改正された新会社法について考える

 記:2006.6.8

 2006年5月1日に50年ぶりとも言われる会社法制の大幅な改正に伴い、新“会社法”が施行されました。新聞や新会社法イメージテレビで取り上げられたり、本屋に行くと、会社法のコーナーが設けられているところもあり、ご存知の方も多いのではないでしょうか。特に、今回の改正のポイントとして「有限会社が廃止」されることもあり、有限会社の方は興味津々というか、どうなるのかと不安だったのではないでしょうか。

 当方自身も有限会社を経営しているだけに、新会社法の書籍を5冊と特集で載っている雑誌を数冊買い込んで研究しました。そのあたりで得た情報などを、有限会社としての中小企業の当方の立場から今回のコラムで紹介していきたいと思います。大企業にとっても大きく変わった点が多々ありますが、あくまで中小企業向けという感じでお読み頂けたらと思います。同じ境遇で悩まれていらっしゃる方もいるかも知れませんが、当方自身も有限会社のまま残すか、株式会社に移行するかを考えている最中です。

 私自身は、サラリーマンから独立して、かれこれ10年経ちますが、有限会社で設立して、数年後には、株式会社に移行しようという計画・夢を描いていました。しかし、なかなか思うように軌道に乗らずに、有限会社のまま現在に至っていますが、この改正により、あとから説明しますが、資本金をそのままで簡単に有限会社から株式会社に移行できます。今では、有限会社であろうと株式会社であろうと、独立した当時のこだわりはなくなってきていますが、今後の自分の会社の展望をしっかり見据えて、株式会社に移行するかどうか考えています。

 今回会社法が改正されましたが、少し、私が独立した当時(10年前)の状況を説明します。当時は、株式会社を設立するのに、資本金が1,000万円以上、有限会社を設立するのに、資本金が300万円以上が必要でした。さすがに、当時、1,000万円というお金はなく、まったく別世界に飛び込むということもあり、成功する保障もなく、他人に迷惑をかけたくもなく(海のものと山のものともわからないところの投資する人もいませんでしたが)、すべて自己資金で始めることができる範囲の有限会社を選択した次第です。そして、3年後には、資本金を1,000万円に増資して、有限会社から株式会社にしようという計画でしたが、思い描くようには売り上げが伸びていきませんでした。

 1円起業という言葉を聞いたことがあると思いますが、その1円起業も3年ほど前(平成15年2月)の特例によるもので、私が会社をつくった頃はありませんでした。ちなみに、1円起業は、最低資本金規制特例制度というもので、資本金1円でも会社を設立でき、株式会社なら設立後5年以内に資本金を1,000万円にするというものでした。しかし、この1円起業の特例も、新会社法が施行され、それに伴い最低資本金の規制がなくなり、廃止されました。これからは、何の規制もなく1円でも堂々と株式会社をつくることができるようになったわけです。会社を継続的に経営していくためには、それなりの資本は必要ですので、資本金1円で株式会社がつくれるといっても元手資金はしっかり考える必要があると言えます。

 ここで改正された会社法の基本を抑えておきたいと思います。従来の「商法第二編(合名会社、合資会社、株式会社について記載)」「商法特例法」「有限会社法」の3法に代わって、2006年5月から新しい「会社法」が施行されました。「有限会社法」は、廃止され、有限会社は株式会社に統合されました。合名会社、合資会社はそのまま存在し、新たに合同会社(LLC)という新しい会社形態が創設されました。合同会社については後ほど説明します。

 新会社法の主なポイントとして、既に紹介している有限会社が廃止された点、資本金の制限がなくなった点、合同会社という会社形態が創設された点以外では下記のようなものがあります。「取締役が一人でいい」「中小企業の統治強化として会計士や税理士が財務諸表作りに加わる会計参与の導入」「いつでも配当が可能に」「書面・ネット決議も可能に」「内部統制システムを取締役会が整備」「総会手続きの簡略化」など経済社会の近年の変化に目配りしつつ、会社に関する基本を整え、会社運営の自由度を高めています。

