IT(情報技術)について考察する

記:2000.6.4

 前回のコラムでは、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)について考察しましITイメージたが、今回はさらにその大枠となるIT(情報技術)について考察していきたいと思っております。

 新聞、雑誌、テレビなどで毎日のように、様々な業種、様々な場面において“IT”という言葉が出てきますから、見飽きて聞き飽きていらっしゃる方も多いことと思います。出版物も多く、書店ではコーナーができるほどで“IT革命”という言葉がよく使われているように思います。

 これだけITというキーワードが氾濫してきている背景にインターネットの急速な普及が挙げられます。国の経済活動、企業活動のみならず、個人の生活においても浸透しつつあります。昨年末(1999年)から今年(2000年)にかけて、騒がれているY2K(2000年)問題や一連のコンピューターシステムへの不正アクセス事件などを見ていましても、今やだれもITを避けて通れない時代を迎えていると言えます。

 まず、IT言葉そのものを紐といてみますと、名前の通り情報に関する技術ですが、アメリカ商務省による“IT産業”の定義づけは、「一つコンピュータ、半導体、電子管などのハードウエア、一つコンピュータ、ソフトウエア、その他販売、保守管理、一つ電話、テレビ、通信サービスなど狭義の電子関連産業」となっています。まあ大きくコンピュータ、情報・通信などがITと位置づけられ、IT革命はさらにITを活用する製造、流通、販売、金融、サービスなどさまざまな業種に広がっています。

 ITに関する国の試算、予測を紹介しますと、経済企画庁が企業の設備投資を牽引しているITによる生産性向上が米国並みに進めば、2004年までの5年間で国内総生産(GDP)を2.08%押し上げ、間接的な効果を含めれば効果は4.21%にふくらむという試算をまとめています。さらに、少子高齢化によって労働力人口は2005年をピークに減少すると見られていますが、ITによる生産性向上で人口減によるマイナスを相当程度カバーできるとしています。
 郵政省のインターネット人口の利用者予測を見ますと、インターネットサービスを使える携帯電話の登場でネット利用者が急増しており、5年後の2005年には7,670万人(1999年12月現在2,706万人)に達すると予測しています。また、アメリカで情報格差(デジタルデバイド)の解消が騒がれていますが、郵政省の通信利用動向調査を見ますと、日本においても年収1,000万円以上の世帯では普及率が3割を超えている一方年収が400万円以上600万円未満の世帯では13.4%となっています。ちなみに平均値は19.1%です。

 日本においても、デジタルデバイドの傾向が出てきているのには驚きますが、パソコン本体の価格は急速に下がってきているのに比べ通信料金がなかなか下がっていかない、格安となっていかないのも格差を生みだしている要因の一つになっているように思います。私自身ISDNを利用していますが、ダイヤルアップ接続のため、どうしても通信料金が気になってゆっくりとデータ等を調べていられない状況はあります。常時接続が一般的になってくれば、携帯電話による爆発的なネット利用以上の幅広い需要が見込まれ、ビジネスチャンスも生まれることと思います。仕事上で出先において調査関係の資料をインターネットで収集することがありますが、その時は常時接続だけに、差がいっそう感じられ、インターネット利用の有無という情報格差だけでなく、日本においては、常時接続とダイヤルアップなどの非常時接続における情報格差も水面下でかなりあるように感じます。ケーブルテレビの回線、専用回線、定額サービスなど利用していらっしゃる方はうらやましい限りです。

 次にITと結び付いたことにより、世の中に出てきたとも言える“ビジネスモデル特許”について紹介します。従来特許制度の枠外とされていたビジネス手法が、コンピュータと結びついたとたん、特許とされる可能性が出てきたことが、最近、騒がれている焦点となっています。ビジネスモデル特許は、儲ける仕組みそのものを特許として取得するもので、従来の技術的な目に見えるものから仕組みそのものいわゆる“考え方”というべき概念的なものも認めようというものです。
 例を出した方がわかりやすいと思いますので、アメリカのプライスライン・ドット・コム社の航空券の販売方法の逆オークションを紹介します。これは、まず消費者が自分のパソコン上から行き先、買いたい空席の値段、自分の連絡先などをネットワークを通じてプライスライン社のホームページに登録します。これに対してプライスライン社とネットワークで結ばれた航空各社が買い手側の要望(オークション)に対して売り手側が応じるというものです。プライスライン社は、仲介手数料で儲ける形です。

 逆オークションのビジネスモデル特許の一つの例を紹介しましたが、皆さんはいかが感じられたでしょうか。このような仕組み、考え方は以前からあったし、当然のことと思われた方も多いのでは思います。しかし、コンピューターが普及しインターネット・ITを利用したことにより実現したことも確かです。これをインターネットなしに実現しようと思うと事業的に採算は合わないことと思います。
 このようなビジネスモデル特許に関しては、先行して行った企業を守るという観点と社会的にビジネス手法を特許にどんどん認めると社会衰退・社会硬直を招くという観点から議論が交わされています。しかし、アメリカではビジネスモデル特許が勢いを増して取得されている状況を考えますと、賛否両論うんぬんは別にして、企業としては取得に走っていかざるを得ないのも確かです。世界的な情勢もにらみながら、情報武装、特許武装をしていかざる得ないと状況になっているように思います。それをしておかないと思わぬところで足元を救われない状況もありえます。日本においても、トヨタ自動車のカンバン方式、凸版印刷のマピオン(ネット上の地図情報と広告情報を関連づけ)などは、ビジネスモデル特許として取得しており、各社知的財産部などを設けて取り組んでいます。金融機関が若干遅れ気味という声も聞かれます。

 今回、IT関連について見てきましたが、活用範囲がどんどん広がっているとともに、それに付随して特許関係の再整備、セキュリティー上の整備が求められいます。今月末に総選挙がありますが、ITによる選挙支援も活発化してきており、家庭においては、情報家電の開発に各社競っています。世の中、どんどん便利になっていきますが、便利になっていくほど、我々ひとりひとりの生活のあり方を見つめ直す時がきているように思います。

By Nagura

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