東海地震想定見直しについて考察する

記:2002.2.1

 早いもので、先月の1月17日で阪神大震災(1995年1月17日発生)が起こってから7年を経過しました。阪神大震災の犠牲者を悼む阪神大震災7年闇の中に浮かび上がる巨大な光の祭典「神戸ルミナリエ」は昨年末も開催されました。また、自然の脅威や悲惨な体験を風化させないように、悲惨な体験を若い世代に語り継ぎたいという思いから、神戸市長田地区の6つの商店街では「神戸ながたTMO」を旗揚げし、中学や高校の修学旅行や校外学習の誘致に力を入れています。子どもたちは、被災地の生々しい傷跡をみて被災者の痛みを理解するとともに、地震などの自然災害に対する心構え、災害時の対応、危機管理に対する意識にもつながっているようです。

 2001年12月に東海地震の想定が22年ぶりに見直されました。政府の中央防災会議「東海地震に関する専門調査会」における最終報告では、東海地震の予想震度が6弱以上になる市町村名を公表し、さらに震度7が予想される地域の分布図も明らかにしています。今回の見直しで52市町村が、新たに予想震度が6弱以上になり、震度6以上を目安に指定している「地震防災対策強化地域」は、従来の167から219と二百を超えることになりました。新たに加わった自治体は、名古屋市豊橋市岡崎市豊田市豊川市安城市、西尾市、刈谷市知立市高浜市、碧南市、半田市、大府市、知多市、常滑市、東海市、豊明市、蒲郡市、田原町、美浜町、阿久比町、武豊町、東浦町、南知多町、一色町、吉良町、幡豆町、幸田町、作手村、鳳来町、設楽町、東栄町、津具村、小坂井町、御津町、渥美町、赤羽根町、音羽町、三好町、額田町、長久手町、東郷町、日進市、一宮町の愛知県44市町村(愛知県はこれまでは新城市のみだったのが一気に範囲が広がったことになります)、須玉町、高根町、長坂町の山梨県3町、諏訪市、茅野市、高遠町、大鹿村、上村の長野県5市町村です。(従来からの予想エリア:静岡県は、全市町村含まれています。また、岐阜県は中津川市、神奈川県は、平塚市、小田原市、厚木市、箱根町など19市町、山梨県は、甲府市、富士吉田市、河口湖町、山中湖村など54市町村)

 22年ぶりとなる東海地震の想定見直しは、22年間で得られた観測データを最新の理論で分析しており、国として初めて1キロ四方の地域ごとの予想震度をはじき出しています。22年前の1979年に設定した東海地震の想定震源域は、法律に基づく初の「地震の監視」でしたが、当時は海底の地殻構造などの把握が十分でなく、限られた観測データに基づいて算出したため、震源域は長方形の平面で表されただけで、予想震度も主に震源からの距離で決められていました。

 その後、地震防災対策強化地域を中心に地震計や傾斜計による観測網が強化され、さらに全地球測位システム(GPS)などの新しい観測技術も導入されて、観測データが蓄積されていったことが今回の見直しにつながっています。今回の見直しの震源域は、「長方形の平面」からより精度の高い「ひょうたん型」に変わり、震度算出では地震の“発端”となる断層のずれが始まる地点の違いなどから4つのケースを想定し、1キロ四方の細かいメッシュ(網目)で震度を算出しており、最も高い値を公表しています。

 今回の地震想定の見直しにより、新たに強化地域に指定された自治体では、防災計画の見直しが急がれています。なかでも、従来の1から45に大幅に増えた愛知県では、県として被害予測調査を来年度から始めることになっています。愛知県は、「強化地域に指定された市町村とそれ以外とで対策に差があってはいけない」として、88市町村全部に強化地域並みの防災対策を求める方針です。愛知県豊田市はじめ周辺地域に工場があるトヨタ自動車では、愛知県内の工場はじめ全事業所において既に震度7に対応した補強工事が済んでいます。防災行動マニュアルも、対策本部の設置から情報収集、避難・救援まで震度7規模の地震を想定しており、今後、事業所のある地域で防災計画が見直された場合には、自治体との連携を図り、柔軟に対応していく方針とのことです。

 ここまでは、東海地震について紹介してきましたが、最も恐れられていることに“東海地震は次の東南海地震と同時に発生するのではないか”という考えが地震学者の間にあります。東南海地震は、東海地震の西隣を震源地とする地震です。さらに西隣の震源とする地震に南海地震があります。実際に、1854年の安政東海地震では紀伊半島先端沖から駿河湾までの震源域が動き、志摩半島や濃尾平野、愛知県から静岡県までの沿岸の広範囲が震度6以上となっています。そして、その32時間後に、西隣の震源域で「安政南海地震」が起きています。さらに安政地震の147年前の宝永地震でも駿河湾から四国沖までの震源域が同時に動いたとされています。そういう観点から“東海地震は次の東南海地震と同時に発生する”という考え方を完全に否定することができないと言えます。これからの防災計画づくりは、東海地震と東南海地震(南海地震含め)が同時発生することを念頭においてつくっていく必要もあると言えます。

 地震は、本当にいつやってくるかわかりません。自分の身は自分で守る、最低3日間は生き延びるだけの水と食料は確保しておくなど常日頃(平常時)から体制を整えておくことが大切です。地震についての必要最低限の備え(知識)については、「地震一口メモ」に載せていますので、一度ご覧いただき参考になさって下さればと思います。また、以前に、ある市の地域防災計画策定(地震対策編・一般対策編)に携わったことがあり、年2回、防災の日(関東大震災の起こった日)、阪神大震災の起こった日近くに、防災にちなんだコラムを今回同様に載せております。地震防災に関するコラムは、検索コーナー・テーマ別から見ることができますので、併せてご覧下さいませ。

By Nagura

リターンイメージリターンイメージリターンイメージリターンイメージリターンイメージ