「モノづくり」と「まちづくり」には共通性がある?

記:1998.8.1

 私は、サラリーマン時代に10年近く「モノづくり」に携わり、そして「まちづくり」へと転身して3年がモノまちのイメージ経とうとしています。最近感じているのが、「モノづくり」と「まちづくり」には共通性があるのではないだろうかということです。同じつくり上げていくことには違いはないのですが、ただそれだけでなくどこかで相通じるものがあるのではないかと感じています。会社を退社した時は、まったく違う世界に飛び込んだという感じが強かったのですが、案外、大きな意味で考えますと今までやってきた延長線上を歩んでいるような感じもします。
 まだ「まちづくり」については、これから事業を軌道に乗せていく段階ですので、具体的にこうだと言い切れませんが、これから事業を進めていく節目、節目で「モノづくり」と「まちづくり」について考察してみたいとは思っております。相通じるものの核心についてはもうしばらくお待ちいただくとして、今回のコラムにおいては、「モノづくり」と「まちづくり」の個々について少し考えてみたいと思っております。

 「モノづくり」について振り返ってみますと、高校時代に理系コースに進んで以来、大学で機械工学科を選考したことを含めますと15年近く「モノづくり」に携ってきたことになります。大学の卒業研究では愛知県工業技術センターの施設を利用させて頂き、「深絞り」の研究をしました。深絞りとは、円形のアルミ、ステンレスなどの板材のものを、ポンチと呼ばれる円筒状のプレスでコップ状のものをつくる製法です。社会に出てからは、自動車のコンビネーションメーター設計(樹脂設計)、自動車関連の開発業務に携わってきました。
 私が入社した当時は、ちょうど手描きの図面からコンピューターを使ったCADの図面の移行の時でした。2〜3年後には、すべてCADに置き換わってしまいましたが、入社当時は、ベテラン社員の手描きの図面がCADで描く以上のきれいさと緻密さに驚かされものです。まさに匠の技といったところです。もう一つの匠の技を感じたのが、試作部のおっちゃん達です。こちらが無理難題のような要求を出しても、ピタッと仕様内、期日に納めてきます。頑固な人達が多かったですが、日頃の友好関係がいざという時には効きました。この間、テレビでNHK(1998年7月25日放送)の土曜特集「スーパー職人伝ハイテク日本を支えるお父さん」を見ていて、いろいろと思い出された次第です。
 それと、初めて設計したものが、実際に物として出来上がってきた時は、本当にうれしかったです。また、それが市販され、一般ユーザーの目に触れ、使用される段階になるとさらなる満足感というか達成感がありました。設計するに当たっては、精度、強度、コストなど基本的なことを押さえることは基より、使われるユーザーの顔を思い浮かべて「設計」することを心掛けていました。
 ひょんなことから自分が設計に携わったメーターの車を購入しましたが、つい先日3回目(使用7年目、走行距離10万キロ)の車検を通しました。実のところは、愛着があるというよりも、買い換えるだけの余裕がないというのが正直なところですが・・・。

 日本の経済状況を見ますと、97年度の国内総生産(GDP)は、前年度比で実質0.7%減と、23年ぶりのマイナス成長となっています。そして、98年の国内自動車生産台数も、79年以来19年ぶりの低水準にとどまっており、雇用維持の目安とされる1,000万台(98年上半期実績:510万613台)を割り込む可能性も出てきています。しかし、各国の技術力を示す技術ライセンス料などを調べた総務庁の技術貿易収支を見ますと、93年度に日本は出超に転じ、96年度には輸出額が輸入額の1.6倍に拡大しています。技術貿易収支が出超なのは、米、日、英の3カ国だけです。
 技術革新の波が広がっており、国境を越えたモノづくりの再編も始まっている中、日本経済の先行きには厳しい見方(悲観論)が広がっています。その中でも、もっと自信を持ってやるべきだと再三ハッパをかけた発言をしているのが東海大学教授の唐津一氏です。この唐津氏が(日本経済を救う手だてとして)提唱しているのが「新幹線方式」というものです。この新幹線方式とは、一口で言えば一度白紙に戻し、ゼロから組み直すというものです。「新幹線は高性能の列車が全速力で走れるようにレールも信号方式もすべて新規に開発しています。しかし、在来線では、どんなに無理をして改善したとしても、時速200Kmのスピードは出せないでしょう」と唐津氏は言っています。
 個人においても国のやり方を見ていても、従来のやり方を小手先だけ変えていく「在来線の改善」という安易な方向に行ってしまいがちですが、もう待っているだけでは扉が開かない状態を迎えています。政治においても「組み直す」という発想の転換の「新幹線方式」が求められているのでしょう。

 次に「まちづくり」に話を進めますと、先日(1998年7月24日)まちづくり3法の一つの中心市街地活性化法が先陣を切ってに施行されました。まちづくり3法の詳細につきましては、コラム「地方自治体の力が問われる時代へ(1998.6.7)」をご参照いただけたらと思います。
 私のこれから目指す方向性につきましては、今年の4月に書きましたコラム(「春です!!新しいスタートの季節です」1998.4.1)の中で少し述べさせていただきましたが、今年の10月に独立開業(有限会社設立)を予定しております。「まちづくり」という視点を根底におき、これから事業を進めて参る予定です。まちづくりといっても、多岐の分野にわたりますが、その中でも特に「防災」「環境」「商業振興」という点に重点をおき、社会に貢献していきたいと考えております。
 地方分権、大店法の廃止に伴う大店立地法の施行など、これから地方自治体の裁量の幅も広がり、独自性、地域色などの街づくりが重要視されてきます。その時流に乗るとともに、独立開業後3年目には何とか軌道にのせたいと思っております。今後とも皆様方のご指導、ご鞭撻、ご支援のほどよろしくお願いいたします。
 事業を進めていくに当たっては、「都市計画に特化した専門知識に加え、より総合的な生活・暮らしといった視点」「次の時代を見据えた新しい生活環境モデル、暮らしのモデルを創造していく姿勢・発想」などが必要とされますが、常に根底には住民・市民サイドに立った「生活感覚」を失わないようにやっていきたいと考えております。
 そして、自分自身の能力というか創造力を伸ばしていくとともに、まちづくりに関わる「住民・市民」を育てていくことも重要な課題と考えております。

 20世紀の日本を振り返ってみますと、「モノづくり」である製造業が日本の経済を力強く引っぱってきました。世界的に見ても18世紀後半にイギリスで始まった産業革命(蒸気機関車の発明など)以降、現在に至るまで科学技術が世界を引っぱってきています。これからももちろん、現在の不況(普況)を払拭するためにも「モノづくり」への創造は必要になってきますが、21世紀のキーワードはモノづくりをも含めた「まちづくり」になっていくように思われます。それぞれの地域が独自性をもって活性化、発展していくことが、日本経済の推進力にもつながっていきます。

 最後になりましたが、そろそろ夏休みを迎えられる方も多いのではないでしょうか。花火大会に盆踊り、蛍狩り、夕涼みなど日本の夏に欠かせない風景が思い浮かびます。また、お子様の夏休みの自由研究に「モノづくり」を体験されてみてはいかがでしょうか。そして、皆様方の住んでいらっしゃる街をゆっくりと散策されて、環境面、防災面、商業面、交通面、福祉面、文化面、教育面、産業面、防犯面などいろいろな角度から「まちづくり」についても考察されてみられてはいかがでしょうか。

By Nagura

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