日本全国における先進地カード事業を考察する

記:1999.12.5

 今までは、日本全国の商店街において、一様に“アーケード”“街路灯”“カラー舗装”といった商店街近代化の3点商店街カード化イメージセットなるハード面の整備を進められてきたところが多かったように思います。しかし、ここ数年を見ていますと、イベント、情報化など、その商店街ならではの地域特性を生かした独特のソフト的な試みも出てきています。
 イベント(賑わい)という点に関して見ますと、大阪の天神橋筋商店街など常に新しい取り組みを試みています。日経流通新聞など見ていましても、頻繁に取り上げられており、メディアの取り込みもうまくいっているように思います。また、ソフト重視の取り組みの商店街として全国的にも有名な京都の西新道錦会商店街があります。西新道錦会商店街には、つい先日(1999年12月1日)3度目になりますが行ってきました。視察レポート上には2回目の登場となりますが、その時の模様を紹介しております。最新版のレポートでは、西新道錦会商店街振興組合の安藤理事長の話も含めて、ソフト事業全般を紹介しておりますので、併せてご覧いただけましたらと思います。

 今回のコラムでは、商店街のソフト事業の一つと言えるカード化(情報化)という点にポイントを絞って、全国的な視点から見ていきます。多くの方がカードと聞いて、キャッシュカード、クレジットカード、テレホンカード、地下鉄などのカード、百貨店や大手スーパーなどの会員カードなどをまず思い浮かべるのではないでしょうか。現段階において、全国的に見ると商店街カードは、まだなじみの薄いものかも知れません。しかし、現在のように郊外に大型店舗が進出する前あたりまで、近所の商店街で買い物をされて、買い物金額に応じてギフトボンドやブルーチップなどの紙の四角いスタンプをもらって、紙の台紙に張って集めた記憶がある方がいらっしゃるのではないでしょうか。もちろん、現在でもスタンプを発行しているところもありますが、わかりやすく言えば、商店街カードは、この紙のスタンプをプラスチック上の1枚のカードに移行した形と言えます。

 商店街カードのサービス機能をざっと見ていきますと、先程の紙のスタンプから移行された形の“ポイントカードサービス”、前払い式のカードに金額が記録される“プリペイド機能”、買い物時の釣り銭をカードにプリペイド入金する“釣り銭プリペイド機能”、買い物履歴を随時確認・印刷できる“家計簿サービス機能”、“クレジット機能”“キャッシュカード機能”などが一般的です。
 その他、最近またはユニークの取り組みとして、キャッシュカードをそのまま買い物に利用できる“デビットカード機能”、ATM(現金自動預け入れ引き出し機)や専用の端末機・公衆電話を利用した“電子マネー機能”、市役所や病院などでも利用できる“自治体・公共サービス連動機能”、空き缶や牛乳パックの回収、買い物袋持参の場合にポイントが付与される“リサイクル・エコロジー機能”、駐車場にも利用できる“駐車場連動サービス”などがあります。

 ここで、少し(財)流通システム開発センターの商店街実態調査結果を見ていきます。商店街カードに付けた機能を見ますと、「ポイントサービス機能」「外部クレジットの受け入れ」「プリペイド機能」の順となっています。商店街カード事業の導入理由を見ますと、「客数と売上の増加」「サービス向上」「生き残りのため」の順となっています。また、商店街カード導入による効果を見ますと、「ポイントを集める客層が広がった」「カード事業に積極的な加盟店では、売上アップにつながった」「商店街カードを絡めたイベントは集客に効果があった」の順となっています。逆に、導入後の問題点を見ますと、「ポイント発行の足並みが揃わない」「加盟店やカード会員が増加しない」「カードを絡めた魅力あるイベント企画が難しい」の順となっています。実際に、商店街を見に行ったり、カード事業に関するセミナーなどで、カード事業に取り組んでいる商店街組合の理事長さんのお話を聞く機会がありますが、カード事業が順調に推移している商店街は、理事長さんのリーダーシップはもとより、カード事業以外にもさまざまな取り組みを積極的に行っている様子が感じられます。それらの商店街のカード化事業を見ていましても、カード化は顧客サービスにおける一つの手段にしか過ぎないという姿勢が感じられ、常に消費者主義を追求している姿が伺えます。

