八丁味噌の郷(さと)を見学して

記:2000.11.1

 三河武士の兵糧として愛用され、江戸幕府開府後は、徳川家康によって全国にその名が広まったといわれる岡崎(愛知県)の伝統産物である「八丁味噌の郷八丁味噌」の郷を訪ねて参りました。八丁味噌は、江戸時代、関東地方で好まれ、現代では世界へ輸出されています。八丁味噌という名前の由来は、岡崎城から八丁(約872メートル)離れた八丁村で生み出されたことからきています。八丁村は、現在の岡崎市八帖町です。漢字は、違いますが、読み方の「はっちょう」は現在も変わっていません。

 ここまで説明してきましたように、八丁味噌とは、愛知県岡崎市の岡崎城の西八丁にある八帖町(旧八丁村)で生産される味噌のことで、現在2社で製造しています。今回、そのうちの1社であるカクキュー(合資会社八丁味噌)の工場を見学して参りました。

 使われている味噌は、地域によっていろいろと違うことと思います。皆様方は、どうような味付けのみそ汁を飲んでいらっしゃるのでしょうか。名古屋含めた岡崎界隈の地域は、みそ汁以外にみそ煮込みうどんやみそカツなど八丁味噌の赤味噌を活用した御当地名物なるものが多く見られます。味噌は、色で分けて赤味噌、白味噌、ミックスがあり、原料別には豆味噌、米味噌、麦味噌、調合味噌に分けられるようです。一概には言えませんが、おおまかに、北海道・東北地方が、赤系米みそ(辛口)、そして関東、中部、関西、四国・中国、九州にかけて、白系米みそ(中辛)、豆みそ、白系米みそ(甘辛)、麦みそに移り変わっていき、九州はほぼ麦みそを占めているというデータもでています。

 カクキューは、名鉄岡崎公園前駅(愛知環状鉄道中岡崎駅と隣接)から徒歩5分ほどのところにあります。すぐ近くに矢作川が流れており、また昔の東海道である国道1号線も走っています。カクキュー当家の創業は江戸初期と言われています。この地は、東海道と矢作川が交わるところで、八丁味噌の原料となる大豆や塩が入手しやすく、花崗岩質の地盤から良質の天然水にも恵まれており、味噌造りにとっての「よい豆、よい塩、よい水」の三拍子が揃っていたわけです。また、温度、湿度など四季の気候風土が醸造に調和して、八丁味噌の独特の風味を醸し出している大きな要因になっているようです。江戸に味噌を運ぶには、味噌は重量もあり、海上交通が適しており、すぐ近くを流れる矢作川から出荷できたことも大きかったようです。
 カクキューの敷地内には、工場の他に八丁味噌の郷・資料館と味噌はもちろんのこと、味噌を使ったさまざまなもの、お菓子、漬け物、たまり醤油や味噌煮込みうどんまで豊富な品揃えの直売店、レストランもあります。レストランでは、味噌にちなんだみそ田楽やおでんなどの他に、味噌入りカレーうどんや味噌入りカレーきしめんなどのメニューもあります。実際に、どんなものかと興味本位で「味噌入りカレーうどん」を食してみましたが、それほど味噌という強い感じはなく、おいしかったです。隠し味程度に味噌が入っているように感じました。

 一番上の画像は、資料館の中に展示してある「昔の仕込み風景」を写したものです。人形を使って当時の仕込み風景が再現されています。資料館には、その他、宮内省御用達、岡崎藩との関係といった貴重な史料、南極観測隊や旧海軍潜水艦内で用いられるなど八丁味噌の優れた品質を示す賞状や記録、江戸時代の大豆買帳、江戸への出荷記録、明治時代に用いられた木版なども見ることができます。

 ここで八丁味噌の製造工程をざっと説明しますと、原料には丸大豆を使用しています。まず、丸大豆を水に浸し水を含ませた後、蒸し釜で蒸します。この作業(蒸し加減)が最も技術と経験が要求されるということです。そして、蒸した丸大豆を手の拳大に握り、味噌玉をつくり、味噌玉の表面に種麹(麹(こうじ)とは、カビの一種で、生育の際、各種の消化酵素を体外に分泌します)をつけます。そして、麹をつけた味噌玉を割砕して、水と塩を配合して撹拌混合し、熟成倉で3年間じっくりねかせて出来上がります。熟成は、吉野杉でつくられた高さ2メートルもある大きな桶の中で約6トンの味噌を仕込み、約3トンの石をピラミッド上に積み上げて、足かけ3年ねかせます。ちなみに、他の味噌の熟成期間は、甘口白みそで約1週間、中辛白系米みそで1ヶ月〜3ヶ月、中辛赤系米みそで3ヶ月〜1年、豆みそで6ヶ月〜2年となっており、八丁味噌の熟成期間が長いのが伺えることと思います。3年の年月をかけてじっくりと天然熟成させることで、八丁味噌には、他の味噌より長期の貯蔵に耐え、塩分が少ないという特徴がでてきます。

 最後に、今回訪ねましたカクキュー(合資会社八丁味噌)の最近の話題を紹介します。それは、創業以来初めて社史を作成したという話題です。350年の歩みを222ページにわたって描かれており、市内の図書館や業界関係者に配布された模様です。社史をつくるにあたって、みそ蔵を改造した史料館に残っている約4千点の古文書などをもとに、10年がかりでまとめたとのことです。カクキューは、昭和30年代までは、手作業による味噌造りが主流でしたが、その後機械化され、現在は、1年間の出荷量が3千トンにのぼっています。東海地方を中心に販売網をもち、国内のみならず海外にも輸出されています。

 また、申し遅れましたが、カクキューの工場見学は、無料です。そして、帰りには、お土産にパックされた八丁味噌もいただけます。代々受け継がれてきた岡崎ならではの八丁味噌造りに興味のある方は、一度行かれてみてはいかがでしょうか。また、あわせて話の種に、「味噌入りカレーうどん」も食してみられてはいかがでしょうか。

By Nagura

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