阪神大震災から6年目を迎えて

記:2001.1.8

 1995年1月17日に発生した阪神大震災からまもなく6年目を迎えようとしています。そして、時代は、20世紀から2大震災から6年目イメージ1世紀へと移り変わっています。新世紀を迎え、防災への取り組み・対応も変わってきており、今が、過渡期のような気がいたします。これから、よりよい方向に向かっていくことと思います。

 阪神大震災では、ボランティアが活躍して、ボランティア元年とも言われました。その後、日本海のタンカー事故などにおいてもボランティアの重要性が認識されました。そして、時代は、国や県など自治体からの一辺倒の対応だけでなく、住民サイドからの取り組みも生まれてきています。新世紀を迎え、自治体、住民サイドの互いのパートナーシップをとった対応が望まれています。1998年12月には、NPO法(特定非営利活動促進法)が施行され、全国各地で続々とNPOが立ち上がってきています。しかし、そのNPOがうまくパートナーシップをとって社会になじんでいるかといえば、税法等の法律上の整備が行き届いていない点を考慮しても、まだまだトライ&エラーの段階で、互いの信頼関係を築いていく途中のように思います。

 災害という視点でみていきますと、昨年も少なくなかったです。有珠山、三宅島の噴火、東海地方(名古屋周辺)の豪雨など自然災害に見舞われました。東海豪雨は、自然災害に輪をかけるように、都市化がもたらした都市特有の災害も重なりました。大雨に加え、都市部の拡大・宅地化によって一昔前のように、田畑等の土の部分が少なくなり(アスファルト化)、水を吸収する一時タンクのような役割をする部分がなくなったことにより、一度にどっと河川に雨水が流れ込むことで、河口部分の河川が決壊しました。また、河川の氾濫以外に、内水と呼ばれる都市災害特有の下水等があふれる状態も見られました。
 東海豪雨に関しては、私も実際に遭遇しましたが、ものすごい雨でした。朝、出かける時は、大雨という予報は出ていましたが、大したことないだろうと高を括って、油断があったことも確かです。しかし、雨量をみてみますと、時間雨量が100ミリ近くを記録しており、ものすごさが伺えます。東海地方は、伊勢湾台風以来水害対策が進められており、時間雨量50ミリに対応できる整備はされていましたが、今回はその倍近くの雨が降ったことになります。ここ最近、温暖化の影響もあるかも知れませんが、全国的に100ミリ近くを記録する豪雨が多発しているだけに、広範囲の自然環境も視野に入れた新たな対応策が求められていると言えます。
 昨年(2000年)9月11日の東海豪雨の時は、結局、JR、名鉄、近鉄が全線不通で、名古屋駅で20時間以上足止めとなり、コンコースで夜を明かしました。また、その日、名古屋市内(堀田辺り)でタクシーに乗っていた時、先程示しました内水の影響もあり、道路が川のような状態になり、たまたまその中にタクシーが突っ込んでしまい、タクシーの車中まで濁流が入ってきて、シートの下まで浸かるまさにタクシーの床下浸水にも遭遇しました。多くの車が、電気系統、マフラー、エンジン部分に水が入り、濁流の中で立ち往生(エンジンストップ)していましたが、我々の乗ったタクシーは、運が良かったことに、濁流の中で止まらずに脱出できたことは幸いでした。20時間近く名古屋駅で足止めとなり、一番痛切に感じたことは、先がまったく読めない状態で、なおかつ、正確な情報が入ってこないことでした。逆に、既に名古屋駅周辺のホテルがすべて満室の状態で、コンコース、地下街等にあふれて座り込んだ人々が、比較的冷静沈着に行動している様子は、感心いたしました。日本人ならではの行儀の良さでしょうか。
 昨年末(2000年12月17日)に、名古屋で開かれたシンポジウム「NPOと行政」の中で、東海豪雨の時に、ボランティアの中核として活躍した「震災から学ぶボランティアネットの会」の松本さんの話を聞く機会がありました。その中で、東海豪雨は、愛知県において、行政とボランティアの初めての半官半民の体制が試された場であり、良さも悪さも出た災害救援であったというコメントを述べていました。まさにトライ&エラーの段階で、様々な課題の検証が今後行われることと思いますが、一段階上にステップアップしたことは確かなように伺っていて感じました。

 日本には、古くから消防団や自治会など自主的に活躍している組織があります。しかし、特に都市部においては、近所付き合いが希薄になっている面も否めません。そういう状況からも、ボランティア、NPOなど地域における防災活動という面が見直されつつあると言えます。ここで、参考になる面もあると思いますので、アメリカの地域における防災活動の取り組みを少し紹介します。
 アメリカには、アメリカ連邦緊急事態管理庁(FEMA)が運営する防災活動「プロジェクトインパクト」というものがあります。これは、国の支援を得て、地域ぐるみでボランティアを育てたり、防災設備を整えたりするもので、行政任せではなく、住民が主導となっている点が大きな特徴です。住民や地域に事務所を持つ企業が参加し、とかく縦割りになりがちな行政の壁をこえてあらかじめ、災害時の対応を話し合っています。このプロジェクトがスタートした背景には、災害が起きた際の救援など国が負担する経費を減らしたいという事情もあります。現在の防災活動は、全米約250の地域に拡大しており、住民が自発的にアイデアを持ち寄るので、全国画一ではなく、活動の事例は多種多様になっています。内容的には、自治体の主な部署がこぞって災害に強い建物に移るといった大掛かりなものから、商店主が店先に防災PRのコーナーを設けたといった草の根の活動まで含まれています。アメリカ連邦緊急事態管理庁(FEMA)は、年1回ワシントンDCで、ユニークな活動を選ぶ表彰があり、参加へのモチベーションを高める取り組みも行われています。

 今回のコラムでは、防災について考察して参りました。阪神大震災から6年目を迎え、神戸の街そのものは見違えるようにきれいになってきていますが、人々の暮らし、心的な面では、まだまだ全快とは言えないように思います。昨年末も、今や、神戸の風物詩になった阪神大震災の犠牲者の鎮魂の意を込めるとともに、復興・再生への夢と希望を託した光の祭典「ルミナリエ」が行われました。先程、紹介しましたアメリカ連邦緊急事態管理庁(FEMA)の防災活動「プロジェクトインパクト」では、災害発生時だけでなく、復旧に向けての地道な支援の計画も視野に入れています。地震への備えは、阪神大震災後、進んできているように感じますが、万一、地震、水害等の災害に遭遇した場合に、地域のコミュニティをいかに早く普段の生活に戻していくかという課題に対してはこれからのように思います。今後、災害復旧に向けての地道な支援計画についても、地域において取り組んでいくことが必須となってきています。

 地震についての必要最低限の備え(知識)については、「地震一口メモ」に載せてありますので、一度ご覧いただきたく思います。また、地震防災に関するコラムは、検索コーナー・テーマ別から見ることができますので、併せてご覧下さいませ。

By Nagura

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