欧米からきた人材育成法“コーチング”を考察する

記:2001.8.1

 欧米からきた新しい人材育成法「コーチング」が日本で普及の兆しをみせています。新聞やテレビで取り上げられてコーチングイメージいるのをご覧になったり、本屋などでコーチング関係の本を手に取られた方もいらっしゃるのではないでしょうか。コーチングの理論はイギリスで生まれ、アメリカで体系化され、ビジネスとしては1980年代から欧米で始まっています。

 コーチングについては、いろいろな説明がなされていますが、共通しているのは、コーチングを受ける人の目標達成をサポートするという点です。この“サポート”というキーワードが重要であり、コーチングは、カウンセリングやコンサルティングとは違います。コンサルティングは、ある専門の領域を扱いますが、コーチングはその人の全般を扱います。また、コンサルティングが知識やアドバイスを提供するのに対して、コーチングはコーチの効果的な質問によってコーチングを受けた人が最終的に答えを出します。いわゆる何度も出していますがコーチングは、“サポート”であり、あくまで答えを出す、決断をくだす、決定するのは、本人ということです。1対1で行うビジネスコーチングは、集合研修などに比べて早く、効果的に管理職の成功を助けられるということで、最も即効性のあるトレーニングツールと言われています。

 コーチとコーチングを受ける人の関係はというと、対等なパートナー関係です。いわゆる横の関係であり、上でも下でもありません。また、コーチは、評価をしません。評価をするのは、コーチを受ける人自身が自分で行うものです。評価の基準は、コーチを受ける人自身にあるということです。最初に社内コーチを導入したIBMの場合、部下が上司をコーチングするということが行われたそうです。

 文頭で、コーチングは、コーチとなる人がコーチングを受ける人の目標達成をサポートすると表現しましたが、相手の自己実現をサポートし自律性を引き出すシステムと言い換えることもできると思います。一言でコーチングを説明することは、難しい面がありますので、様々な側面から表現してみますと以下のような言葉が挙げられます。「相手のモチベーションを高める」「自主的行動を起こす方法」「会話を通じて相手の発想を変えること」「気づきを促す」「視点を変える」「相手が自ら学ぶ環境を作り出す」「質問型のアプローチ法」「人が自分の中の知恵にアクセスするのを助ける」「ブレーンストーミングの相手となる」「真実の姿の鏡となる」「目標の明確化」「現状の把握」「人生に違いを作り出す」「会話を通じて対象者が本人の望む目標に向かって、本人の満足のいく方法で進むことを促進する環境を生み出す技術」などの言葉で表現できますが、少しはコーチングのイメージが浮かびましたでしょうか。

 次にコーチングの種類をみていきますと、大きく分けて「ビジネスコーチング」「エグゼクティブコーチング(パーソナルコーチング)」「メディカルコーチング」「ティーンエイジャーコーチング」などが挙げられます。ビジネスコーチングは、文字通り仕事に関するものです。エグゼクティブコーチング(パーソナルコーチング)は、経営幹部向けとか個人の問題を対象とするものです。メディカルコーチングは、医療分野に関わるもので、病気を克服するためのコーチングなどです。ティーンエイジャーコーチングは、日本ではまだなじみが薄いですが、子供向けのコーチングです。ゲームやテレビ、自由遊びの不足など子供を取り巻く環境が悪化するにつれ、コミュニケーション能力が不足した子供たち、親子のコミュニケーション力が低下している中、コーチングを通して子供たちに、自分で自発的に考えて行動する姿勢を促すものです。これは、いわば教育現場において必要と言えます。

 コーチングを事業として行っている企業をみていきますと、1995年からパーソネル・ディシジョンズ・インターナショナル・ジャパンが、米国、英国から来日した外資系企業のビジネスマンに英語でコーチングを始めています。1995年からコーチングを始め、変化が起こったのは、2000年のことだそうです。コーチングの顧客が経営幹部を中心に、1999年の2倍の30人に急伸し、2001年は、さらに4倍となる勢いだそうです。経営幹部向けのエグゼクティブコーチングを昨年から積極的に行っているライト・ウェイステーションは、この1年で13社13人に対応しています。また、個人ユースも着実に増加しており、一般向けと法人向けにコーチング事業を展開するコーチ・トェエンティワンでは、個人向けコーチ・トレーニング・プログラム参加者が1999年後半から伸び始め、2001年5月1日で1291人を数えています。

 コーチングは、産業界だけでなく、医療や教育、スポーツなど多方面への貢献も期待されています。すでに、教育分野に広がっており、産能短期大学の通信教育課程では、学生に関心のある最新テーマを取り上げる特論スクーリングの今年度科目に、コーチングを採用しています。また、中小企業診断士の試験においても、中小企業にアドバイスする時のコミュニケーションスキルとして、試験科目の助言理論のなかに、コーチング理論が盛り込まれています。

 今回、欧米からきた新しい人材育成法「コーチング」についてみてきましたが、目新しさを感じるというよりも昔からあるような感じをもたれ、コーチングという確立された手法というかネーミングは別として、自然に部下の育成においても取り入れていたと感じられた方も多いのではないでしょうか。私自身もそう感じる一人です。コーチングが、このようなわかりやすい形で、手法として確立されてきていることは素晴らしいと思います。ランチェスターの法則においても、そうですが、ランチェスターの法則など聞いたこともない経営者が、自分なりの方針、考えで業績を伸ばしているいわゆる経営者が、後で振り返ってみるとランチェスターの法則にまさにマッチしていたということもあります。
 これまでに、私も人材(部下)育成に携わってきたことがありますが、「その人の長所を伸ばす」とか「自主性を促す」などは、まさにコーチングの環境(職場環境)を整えることに通じるものがあるように思います。難しいのは、文頭でも述べましたが、コーチングの基本とも言えるあくまで“サポート”に徹するということでしょう。“サポート”に徹しきって、本人の自主的に自発的に行動するのを待つことは、ある意味忍耐も必要となってきます。
 多くの人が多かれ少なかれ、コーチング的な考え方をさまざまな場面で取り入れていらっしゃることと思います。それらを、系統だてて頭の中を整理し、手法として噛み砕いていくには、一度コーチング関係の書籍などをお読みいただくことも良いのではないかと思います。部下育成のみならず、お子様の教育・自発性を育てる際にもお役に立つのではないでしょうか。

By Nagura

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