次世代自動車のデファクト・スタンダードを考察する

記:2001.7.1

 世界的に環境への意識が高まっている中、国内外の各自動車メーカーは、次世代自動車のデファクト・スタン燃料電池車イメージダード(事実上の標準)を握ろう(乗り遅れまい)と開発競争のみならず企業提携・協調、共同開発など多様な取り組みが行われています。次世代自動車のデファクト・スタンダードをつかむには、それだけ(開発)コストおよび(開発)時間がかかり、メーカー1社だけでは対応できない時代を迎えていると言えます。4年ほど前に、1997年の東京モーターショー(この年のモーターショーでハイブリッドカーのプリウス(トヨタ自動車)が発表され市販された)に向けてのコラム「これから車はどうなる」の中で“環境”“デファクト・スタンダード”というキーワードについて触れましたが、いよいよ“環境”の機運が高まり加速がついてきたような感じがいたします。併せて、お読みいただけましたらと思います。

 現在の自動車の主流はガソリンなりディーゼルエンジン(内燃機関)などですが、次世代自動車のデファクト・スタンダードとして有力視されているのが、燃料電池車です。燃料電池車とは、水の電気分解とは逆の原理を用いて、ガソリンや天然ガスなどから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させて生じた電気エネルギーでモーターを回して走行する自動車のことです。
 燃料電池車(FCEV)に関しては、世界の自動車メーカーがカリフォルニア州(アメリカ)に集結して、昨年(2000年)11月から共同開発の取り組みがスタートしています。燃料、電池メーカーとパートナーを組み、2003年以降の最初の実用車投入に向け、耐久走行実証テストを繰り返しています。リード役として、ホンダ、トヨタ自動車、ダイムラークライスラー、ゼネラル・モーターズ、フォードなどが参加しています。この共同開発では、水素を燃料とした燃料電池車の開発を最終的なターゲットとしています。一般的に、燃料電池車の成否のカギを握るのは、水素貯蔵タンクと燃料電池をバックアップする高性能バッテリーという見方がされています。

 自動車業界の多くは、低公害車の最終的な“本命”は、上記で説明しました燃料電池車と考えておりますが、現在それまでのつなぎとして、順調に販売を伸ばしているのがハイブリッド車です。ハイブリッド車とは、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせて走行する二つのパワーユニット(動力源)を持つ自動車のことです。国内では、トヨタのプリウス、ホンダのインサイト、日産のティーノなどが既に市場で走っており、トヨタはさらに現行車種のエスティマなどにも拡大しており、つなぎとは言え、市場は急成長する様相をみせています。小泉純一郎内閣も2004年度までに公用車7000台を低公害車に切り替える方針を打ち出すなど、ハイブリッド車には追い風が吹いていると言えます。
 また、トヨタはさらに簡易型の新ハイブリッドシステムを開発したと2001年6月12日に発表しています。シンプルな構成にすることで、既存の車のエンジン部分を大幅に変更することなく、様々な車種に搭載できるよう汎用性を高めています。今秋にも高級車「クラウン」に搭載して発売される予定です。新システムの名称は「トヨタ・マイルド・ハイブリッドシステム」で、ガソリン車に比べて燃費は約15%向上します。プリウス、エスティマなどに搭載している燃費が約2倍に高まる“フル規格”の既存のハイブリッドシステムに比べ、燃費向上率は劣りますが、ハイブリッド化による価格増は従来システムの半分以下に抑えられるということです。
 アメリカに目を向けましても、ガソリンエンジンと電気モーターの併用で走るハイブリッド車が人気を呼んでいます。ガソリン価格の高止まりや環境保護機運を受けて、通常の小型車より最大2倍の燃費効率を備える点が評価されているようです。現在、アメリカで販売されているハイブリッド車は、トヨタのプリウスとホンダのインサイトですが、どちらも2001年1月〜5月の販売台数が、目標販売台数を上回っています。
 さらに、市場の広がりを思わせるニュースとして、トヨタがハイブリッド技術を国内外のメーカーに開放することを明らかにしています。国内外の完成車メーカーへもハイブリッド技術を積極的に提供する方針を打ち出しており、つなぎとは言え、ハイブリッドを低公害車のデファクト・スタンダードとして押し上げるとともに、現在の10倍の月産3万台体制を目指すことで、量産効果によるハイブリッドユニットの生産コストの引き下げも狙っています。

 また、トヨタに対抗するような形で、同時期にBMWも水素エンジンの技術開放を年内(2001年)にも正式に決める方針を打ち出しています。この水素エンジンもハイブリッド同様に燃料電池車までのつなぎと思われており、ハイブリッドとの競合も予想されます。BMWの水素を燃やす方式は、“少数派”になっており、技術開放で巻き返しを図る意味合いも大きいようです。
 燃料電池車は、水素と空気中の酸素を化学反応させて生じた電気エネルギーでモーターを回して走行しますが、水素エンジンは、水素そのものを燃料として使おう(水素をガソリンの代わりに燃やして走る)というものです。水素エンジンは、いわゆるガソリンエンジンの発展型なので、技術移転が簡単なうえ、水素タンクなど一部の特殊な部品を除いては、開発・製造が容易というメリットがあります。難点は、ガソリンを入れるガソリンスタンド同様に、水素を入れる水素スタンドのインフラ整備がたいへんなことです。BMWでは、水素スタンドのインフラ未整備でも利用できる水素とガソリンの両方を燃料として利用できるバイフューエル車として次期7シリーズで投入する計画です。これは、ハイブリッドがガソリンと電気の切り替えと同様に、燃料そのものをガソリンと水素の切り替えをできるようにするものです。BMWのバイフューエル車の水素エンジンは、先日日本でも走行デモンストレーションが行われました。

 今回、低公害車の次世代自動車として、燃料電池車に焦点をあてて、紹介するとともに、そのつなぎとして、注目をあつめている“ハイブリッド”“水素エンジン”も併せてみてきました。さらに細かく“水素を利用した燃料電池車”の水素をどう取り出すかという視点で見ていきますと、ガソリンから取り出した水素を利用する燃料電池車(GM、トヨタ、エクソンモービルにおける共同開発)の取り組みも進められています。この場合、世界中に張り巡らされている既存のガソリンスタンドが燃料電池車へのエネルギー源供給網として活用できます。その他、メタノールから水素を取り出す方式、水素そのものを入れる方式などがあり、統一基準は定まっていない状態です。
 現在、次世代に向けての“デファクト・スタンダード”に向けて、“つなぎ”や“つなぎのつなぎ”なども含めて、国内外で開発が進められています。水素を利用した燃料電池車が本命とされてはいますが、今後どのような流れでどういう着地点に落ち着いていくのか、まだまだ不鮮明な部分も多く、目が離せない状態です。日本の自動車メーカーも外資が入るなど再編に一段落ついた形となっていますが、今後、さらにメーカーにとって、現状の経営基盤(財政状況)を確保しながら、次世代に向けての舵取りはより難しい時代を迎えていると言えます。

By Nagura

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