早稲田大学周辺商店街の取り組みを考察する

記:2000.3.21

 東京の早稲田大学周辺の商店街が取り組んでいるユニークな空き缶回収機を集めた「エコステーション」は、テレビや新早稲田商店街イメージ聞紙上でよく取り上げられていますので、ご存の方も多いことと思います。
 また、私も既に読みましたが、早稲田商店街の取り組みを紹介した「スーパーおやじの痛快まちづくり」もかなり売れているようですので、読まれた方もいらっしゃることと思います。この「スーパーおやじの痛快まちづくり」は、早稲田商店会会長の安井潤一郎氏が書かれたもので、非常に読みやすく、タイトル通りまさしく痛快に読める一冊です。ちなみに、安井氏は、早稲田商店街の中で食品スーパー稲毛屋を経営しているおやじさんです。

 今回、コラムで早稲田商店街の取り組みを取り上げようと思った背景には、先月末に愛知県安城市民会館(主催:学校法人安城学園、共催:安城市商店街連盟、後援:安城市、安城教育委員会)において安井さんの講演を聞いたこともあって、強く感銘を受けたことにあります。約2時間にわたり、非常にパワフルで笑いあり、感動的な描写ありの充実した講演でした。講演を聞いて、取り組み内容の素晴しさはもとより、安井さんという元気なリーダーの存在が強く伝わってきました。早稲田商店街の場合、商店街の元気な取り組みが「まち」に住む人たちを元気にして、人と人のつながりを取り戻していると言えます。
 安井さんは、全国から講演のお呼びがかかっており、各地のまち(商店街)と連携した会合・全国リサイクル商店街サミットも立ち上げています。まさに多忙をきわめており、先程の本のタイトル通り“スーパーおやじ”です。また、早稲田大学の「五体不満足」の著者でもある乙武洋匡さんもこの早稲田のまちづくりに当初から携わっており、安井さんは、乙武さんの育ての親とも言われています。

 それでは、早稲田商店街の取り組みをみていきます。全国的に有名になっているエコステーションには、空き缶とペットボトルの回収機が設置してあります。その回収機に空き缶、ペットボトルを入れるとモニター画面にサッカー場が現れ、ボールの代わりに缶が飛んでいきます。缶がゴールに決まれば「当たり」で懸賞がもらえる仕組みになっています。当たりの懸賞として、スーパーの割引券、中華料理店のギョウザ無料券などが入っており、イベントの時には、ハワイの招待券やホテルの宿泊券など豪華商品も当たります。この取り組みを行ったことで、まちから道路に捨てられる空き缶がなくなり、なおかつ、モニター画面付きの回収機でリサイクルをゲーム感覚で楽しめるため、小学生に人気で子供たちの環境教育の実践の場にもなっています。また、大分県別府市の亀川商店街では、今年(2000年)1月に早稲田商店街のノウハウを導入して同様のエコステーションを開いています。
 そもそもこれらの取り組みの発端は、早稲田大学の学生が夏休みにぴたりと商店街に来なくなってしまう夏枯れ対策として、早稲田大学周辺の7商店会連合で4年前の夏に開催したエコサマーフェスティバルにあります。エコサマーフェスティバルは、現在も行われています。
 教育という観点で掘り下げていきますと、これまでの活動の成果もあって、全国の中学校から修学旅行生が早稲田商店街に数多く訪れるようになっています。エコステーションなどリサイクルの取り組みの見学・体験とともに、修学旅行生一人一人に早稲田商店街だけで使える500円券を配るサービスもしています。

 最後に最近の早稲田商店街の取り組みを紹介します。「ワセダブランドお買い物リサイクル袋」を導入して、生ごみをたい肥として再利用する試みが行われています。この「ワセダブランドお買い物リサイクル袋」は、静岡のメーカーと共同開発したたい肥に分解できる袋で、生ごみを袋ごと生ごみ処理機に入れることができます。ちなみに、生ごみ処理機は、空き缶、ペットボトル回収機が設置してあるエコステーションに置かれています。

 安井さんは、講演の中で、早稲田商店街でこれまで途中でやめることなく取り組んでこれたことについて、“まちづくりはあまり真剣に取り組みすぎては駄目”“できる範囲で楽しく”という言葉で表現しています。「商店街において、まず自分の店の売り上げだけでも精一杯だから、だったらできる範囲でやればいい。面白そうにやっていれば人はついてくるし、おっちょこちょいが一人いて、そうだよねと相づちを打つ人がいればまちづくり活動なんて成り立つ」とも言っています。
 安井さんは、根っからの商人(あきんど)であり、サービス精神旺盛な面からおっしゃっている部分もありますが、早稲田のまちへの思いは、人一倍強いことが話の節々から伝わって参りました。無理をすることなく、自然体でまちづくりを進めている安井さんの姿が、周りの人にもまちづくりに参加しやすく、多くの人を惹き付け、地域、企業、行政をも巻き込む形につながっているように思います。

 多くの商店街がさまざまな形で活性化に取り組んでいますが、無理することなく、できる範囲で楽しくやっていくことが、継続的に長く続けていく秘訣であり、長く続いていけば、自然と輪が広がり、商店街内にとどまることなく広がっていくという流れをまさに早稲田商店街の取り組みが示しているように思います。このような早稲田商店街の取り組みの輪が、池の中に石を投げ入れた時に水面に輪が広がっていくように、全国の商店街に広がっていって欲しいものです。
 エコロジー関係では、東京・国立市の「くにたちカード」の取り組みも視察レポート「国立市のエコロジー商店街を訪ねて」で紹介しておりますので、併せてご覧いただけたらと思っております。

By Nagura

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