 それでは、具体的に有限会社法が廃止されて有限会社はどうなるのかを見ていきます。日本の形態別の会社数を見ますと、有限会社が約189万社、株式会社が約115万社、合名・合資会社が約10万社となっており、有限会社が全体の約60%を占めています。新会社法が施行され、この約189万社の有限会社がどう動くのかが注目されています。私の会社もこの189万社のなかに入っています。

 新会社法の施行により、新規には有限会社を設立することができなくなりました。既存の有限会社はどうなるかというと、大きく二つの選択肢があります。一つは株式会社に移行する方法、そしてもう一つは、既存のままで「特例有限会社」として継続していく方法です。ですから、現在の有限会社のまま何もしなければ、そのまま「特例有限会社」となります。「特例有限会社」は、名前は「有限会社」でも、法制上は株式会社であり、なんとも複雑な関係になります。「特例有限会社」は、新会社法への移行における経過措置で、今のところ特に期限は設けられておりません。ですから、当方の有限会社も正確には「特例有限会社」となっています。

 次に、新会社法によって導入された新たな組織の「合同会社(LLC)」について紹介していきます。合同会社は、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルにした会社形態で、「出資した額までの責任しか負わなくてよい」「組織の内部ルールを自由に決められる」「取締役などの設置も不要」などの特徴があります。出資と経営がひとつになったいわゆる“人的会社”には、既に合名会社と合資会社が存在しますが、どちらも会社の債務に対して無限責任を負う無限責任社員の存在が不可欠でした。それだけ経営者にはリスクの不安もありました。その点、今回できた合同会社は、出資額を限度とする有限責任となり、リスクは大幅に軽減されたと言えます。

 LLCと似たような言葉でLLPというのを聞いたことがないでしょうか。LLPは有限責任事業組合というもので、一足先に昨年(2005年)8月にスタートしたものです。LLCとLLPの大きな違いは、法人か組合かという点です。LLCが法人で、LLPが組合組織です。法人は法人に対して税金(法人税)がかかりますが、組合は組織ではなく、構成員に対して、税金が課されます。LLPは、創業を促し、企業同士のジョイント・ベンチャーや専門的な能力を持つ人材の共同事業を振興するために、民法組合の特例として設けた制度です。これに、さらにLLCが今回加わった形です。

 LLPかLLCかという選択をする時の基準として、パートナーシップを重視し、それぞれが対等な立場で事業を展開するならばLLPが向いているようです。さらに、それぞれが対等な立場でみんなが集まって一つのことをやろうという場合は、法人のLLCが向いているということです。NPO(非営利組織)という組織が生まれた時は、最初はなかなかわかりにくかったですが、今ではすっかり定着してきており、数年後には、LLPやLLCもメジャーになっているかも知れません。

 今回のコラムでは、2006年5月に施行されたばかりの新会社法について見てきました。当方自身、有限会社を株式会社に移行するか思案しています。資本金や組織など大きな変更がなくても移行できますが、単純に有限会社から株式会社に変わるだけといっても社名が変わります。それに伴って、変更の手続きの費用そして、こまごまとした会社の印鑑、封筒、名刺など作り直しの費用も必要となってきます。あと有限会社になかった決算公告も必要となり、そのコストもかかります。一番の決め手は、今後の展望が肝心ですので、次へのさらなるステップ(飛躍)を念頭において今、前向きに考えています。

 話し変わって前回のコラムでは、起業について考察しましたが、これから起業を目指す方にとっては、組織形態の選択肢も増えて、何といっても株式会社の資本金の制限がなくなり、会社そのものがつくりやすくなり、追い風と言えるのではないでしょうか。これから起業を目指されていらっしゃる方は、いろいろと検討されてご自身の合った形態で歩まれることをお祈り申し上げます。

By Nagura

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