大店法廃止後の21世紀に向けての商業環境を考える

記:1997.12.2

 通産省は1998乗り物イメージ年度末にも、中小小売店の保護を目的とした大規模小売店舗法(大店法)を廃止する方針を固めました。代わって、出店調整権限を市町村にゆだね、出店地域周辺の交通・環境問題、都市計画など地域の観点から審査する「新法」を、次期通常国会に提出する見通しです。外圧の荒波にもまれ、規制の強化と緩和を繰り返してきた1974年3月に施行された大店法が、幕を下ろす形となりました。新法の大きなポイントは、まず、届け出先が、国、都道府県から地方分権の流れもあり市町村になることと、審査基準が従来の店舗面積、営業時間などの外枠的のことから交通渋滞、ごみ、騒音など環境に配慮した審査基準に変わることです。

 この大店法の規制緩和、廃止に伴い、各団体では反対運動もおきています。たしかに、今の日本における小売商店を含め商店街の現状は、後継者難、大型店の進出、消費者の価値感の多様化などで苦しい状況となっています。地方都市においても、郊外に続々と大型スーパー、モールなどが進出してきています。そして、大型店と商店街というお客さんの奪い合いを飛び超えて、大型店同士の競争が激化しています。しかし、このような今の状態が今後も長く続くとは考えられにくいです。新しい形として自然、環境との共存を図ったより快適な空間が生まれてくると考えられます。郊外の大型店では、駐車場台数が2,000台以上あり、買い物に来る人は自動車を使ってやってきて、買い物ついでにその中にあるアミューズメント施設で一日遊んで帰る、という姿が今の買い物パターンの主流ではないでしょうか。確かに、いろいろな物があり、楽しく、便利であるように一見思えますが、何か物足りなさ、不自然さも感じられます。今は、多くの人がその物足りなさ、不自然さを我慢しているか、それほど認識していないのでしょう。この不自然さをうめるキーワードとして「なじみ」「環境」「本来のにぎわい」「自然との共存」などが挙げられ、それに向けて着実に時代は動いています。全国の商店街には、今、一歩前へ歩み出して、街・地域全体(大型店も取り込んだ)からの広い視点をもった取り組み、商店街の活躍の場づくりが必要です。多くの人、組織を巻き込んで、たくさんの知恵を出して、新しい街づくり(商店街づくり)に向けて時代にのっていって欲しいものです。

 今、こうしてコラムを書いている最中に、京都では地球温暖化防止京都会議(12月1日〜10日)が行われています。各国の事情もあり、数値目標設定には難航しているようですが、温暖化防止に向けての取り組みには、猶予はなく、早急に取り組まねば取り返しのつかないことになってしまいます。環境という面から、流通業を見ていきますと、企業としては、配送の効率化、店舗内における環境への配慮など行われてきていますが、消費者はと言うと車を使った買い物行動が多数を占めています。それだけ、CO2を排出しているということです。

 ここでドイツのフライブルクで行われいる環境に配慮した取り組みとして先進事例をひとつ示します。フライブルクでは、P&R(パーク&ランド)というシステムを導入しています。P&Rとは、最寄りの駅まで車で行き、駐車場に車を置いて、そこから電車に乗り継ぐアクセス方式のことです。フライブルクでは、緊急車両、許可された車両以外は、街の中には入れないようになっています。街に入るには、最寄りの駅に車を止め、路面電車(ライトレール)で入る仕組みになっています。年々、路線も拡大しており、乗車客も増えております。その路面電車の側面には、実際の大きさの車の絵が描かれており、車なら10数人しか乗れないけれども路面電車なら300数人乗れますということがうたわれています。また、乗車運賃も安く、月単位のパスを買えばかなり安くなるようです。そして、休日にはその1枚のパスで、家族全員が乗れる配慮もされています。儲けは出ておらず赤字を出していますが、グループ内のCO2を排出している企業が、その赤字を補填するという形をとっています。グループ内において環境税のような仕組みが出来ており、安い運賃で気軽に利用できる路面電車となっています。しかし、ここで一番大切なのは、住民の環境への意識です。いくら施設を整えたところで、本当に有効活用でき、環境に配慮できるかは、一人一人の住民が握っています。ここフライブルクでは、それだけ住民の環境への意識が強いと言えます。

 路面電車は、環境や人にやさしいということで最近脚光を浴びつつあるようです。日本で最初に路面電車が走ったのは、今、地球温暖化防止会議が行われている京都です。1895年(明治28年)に京都で初めて走り、最盛期には日本全国65都市で総営業キロ数で1,500キロにも及びました。現在は19都市で約240キロ程度となっています。しかし、今年(1997年)8月に、熊本市に日本初のライトレールと呼ばれる新型の路面電車が登場しました。ライトレールは、20年ほど前から欧州で導入が相次ぎ、高速性に優れ、輸送力も地下鉄とバスの中間、低騒音、低振動で無公害、低床のため高齢者や障害者も楽に乗り降りできるのが特徴となっています。

 私もごくたまに豊橋(愛知県)で市電(市民電車・路面電車)に乗りますが、昔はこの「チンチン電車」によく乗ったものです。何か懐かしいような気がします。現在の自動車中心に偏っている街から環境や人にやさしい街づくりに「路面電車」は一役果たしそうです。これから、本当の豊かさとは何かということが見直されていくのでしょう。

By Nagura

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