がっていることがお分かりいただけたことと思います。次に豊田駅周辺におけるまちづくりについてみていきたいと思います。豊田駅北口から数分歩いたところに住宅・都市整備公団の多摩平団地があります。この多摩平団地は、1958年(昭和33年)に入居が始まり、40年以上を経過し、建替えの時期を迎えており、一部では建替えが始まっているところもあります。余談ですが、多摩平団地への入居が始まった1958年のこの年に、日野市内にある多摩動物公園(多摩丘陵の起伏や自然林をそのまま利用した約52万平方メートルの広大な敷地に180種1600もの動物が飼育されている)も開園しています。豊田駅周辺では、現在、多摩平団地商店街の建替えに合わせて、豊田駅前周辺も含めた全体的なまちづくりを考えるワーキングが住民、商店街はじめ住宅・都市整備公団、市の間で行われています。この多摩平団地は、まわりの緑あふれる自然にマッチするように、団地そのものが豊かな緑の中にあります。建替えに当たっても、長い歳月が育んできた樹木をできる限り生かす方向で進められています。

 上から4番目の画像は、豊田駅と多摩平団地の間にある多摩平名店街の商店街を写したものです。核店舗として京王ストアが入っています。この多摩平名店街の商店街を端から端まで歩きましたが、空き店舗らしきものが見られなかったのが印象に残りました。今後この商店街が、駅前周辺のまちづくり計画の中でどのように位置付けられ、変わっていくのかはわかりませんが、“地元密着”という骨格ともなる路線は変わらないだろうと思います。新宿まで約30分で出ることができますし、新宿まで行かなくても、隣の八王子および立川も大商圏を対象とした商業集積があるだけに、ここ多摩平名店街は、近隣の小商圏を狙った顔のみえる関係をますます押し進めていくことが必要となってきていると言えます。地域に密着した顧客ひとりひとりに対する個店個店の対応のみならず、商店街としての団結した地域密着の姿勢が必要であり、団結することの相乗効果が、八王子、立川という大商圏の挟まれた地域での差別化を図った生き残りとも言えます。

 市民とまちづくりという視点で、日野市のホームページに記載されています新しい長期総合計画(2010年プラン)づくりにおける基礎調査の市民アンケート結果をみますと、日野市の将来像のまちづくりとして「保健・医療・福祉の連携したまち(62.4%)」「みどりと清流の自然豊かなまち(55.8%)」「高齢者が安心して暮らせるまち(52.9%)」が上位3位に入っています。また、市政への関心については、「非常に関心がある」と「ある程度関心がある」と答えた方が全体の75.2%と高い比率を示しており、市民の参画への高さが伺えます。

 今回、日野市の豊田駅周辺を重点的に歩きまして、ポテンシャルの高さが伺えました。しかし、ポテンシャルの高さは感じられるのですが、まち全体を見回した場合、核となるまちのイメージが掴みづらいところがあり、本来の特色がうまく描き出されいないというか発揮されていない面は多々感じられました。ポテンシャルという点では、画像等で説明しました自然という観点の緑と清流以外にも、日野自動車はじめ、コニカ、富士電機、東芝などの工場や研究施設があります。また、東京都立科学大学はじめ、実践女子大学、明星大学などの大学も集積しています。これから、多摩平団地の建替えに伴う豊田駅前周辺のまちづくりを考えるにあたっては、自然の豊かさを生かすことはもとより、日野市の特色でもある企業が持っている“知”と大学が持っている“知”を活用する視点が必要のように思います。ある意味、日野市において産学官がバランス良くそろっているだけに、新たなモノを生み出していくポテンシャルを秘めていると言えます。豊田駅前周辺のまちづくりを考えていくにあたって、駅前に産学官の“知”を結集したソフト的な取り組みの拠点を設けることも特色づくりの一つと思います。さらに、産学官に商業者、住民等の“知”が結集されれば、鬼に金棒と思います。これから、住民、商店街の方々を交えたまちづくりの話し合いが進んでいくことと思いますが、どのようなまちになっていくのか楽しみなところです。

 今回、日野市を訪ねるにあたりまして、当方のメールマガジン「地域・まちづくり情報&コラム」をお読みいただいております内田様はじめ、菊地様、河津様、柳橋様にご説明いただくとともに、ご案内いただきました。最後に、紙面(ホームページ・メールマガジン上)を借りまして、お礼申し上げます。ありがとうございました。

By Nagura

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