中部地方の産業遺産・産業観光を考察する

記:1999.9.23

 私もかつては、自動車関連企業で設計・開発などで“ものづくり”に携わっていましたが、愛知県含め東海地方産業遺産イメージには、“ものづくり”とも言うべき産業技術がけっこう集積しています。

 時代を江戸時代にさかのぼりましても、この地域は“からくり”が盛んで、この地域の祭には、山車にからくり人形という光景が、よく見られます。その後、繊維産業が起こり、自動織機、自動車へと発展してきています。また、前回の視察レポートで愛知県瀬戸市コラムで陶芸の話題を出しましたが、陶磁器産業も盛んな地域です。

 後程、“産業観光”という面で紹介しますが、単純に既存のリゾートとも言うべき観光という領域では、近隣の岐阜県、三重県、静岡県に比べ、名古屋を拠点とする愛知県は、あまり知られていなく、魅力づくりを怠ってきたとも言えます。これまでは、自動車産業を中心に、産業一辺倒に動いてきており、振り子で例えれば、一方に振れすぎていたのが、ここ最近、その振り子が逆に振れつつあり、本来あるべきバランスを取り戻しつつあるように感じます。その逆の方向、すなわち、本来あるべきバランスを取り戻すキーワード・行動として「産業遺産」「産業観光」が挙げられるのではないかと思っております。「産業遺産」「産業観光」を突き進めていくことにより、生活者としてのソフト面、都市空間のハード面ともに、文化的な幅の広がり、生活空間の質の向上が図れ、各地域地域における“その地域の資源”がよりはっきりと見えてくるのではないかと思います。また、その強みを生かして、地域の活性化へと、つなげていくこともできます。
 先程、愛知県は、観光地があまりないと言いましたが、三河湾を望む蒲郡辺りの海岸沿い、豊かな自然が残る山間のブッポーソーで有名な鳳来山などの奥三河は、地元では身近すぎて軽視しがちですが、県外の方からはけっこう人気があるようです。皆様方も機会がありましたら、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

 それでは、今年の夏(1999年8月9日)に行われましたJR東海会長の須田寛氏、ジャーナリストの野中ともよ氏を迎えて行われたトークイベント「ものづくり夢くらべ・東海の産業観光」、先日(1999年9月21日)行われました中部産業遺産研究会・副会長の藤村哲夫氏の講演「産業遺産の魅力を探る」を聞いた内容も踏まえ、「産業遺産」「産業観光」について少し具体的に見ていきます。

 まず、「産業遺産」「産業観光」とは何かという面を見ていきますと、両方は密接につながっています。JR東海会長の須田寛氏が出された書籍「産業観光」の中から言葉を拾ってみますと「産業観光とは、産業遺産(歴史的意味を持つ工場遺溝、機械機具等)を観光資源として、それらを介して“ものづくり”の心に触れることによって、人的交流を促進する観光活動をいう」と記されています。
 また、産業遺産に関して、加藤康子氏が出された書籍「産業遺産」の中から言葉を拾ってみますと「産業遺産とは、その国のその時代を担った人々の生活文化と知恵の結晶、また、産業文化を見直すことは、真の現代史に向き合うこと」と記されています。

 中部産業遺産研究会・副会長の藤村哲夫氏には、講演を聞くとともに、講演後の懇親会においても、酒を交え話させていただきました。中部産業遺産研究会は、20年ほど前に工業高校の先生たちが、技術史を工業教育に取り入れようと始まった(当時の名称は愛知技術教育研究会)もので、徐々に活動範囲を広げ、現在は、研究会、機関誌の発行、シンポジウム、海外視察、他の機関への協力などが幅広く行われています。また、中部産業活性化センターでは、産業技術博物館(仮称)の建設の構想を打ち出しています。現在、中部地方には、トヨタ博物館、産業技術記念館、愛知県陶磁器資料館などはじめ、知られていないものも多く、たくさんの施設がありますが、産業技術博物館(仮称)を建設することにより、個々のバラバラの施設をネットワーク化しようという狙いがあります。このネットワーク化は、中部地方にとどまらず、国内外の博物館とのネットワーク化を結ぶ考えです。また、ネットワーク化以外に、調査・研究機能、教育・普及機能なども含まれています。実際の生産現場とも連携して21世紀の新産業をリードするとともに、展示中心の従来の博物館の枠を超え、子供や若者を引き付ける「産業技術のディズニーランド」を目指しています。

 ここのところ、古い民家を保存活用する動きが活発に行われていたり、環境問題も絡んできますが、昔のきれいな堀や運河(名古屋市の堀川・滋賀県近江八幡市の八幡堀など)を取り戻そうという動き、そして、今回述べました古い産業遺産を活用しようという動きなどが各地で起きています。その町、その町の良さを引き出そうという動きの中で、町の活性化につながっていくとともに、そこに住んでいる住民同士のつながり・結び付きがより強くなっていくことが一番大きいことと思います。
 今後、藤村哲夫氏が副会長をされている中部産業遺産研究会には、参加させていただく予定ですので、また、機会を見つけて、皆様方にご紹介できればと思っております。

By Nagura

リターンイメージリターンイメージリターンイメージリターンイメージリターンイメージ