生涯学習について考える

 記:2006.7.10

 「生涯学習」という言葉を聞かれたことがあると思いますが、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。何となくわかっ生涯学習イメージているようで、漠然としているのではないでしょうか。私自身もまさに「生涯学習」という言葉はよく聞きますが、わかりやすく説明しようとすると難しいものです。「生涯学習」をあらためて考えるきっかけになったのは、自分の住んでいる市(行政)の生涯学習懇話会の委員に今年度(2006年度)選ばれたことです。

 生涯学習懇話会は、生涯学習推進計画の推進において、市民からの意見を取り入れ施策に反映できるようにすることを目的としています。この生涯学習懇話会の委員は、仕事の依頼ではなく、市民参加のいわゆるボランティアです。仕事でない分、互いに利害関係もないので、自由に言いたいことが言えますが、これまで2回開催されましたが、「生涯学習」という意味合いが広く、踏み込めば踏み込むほど奥深さを実感しています。

 生涯学習懇話会で配られた資料の生涯学習とは何かの説明文を少し長いですが、まず記載してみます。「生涯学習は、一人ひとりが自らの生活の向上や自己の充実を目指し、各々の状況に適した手段・方法により、自発的に行うものです」「学校や社会の中で意図的、組織的な学習活動として行われるだけでなく、スポーツ、趣味、レクリエーション、ボランティアなど生涯にわたる幅広い学習機会の場で行われるものです」「また、国の生涯学習審議会答申では、生涯学習社会とは“人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択し、学ぶことができ、その成果が適切に評価される社会”と定義されています」

 上記の生涯学習の説明で皆さんお分かり頂けたでしょうか。生活全般にかかわり、学習の幅も広く、生涯にかかわるということでなかなか捉え所が難しいと感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。言いたいことはすごく分かるのですが、だから何なのですかと問いたくなるような説明文です。取り組みも多種多様で、それだけ施策をつくっていくにあたっても難しいなあと実感した次第です。また、自発的に行うものだけに、どこまで行政が踏み込んで、どのような形でサービスを提供していくか、市民の生活を豊かにしていくかという難しい面もあります。

 生涯学習に力を入れているというかこれからの方向性を模索しているのは、今回の行政だけでなく、大学、専門学校などの学校機関、民間のカルチャースクールなども考えています。その背景には、団塊世代の退職が始まることやニートの問題などありますし、大学に限れば、少子化で18歳人口が減って、既存の学生だけでは大学そのものが成り立たなくなっており、社会人や定年退職してくる団塊の世代を視野に入れていることなどがあります。形式としては、既存の対面式の学習だけでなく、ブロードバンドが普及して、ネットで学ぶeラーニングも徐々に広がっています。通信制の大学や大学院も増えています。

 行政の生涯学習として一番身近なのは、公民館などで行われれる公民館講座と思います。今回の生涯学習懇話会のテーマとしても、公民館講座の方向性というのが挙がっています。私自身は、公民館講座に参加したことがないので、分からない面もありますが、民間のカルチャースクールとどう違うのか、そもそも自治体が行う生涯学習の意味合いは何なのかなど原点に返って考えていく必要があるのだろうと思った次第です。

 民間のカルチャースクールなどは、経営を成り立たせるための営利を考えていく必要があり、赤字になれば撤退していくのが通常ですが、やはり行政が取り組む生涯学習は、民間ではできない、収益を成り立たせるのは難しいけど、市民生活に必要不可欠というかなくてはならないものをやるべきだろうと漠然と思っています。そして、何もすべて自治体で行うのではなく、大学と行政が連携して生涯学習センターを運営しているところもあります。行政、大学、民間がうまく連携して、互いの長所を生かした適材適所の生涯学習の仕組みづくりも必要になってくるのだろうと思います。

 行政と大学の連携という視点では、生涯学習にとって、公民館というのは非常に重要な施設ということで、その公民館の活性化のために、生涯学習を専門とする先生のゼミ学生が直接参画していこうと地域生涯学習プロジェクトを立ち上げている大学があります。具体的には、生涯学習に関する地域調査や研究、そして実際に生涯学習講座を学生が参画して行政の方々と共に企画し、運営にも関わっています。

 公民館と大学がタイアップして、それぞれの地域のオリジナリティーを生かしながら、その地域の教育資源を発掘したり、有効活用したりする取り組みの起点になればと取り組みが進められています。また、大学そのものがもっている教育資源を社会、地域に還元していく場としての役割もあります。大学と地域を結ぶ場とも言えます。今、全国で100を超える大学が生涯学習センターを設置していますが、地域活動を通して地域との下地ができて、本当の意味で連携が進んでいるところは、まだまだ少ないようです。その背景には、行政も大学もなかなかフットワーク軽く動きにくい体制がまだまだ残っていることが挙げられます。

 行政と大学の連携は、公民館の活性化だけでなく、参加する学生たちの学びの場にもなっています。この地域生涯学習プロジェクトに参加する学生のほとんどが社会教育に関わる社会教育主事の資格取得を目指しており、将来的に社会教育の現場とか、市町村、教育委員会などで働きたいという希望をもった学生たちです。実践として行政や施設の方々と学生が共同で生涯学習講座を運営していくことで、社会性をしっかり身につけていくことができます。また、地域の方々が生涯学習を通して、ひたむきに学んでいる姿から、学生の本分としての学ぶことの大切さの再認識にもつながっています。

 また、公民館講座という枠を超えて、大学に入り直して、本格的に学問の道を目指すシニアも増えています。余裕のある時間を生かし経済学や文学、歴史など興味のあるテーマをじっくり学んでいるようです。仕事や育児で思うように勉強時間が取れなかった現役時代の生活から一転、専門家の授業や原書から生き生きと学んでいるようです。若い学生に交じって勉強するシニア層の動きが加速すれば、停滞する日本の大学教育に風穴を開けることにつながっていくように思います。

 今回のコラムでは、生涯学習について考えてきましたが、生涯学習は多種多様でひとりひとりで捉え方が違ってくると思います。市民ひとりひとりの生活の質を豊かにするキャリアプランであったり、日々の生活を充実していくためのものであったり、行政としては、押し付けでなく、さりげないサポートにつながる環境づくりが必要なのだろうと思います。ボランティアの育成から起業支援まで、本当に幅広いと思います。もちろん、今回、取り上げた行政と大学や民間との連携も必要になってくると思います。互いに連携することで、生涯学習ということをきっかけに、行政、大学の改革にもつながっていくのではないかと思います。

 個人的には、まちづくりという視点で、行政のいわゆる生涯学習課という部署の役割は非常に重要と考えています。しかし、現実には、まちづくりという視点では、多くの都道府県・市町村の生涯学習課が蚊帳の外におかれたような感じで、行政特有の縦割りもありますが、連携ができていないような感じがいたします。その中で、以前に、静岡県の掛川市長の生涯学習をまちづくりの中心に据えた話を聞いて感心したものです。“生涯学習”という言葉そのものをもっとわかりやすく親しみやすい言葉に変えてもどうかという気もしますが、これから“生涯学習”がまちづくりを考えていく上で重要なキーワードになってくるだろうと思います。

By Nagura

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