伝統文化・陶芸体験を通して

記:1999.9.5

 私の住んでいる愛知県含めこの近辺には、窯場・やきものの産地がけっこうあります。先日、視察してきました工芸館陶芸の様子戸市の瀬戸焼をはじめ、常滑焼(愛知県)、美濃焼(岐阜県)、信楽焼(滋賀県)、伊賀焼(三重県)、万古焼(三重県)などがあります。土器にはじまり、陶器、磁器と発展してきた日本のやきものは、全国各地に窯場があり、それぞれの伝統に培われた技術を受け継ぎながら、個性あるやきものが今もつくられています。

 最近、陶芸を愛好する人が増えており、各陶芸教室では、受講希望者が年々増えているそうです。また、その受講者の大半は、女性のようです。“料理を作るのが好きで器にも凝るようになった”とか“手作りの器で料理を盛り、友人たちをもてなしたい”とか“日本の伝統文化を学びたい”など陶芸教室に通う動機は、人それぞれのようです。上の画像は、瀬戸市にある瀬戸新世紀工芸館の工房棟で研修生が学んでいる(作陶している)様子を写したものです。ここの研修生も大半は女性で占められています。瀬戸新世紀工芸館の詳細な説明は、視察レポート「せとものの町・瀬戸市を訪ねて」をご覧いただければと思います。
 また、学校給食用として普及しているポリカボネート(PC)の食器から内分泌かく乱物質(環境ホルモン)が溶け出すと指摘されたことをきっかけに、陶磁器が見直されています。各地の陶磁器産地は、この給食用食器の「特需」に目をつけ、起爆剤になればと意気込んでいます。各産地では、酸化アルミニウムを粘土に混ぜたり、通常より高温で焼いたりして従来の数倍の強度の陶磁器を実現しようと努力しています。瀬戸市の愛知県陶磁器工業協同組合でも、この6月に試作品を完成させ、関東や九州などの自治体から問い合わせがあったそうです。すでに、陶磁器に切り替えた小学校では、ポリカボネート製に比べて割れやすいのですが、子供たちがむしろ丁寧に扱うようになったと良い面も現われているようです。

 前置きが長くなってしまいましたが、先日、名古屋市に本社があるノリタケカンパニーの陶房で陶芸体験をしてきました。我々のグループは、20名ほどで半数近くが女性でした。私が体験してきたのは、多くの方がイメージされるカロリーメイトのコマーシャルに出てくるろくろを回してつくる形の陶芸ではなく、型にとって成形する陶芸を体験してきました。(形を整える作業においては、手回し式ろくろを必要に応じて使用しましたが)
 型にとって成形する陶芸を簡単に説明しますと、まず初めに土を同じ厚さの板状にした“タタラ”をつくります。タタラは、粘土を円筒状に形づくってから糸をピンと張って同じ厚さに切ってつくります。上の画像の中で、手前の方が行っているのが、型にとって成形する陶芸です。机の上に丸く見える粘土がタタラです。そして、そのタタラを型にあてて、手で押しながら形づくっている様子が画像から伺えると思います。型は、いろいろなバリエーションがあり、今回は一人あたり2作品を2時間半ほどかけて、説明を受けながらつくりました。私は、サラダを入れるくらいの大きさの鉢と秋の味覚の秋刀魚(サンマ)がおけるくらいの皿をつくりました。ちなみに今回使用した土は、タヌキの置物で知られる信楽の土だそうです。しかし、やきものの名称は、土のとれたところではなく焼いたところの名称となるため、今回、私がつくったやきものは、ノリタケ焼か名古屋焼といったところでしょうか。でき上がりまでには、1カ月ほどかかりますが、どのような出来映えか楽しみなところです。

 今回、久しぶりに“つち”というもの触り、“つち”で遊んだという感じで、終わった後も土の良い感触が残りました。何か、陶芸にはまって(魅せられて)いく人の気持ちが少しわかったような感じがいたします。私の場合は、サラリーマン時代は、設計図面から作成するものづくりに携わっていましたが、またそれとは違った形のない無というべき土から、一気につくりあげていく楽しさ(感性)が味わえました。敢えて陶芸を製造業のものづくりに例えるとすれば、ポンチ絵(イメージを表わした簡単な絵)を示しただけで、試作部のおっちゃんが見事に作ってくれた業(わざ)に近いものかも知れません。

 また、今回、陶芸を指導していただいた“コジマ先生”がなかなかユニークな方でした。以前は、ノリタケカンパニーのデザイナーだったそうですが、実際に使われるお客さんの顔が見えるものを作りたいという思いから退社され、アメリカ(シカゴ、ニューヨークなど)を渡り歩いて、現在、乃りたけ陶房「ぎゃらりーしょっぷ」を運営しながら、陶芸を教えています。ぎゃらりーしょっぷには、手造り作品、有望な若手陶芸家、工芸作家の作品がおかれています。また、この陶芸教室には、台湾に近い石垣島(沖縄県)から来られている方もいらっしゃるそうです。

 次回、陶芸をする時は、今度はろくろを使ってつくってみたいと思っております。ろくろも電動ろくろよりも、手回し式ろくろの方が自然な味わいがでるそうです。また、今回の陶芸はけっこう楽しんでつくってしまいましたが、作陶の基本は“無心”になることかも知れません。

By Nagura

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