導入が進みつつある緊急地震速報について考察する
(阪神・淡路大震災から13年目を迎えて)

 記:2008.4.8

 ここ最近、緊急地震速報の導入が進みつつあります。鉄道や建設、研究機関などの特定利用者向けには、地震のコラムイメージ2006年8月から始まっていますが、昨年(2007年)10月1日から一般向けにも「緊急地震速報」が始まりました。今回のコラムでは、個人個人の防災への備えとして、備えのベースになる知識という観点で「緊急地震速報」を起点に述べていきたいと思っております。また、6,433人が犠牲となった阪神・淡路大震災から、13年目を迎えています。皆さんは、いつ起こるかわからない地震への備えをされているでしょうか。

 地震大国の我が国にとっては、「緊急地震速報」は新たな防災手段と言えます。「緊急地震速報」は世界初の試みでもあります。「緊急地震速報」開始から半年余り経ちますが、皆さんはどの程度ご存知でしょうか。お年寄りから子どもまで幅広く浸透することができるかが運用の成否を分けるだけに、認知度というのは重要な指標になってきます。

 まず、緊急地震速報の仕組みを簡単に紹介しますと、地震が発生すると、速度の速い初期微動(P波:秒速7〜8キロメートル)に続き、大きな揺れをもたらす波(S波:秒速3〜4キロメートル)が伝わってきます。この速度の差を利用し、震源に近い地震計がとらえた初期微動から震源や規模などを推定し、気象庁が速報を出すというものです。

 緊急地震速報は、地震の予知ではなく、P波とS波によるあくまで計算上の予測なので、どの程度の信頼性があるかが問題にもなってきます。気象庁は、地震が起こるごとに、計算プログラムの修正を行っており、確実に精度は高まってきています。最近の地震で検証した結果、37%の地域で震度はピタリ一致し、全体の83%は震度1以内に収まったとしています。

 緊急地震速報の実用化までの経緯を少し紐解いていきます。1976年に東海地震説が唱えられたのを機に、揺れと大津波に備える方策として、気象庁気象研究所で1980年代前半に研究が始まりました。そして正式な検討会ができたのが1992年です。鉄道総合技術研究所や防災科学技術研究所などの研究者とも連携し、阪神大震災や鳥取県西部地震など35の地震の波形を徹底分析し、予測精度を高めて、高速通信網や地震計の整備、コンピューターの処理能力向上で、実用化の目処が立った流れです。

 それでは、東海地震が発生した場合、どのくらい前に緊急地震速報が流れるのかみていきます。東海地震が沖合いで発生した場合、静岡市に激しい揺れが来る10秒前、東京が強い揺れに襲われる40秒前に情報を出せると試算しています。気象庁は、「短ければ数秒なので身近な安全な場所で揺れに備えてほしい」と言っています。しかし、緊急地震速報のシステムにも限界はあります。直下型地震の場合、震源に近い場所では、P波とS波のタイムラグがほとんどなく、速報が間に合いません。具体的には、震源が内陸の深さ10キロ以内という浅い地震では、震央から半径約25キロの範囲内では速報が出る前に来てしまうそうです。

 数秒から数十秒というわずかの時間に、どう行動するかによって生死が分かれます。数秒から数十秒という時間は、何もしなければ、あっという間に過ぎてしまいますし、また、何の備えもなければ、あたふたしているうちに地震が発生してしまいます。常日頃から緊急地震速報を受けた際にどのように行動するかシミュレーションしておくことが大切です。それも、いつどこで地震が発生するかわかりませんので、自宅で受けた時、会社で受けた時、または移動中や外出先で受けた時など、それぞれ、どのように行動するかシミュレーションしていく必要があります。そうでないと、いざという時に足がすくんでしまって動けないと思います。

 緊急地震速報を受けてのどのように動いたかのアンケートを見ていきますと、2007年7月の中越沖地震で緊急地震速報の先行提供を受けていた長野県上田市の自治体住民の半数近くは、緊急地震速報を受けて「何もしなかった」と回答しています。

