元気な高齢者や障害者が“街”に繰り出す!

記:1999.4.21

 先日、愛知県足助町にある足助町福祉センター「百年草」を見てきました。その中にある二つの工房(ZiバーバラはうすイメージZi工房、バーバラはうす)において、お年寄りたちが生き生きと働いている光景が特に印象に残っています。左の画像が、パン工房の「バーバラはうす」の店内を写したものです。ガラスの向こう側では、パンをつくって、焼きあげています。画像の中で右端に少し見えるおじさんが、なかなか売り込み上手で、少し話しましたが誇りを持って働いている様子が伝わってきました。
 足助町は町民一人ひとりが「生涯現役」でいられる福祉をめざしており、その取り組みが少し垣間見られました。

 長野オリンピックが開催されてから早いもので1年以上経っています。その後オリンピック疑惑などいろいろありましたが、開催地となった長野市は、街全体が整備されバリアフリー化が進められすっかりきれいになりました。先日、ニュース番組の特集でオリンピックから1年以上経った長野市を高齢者・障害者にやさしい街という視点からリポートされていました。その中で、お年寄りや車椅子の方々が街に繰り出している様子が映し出されており、インタビューを受けた方々の表情も明るかったことを覚えています。なお、一般の方も、街に車椅子の方々が出られていることをごく自然に、日常的なのことと受け止めていることに感心いたしました。
 長野市は、オリンピックによって街の生活環境におけるハード面が整備されただけでなく、国際交流とともに、高齢者、障害者の方々を自然体で受け入れる姿が見られ、市民の意識も自然と変わってきているように感じました。心のバリアフリーとも言える“ノーマライゼーション”という言葉も最近聞かれるようになってきていますが、長野市民は、オリンピックという体験を通して自然と“ノーマライゼーション”を身につけたように思われます。

 ノーマライゼーションとは、障害者も健常者も普通の人間であると理解することであり、すべての人がともに生きるという考え方です。冒頭で紹介しました百年草のコンセプトの中にもノーマライゼーションという言葉が使われています。また、流通業界においても、イトーヨーカ堂福山店が、開店前にノーマライゼーション教育を実施しています。ハード面の整備の促進だけでなく、ソフト面においても業界含めひとりひとりの意識が変わり始めています。

 “バリアフリー”という言葉が先ほど出てきましたが、バリアフリーとは障害者などにとって使いやすいという概念で、言葉の通り障害のある方が普通に生活するための障壁(バリア)をなくすことがバリアフリーです。
 また、最近では、さらに一歩進んだ“ユニバーサルデザイン”を取り入れるようになってきています。バリアフリーは既に存在しているバリアが対象ですが、初めからバリアのないデザインを考え、障害者の方に限らず一人でも多くの人が利用しやすいものや空間を提供していこうというのがユニバーサルデザインです。より大きく広い視点から捉えていくという点では、ノーマライゼーションに通じるものがあります。

 “おばあちゃんたちの原宿”と呼ばれている巣鴨地蔵通り商店街は、縁日の日には溢れ返らんばかりのお年寄りたちでいっぱいになります。この辺りは、江戸時代から旧中山道の入り口にある門前町(信仰の街)として賑わっており、とげ抜き地蔵(高岩寺)以外にも、付近に20くらいの寺があります。とげ抜き地蔵に元気なお年寄りたちがやってくる光景は、今も昔も変わらないようです。
 巣鴨地蔵通り商店街では、さまざまな高齢者対応をしています。まず、店頭に貼り出されているビラ、ポップや値札などの価格表示が、うるさいくらい大きく、老眼の方でも一目瞭然となっています。価格も面倒な小銭のやりとりの負担を減らすために、消費税込みで100円、1,000円などのように切りのいい数字をつけている店がけっこう多いです。そして、人間は年を取るとトイレが近くなるものですが、ここ巣鴨地蔵通り商店街では、公衆トイレの設置に加え、各店舗のトイレの開放も進めています。また、店員も中高年の女性が多く、年齢が近いということもあり、買う側のお年寄りたちも話しやすいようです。

 ここで、海外のイギリスにおける取り組みを一つ紹介します。この間テレビの30分番組で、レンタルの電動スクーターを使って、お年寄りがショッピングを楽しんでいる光景が映し出されていました。ショッピングと言ってもかなり広大なショッピング・モールで見て歩くだけもたいへんなほどです。テレビに出ていたおばあさんは、一人で孫の誕生日のプレゼントを買いにきていた模様で、歩行がまったく困難というわけではありませんが、広大なショッピングセンターを歩くにはたいへんということです。電動スクーターを使って、自分の行きたいところに自由に行くことができ、店内にもそのまま入ることができ、商品を選ぶことができます。そのためには、ショッピング・モール側の段差をなくしたり、スロープを設けたり、電動スクーターが通りやすいように店内の通路を広くとり、手にとりやすい位置に商品を並べたり、さまざまな配慮がされています。まさに、ショッピングが楽しめる環境が整っています。先程の“おばあちゃんたちの原宿”の巣鴨もそうですが、とげ抜き地蔵のお参りとともに、その帰り道の買い物の楽しみがかなり大きいことと思います。

 イギリスでは、見てきましたように、電動スクーター等の無料で貸し出すシステム“ショップモビリティ”が浸透しています。ショップモビリティとは、名前が示す通り、ショップ(お店)をモビリティ(移動できるということ)するということで、買い物を楽しんでもらおうというものです。1979年に第1号がミルトン・キーンズのショッピングセンターにオープンし、1998年9月末時点でイギリス全土で270を超えるショッピングセンターでショップモビリティが存在しています。

 日本においても、1996年にこのイギリスの“ショップモビリティ”を導入するにあたり、買い物だけにとらわれず、幅広い活用の可能性があることから“タウンモビリティ”と名付け、指定された都市で社会実験がされており、事業化を目指しています。日本において進めようとしているタウンモビリティとは、高齢者や障害者など移動に不安を持つ人に電動スクーターや車椅子を貸し出して、商店街や街なかを自由に楽しんでもらおうという外出支援のプログラムです。

 今回、元気な高齢者・障害者という視点で見てきましたが、最近、日本においても、積極的に外に出られ、本当に元気なお年寄りというのが失礼なほど若々しい方々が増えてきているように思います。不特定多数が利用する駅などでも、エレベーターやスロープなどの設置が進められており、運輸省では、来年(1999年)1月をめどに、鉄道駅が高齢者や障害者にとってどれだけ使いやすいか評価する「やさしさ指標」が導入されます。

 高齢者・障害者にやさしい街というのは、すなわち健常者含め誰もが利用しやすい街でもあります。高度成長時代には、効率重視の車優先のまちづくりが進められてきましたが、今、高齢者・障害者だけにとどまらない健常者も含めた“ユニバーサルデザイン”“ノーマライゼーション”の考え方など“人優先”のまちづくりが始まっています。

By Nagura

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