 それでは、具体的に商店街カードの取り組みを見ていきます。一概に商店街と言っても、生鮮3品など最寄品を揃えた日常的に利用される近隣型の商店街から中小都市、大都市などに立地している地域型、広域型、超広域型までさまざまです。
 文頭で述べました西新道錦会商店街は、典型的な近隣型の商店街です。詳しくは、視察レポート上で述べてありますので、省略しますが、数多くあるソフト事業の中でカード化事業においては、他の地域より高い還元率(ポイントサービス)が設定されています。また、西新道錦会商店街から東へ1キロメートルほど行った京都の繁華街にある四条繁栄会商店街は、皆様もご存じの通り、超広域型商店街です。ここでは、デビットカードサービスが行われており、キャッシュバックも付与されています。
 自治体・公共サービス等との連携機能付カードとして、長野県駒ヶ根市のつれてってカードは、市役所における印鑑証明、住民票などの支払いや病院の支払いにも利用できます。同じ長野県の伊那市のいーなちゃんカードは、市役所の利用に加え、市内循環バスの乗車料金をポイントまたはプリペイドで支払えます。また、北海道滝川市のげんきカードは、市の保健センターでカード利用ができ、簡単な健康診断も受けられます。
 リサイクル・エコロジー関連機能付カードとして、東京都国立市のくにたちカードは、牛乳パック回収と買い物袋持参のお客さんにエコロジーポイントが発行されます。また、鹿児島県国分市の縄文きずなカードでは、子供を対象に「町のゴミ拾いとリサイクル勉強会」へ参加するとポイントを付与するというサービスも行っています。
 駐車場サービス連携機能付カードとしては、兵庫県姫路市の千姫カード、東京都品川区の武蔵小山商店街のパルムカードなどが挙げられます。二つのカードの形態には違いが見られ、千姫カードは、買い物ポイントに加え駐車ポイントが付加される形になっており、パルムカードは買い物ポイントが駐車場にも利用できる形となっています。
 その他、ユニークな取り組みとして、北海道斜里郡のオホーツクカードが挙げられます。オホーツクカードは、斜里町、佐呂間町、訓子府町、生田原町の4町合同で1枚のカードを発行しており、スケールメリットによるハード・ソフトの負担軽減を図っています。カード自体は、4町同じカードですが、ポイントの利用は各町内に限られており、独立性は保たれています。

 今回のコラムでは、商店街におけるカード化の取り組みを見てきましたが、カード化によって大きく変わった点として、まず“データとして捉える”という視点が加わったことではないかと思います。得意客へのサービスを従来の“勘”に頼るだけでなく、勘にプラスして、カードを通じての“データ”として捉えることにより、より的確なサービス展開を試みることができるようになったのではないかと思います。
 その他、目立ったところでは、商店街単独ではなく、地域周辺を巻き込んだカードサービスを展開しており、消費者の利用の幅を広げている点です。自治体、地元金融機関、病院などと一体となってカード化に取り組んだり、オホーツクカードのように周辺の商店街がスクラムを組んで共同で、それぞれの独自性を保ちながらもゆるやかに結束している例などが見られます。

 一概に商店街と言っても、商店街の規模・業種、商圏の大きさ、客層に加え、地域特性、風土・歴史、商店街の成り立ちなどで違いがありますから、その商店街にあった、その商店街ならではの取り組みを行っていって欲しいものです。今回、商店街のカード化の取り組みを紹介しましたが、何もカード化のみを推奨しているという訳ではなく、さまざまあるソフト事業の一つとしてカード化を考える上での材料、ヒントになればと思っております。是非、商店街の方のみならず地域一丸となって、知恵を出しあって、よりよい方向に歩んでいって頂きたいと思っております。

 最後に、先日(1999年12月2日)、東京・渋谷で行われているICカード型の電子マネー(渋谷スマートカードソサエティープロジェクト)を実際に体験してきましたので、少し紹介します。ビザ(VISA)カードが提唱する“ビザキャッシュ”を商取引に利用するというものです。カードには、使い切り型、再補充型、クレジットカード付の多機能カードの3種類があります。今回は、1,000円の使い切り型の電子マネー・ビザキャッシュのカードを購入して使いました。金額が1,000円という額だけに、現金を追加して払ってはおもしろくありませんので、単価の低いところを選び食事時に利用しました。ザ・プライムの中のラーメン屋で820円のネギラーメンの支払いと、隣の渋谷109にあるビザキャッシュが使える自販機で120円の缶コーヒーを購入(残金60円)しました。カードの利用は、端末機にカードを差し込むだけで済み、小銭も入らず、手も汚れず非常にスマートなイメージを受けました。
 最後に紹介しました渋谷の電子マネーは、現段階では、渋谷に訪れる不特定多数の人を狙っていますので、商店街カードとはまったく意味合いが違います。ビザ(VISA)カードは、2008年までに、現在の磁気タイプのクレジットカードをICカード型に切り替える方針で、電子マネーは、ICカード型クレジットカードの一つのサービス形態とも言えます。実際に、クレジットカード付の多機能カード(ICカード型)では、クレジットカード会社からお金の価値を買って、カードに電子マネーとして入れる取引ができます。今までは、物品の購入にクレジットカードを利用していたものが、電子マネーが普及しますと、クレジットカードでお金そのものを購入するという不思議な取引も一般化していくのでしょう。それも、キャッシングサービスとは違い、実際に現金を見ることも触れることもなく、転々と流通していくという流れの中で・・・。

By Nagura

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