 少し詳しく見ていきますと、長野県上田市は約2年前に緊急地震速報を先行導入しており、実際に大地震で提供を受けたのは中越沖地震が初めてでした。住民調査によると、揺れの到来を伝える速報を有線放送で聞いた89人のうち、40人(45%)が「何もしなかった」と回答し、「(机の下に隠れるなど)避難行動を取った」が22%、「身構えた」が29%となっています。

 気象庁が2007年9月に約2千人を対象に行った調査では、自宅で速報を受けた際の正しい対応を尋ねた質問で全体の38%が「まず火を消す」と誤回答しています。正解の「頭を保護し、机の下に隠れる」は全体の59%にとどまっています。

 最後に緊急地震速報に関する旬な情報を記載いたします。成田空港と中部国際空港は今春(2008年春)から地震の大きな揺れが来る前に震度などを伝える気象庁の緊急地震速報を導入します。旅客ターミナルビルなどを中心に館内放送で利用者に伝え、外国人向けに英語でも発信します。羽田など国内6空港はすでに航空管制に緊急地震速報を活用していますが、旅客ターミナルなど一般向けに伝達するのは初めてです。

 中部国際空港は、2008年4月から原則震度5弱以上、成田空港でも2008年5月までに震度4以上の情報をターミナルビルで放送します。危険物を扱う貨物地区や燃料備蓄地区などでも速報を防災に活用する方針です。

 中部国際空港は速報を日本語で2回流した後、英語で1回流します。成田空港では、英語以外の速報方法についても検討しています。気象庁は「地震速報を英語で流している事例は聞いたことがなく、おそらく初めてのケース」と話しています。

 また、名古屋市は今年度(平成20年度)から緊急地震速報などの自然災害に関する情報や有事情報を、消防庁の全国瞬時警報システム(J-ALERT)を使って市内の区役所や学校、公園などに設置された防災無線(177箇所)で瞬時に伝えるシステムを運用し始めました。名古屋市はこれまで、緊急地震速報を市民に伝えていませんでした。これからは震源地付近で最大震度が5弱以上で、愛知県西部で震度4以上が予想される場合、スピーカーからアナウンスされます。

 あと、地震関連の旬な話題として、東京を襲う「首都直下地震の直後、約1252万人が自宅を目指して歩き始め、うち約201万人が満員電車並みの混雑に3時間以上巻き込まれる」という、初めてのシミュレーション(模擬実験)結果を、中央防災会議が2008年4月2日に発表しました。ただし、歩き始める時間を遅らせたり、混雑状況を広報したりといった対策で、混雑は大幅に解消できるとしています。

 今回のコラムでは、緊急地震速報をベースに紹介してきましたが、地震はいつやってくるかわかりません。そして、いくら緊急地震速報が整備されて機能したとしても、数秒前から数十秒前程度であり、あたふたしていれば、何もしないうちに地震が発生して、命を落としかねません。せっかくの緊急地震速報というシステムを活用できるかどうか、自分の命が助かるかどうかは我々使う側にかかっています。自宅にいる時、通勤途中などいろいろな場面を設定して、緊急地震速報が受けた時にどう行動するかシミュレーションしておく必要があります。ほんの1秒なり0.1秒が生死を分ける場合があるだけに、自分の身は自分で守るという心構えで常日頃から皆さんも考えられてはいかがでしょうか。

 その他、地震についての必要最低限の備え(知識)については、「地震一口メモ」に載せていますので、一度ご覧いただき参考になさって下さればと思います。また、以前に、ある市の地域防災計画策定(地震対策編・一般対策編)に携わったことがあり、防災の日(関東大震災の起こった日)、阪神大震災の起こった日近くに、防災にちなんだコラムを今回同様に載せております。地震防災に関するコラムは、検索コーナー・テーマ別から見ることができますので、併せてご覧下さいませ。

By Nagura

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