ユニバーサルデザインについて考察する

記:2006.3.27

 今年初め(2006年1月)に発覚した東横イン偽装工事問題もあり、バリアフリー、ユニバーサルデザインなどがクユニバーサルデザインローズアップされています。バリアフリーとユニバーサルデザインの違いを皆さんご存知でしょうか。また、関連法規として、ハートビル法、交通バリアフリー法、身体障害者補助犬法、福祉のまちづくり条例などもご存知でしょうか。今回のコラムでは、上記の内容を紐解きながら、ユニバーサルデザインについて考えていきます。

 まず、バリアフリーとユニバーサルデザインの概念的な違いを紹介していきます。バリアフリーとは、名前の通り「バリア」を「フリー」にするということです。バリアとは、「障害」「障壁」「妨げ」などの意味であり、フリーとは「自由な」「開放された」「免れた」という意味で、バリアフリーは、障害から除かれた状態を言います。簡単な例を挙げますと、車いすなどが通りやすいように段差をなくすとか、お年寄りがつまづかないように、段差をなくしたりすることなどがあります。

 バリアフリーは、障害のある人が社会生活していく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味で、もともと住宅建築用語として登場しました。上記で説明しましたように、段差等の物理的障壁の除去を指すことが多いですが、より広く障害をもった方の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なすべての障壁の除去という意味でも用いられています。

 ユニバーサルデザインは、バリアフリーが障害によりもたらされるバリア(障壁)に対処する考え方に対し、あらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方です。もう一度整理しますと、誰でも使いやすい形に最初から設計することがユニバーサルデザインで、すでにつくられた物から障壁を取り除いて誰でも使いやすい状態に近づけることがバリアフリーです。

 ユニバーサルデザインは、バリアフリーに代わる考え方として、1990年代以降、国内でも急速に普及しつつあります。ユニバーサルデザインは、1980年代に米国ノースカロライナ大学ユニバーサルデザインセンター所長のロナルド・メイス氏によって提唱されたのが始まりと言われています。

 基本となるユニバーサルデザインの7原則を紹介しますと「誰でも公平に使用(利用)できること」「使用する上での柔軟性が高いこと」「シンプルでわかりやすいこと」「必要な情報がわかりやすいこと」「ミスや間違い、危険に対応できること」「身体的な負担が少ないこと」「使用(利用)しやすい大きさや空間になっていること」です。

 今回のユニバーサルデザイン及びバリアフリーの関連事項として、6年ほど前の2000年7月にコラム「バリアフリーについて考える」を載せておりますので、併せてご覧頂けましたらと思います。また、バリアフリーなまちづくりに向けての事例として、コラム「街中宝(バリア)さがし“車イス体験・百歳体験”を取材して」コラム「“人にやさしい街づくり連続講座”を受講して」を載せておりますので、併せてご覧頂けましたらと思います。

 関連するキーワードとして、ノーマライゼーションという言葉がありますが、ご存知でしょうか。ノーマライゼーションとは、障害をもった方も健常者も普通の人間であると理解することであり、すべての人がともに生きるという考え方です。障害を持つ方など社会的不利を負う人々が社会で特別な扱いを受けることなく、障害を持たない勤労者や生活者とともに変わることなく働き、社会生活を営んでいけることこそ正常と誰もが考え、行動する状況を指します。つまり、あらゆる障害をもつ方にノーマル(普通)な生活を保障することです。ノーマライゼーションに関しては、コラム「元気な高齢者や障害者が“街”に繰り出す!」で載せておりますので、併せてご覧頂けましたらと思います。

 現在、バリアフリーからユニバーサルデザインへという流れにありますが、ユニバーサルデザインの出現によって、すべてのバリアフリーデザインがなくなったわけではなく、ユニバーサルデザインの一部として機能しています。駅や公共施設など街の中にある黄色の点字ブロックなどは、バリアフリーデザインの考え方によるものです。視覚障害をもった方には必要不可欠で便利なものであっても、車いすやお年寄りの方には、その段差が使いづらいものになっているなど使い勝手の両面があります。

 次に、冒頭で述べました関連法規をみていきます。ハートビル法(正式名称:高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)は、1994年に成立し、建物の通路の幅や段差など、バリアフリー化の基準を政令で定め、一定の建物に、基準に沿った改装などの努力を定めたものです。その後、2002年に改正され、バリアフリー化の努力を求める建物を拡大したほか、デパートなど不特定多数が利用する建物や老人ホームなど高齢者や身体障害者が利用する建物のうち、政令で定める規模(2000平方メートル以上)の建物、および地方自治体が条例で定める建物のバリアフリー化が義務づけられました。

 2000平方メートル以上という規模は、地方公共団体の条例で引き下げは可能です。冒頭で示しました「福祉のまちづくり条例」は、地方公共団体が策定している一つの条例で、県レベルで作られていることが多く、福祉のまちづくりを推進するため、県、事業者、および県民の責務を明らかにするとともに、県の基本方針を定め、これに基づく施策を総合的に定めたものです。東横イン偽装工事問題の際にお気付きになった方もあると思いますが、国のハートビル法はクリアしていても、地方公共団体の条例に違反している例も多々見られました。

 交通バリアフリー法(正式名称:高齢者・身体障害者移動円滑法)は、2000年に施行され、ハートビル法では、建物を規定し、さらに、交通バリアフリー法では、そこにいく移動を確保するものとなっています。ハートビル法と交通バリアフリー法は、今後、一本化する方向で進んでいます。両方を併せて、広くユニバーサルデザインという概念からの法体制にしていく方向性です。交通バリアフリー法は、公共交通事業者等に、高齢者・身体障害者に対し、公共交通機関を利用して移動するために必要な情報を提供するとともに、職員に対し、移動円滑化を図るために必要な教育訓練を行うように努めなければならないとしています。さらに、注目したいのは、国民の義務として、協力に努めなければならないと謳っています。要するに、駅員だけでなく、我々ひとりひとりが協力してやっていくというものです。

 あと法規関係では「身体障害者補助犬法」が2002年に施行されました。身体障害者の自立や社会参加を支援するのが目的で、2002年10月から公共施設や公共交通機関、2003年10月から飲食店、デパート、スーパー、ホテルなど民間施設においても、身体障害者補助犬の受け入れが義務付けられました。補助犬同伴を拒否できなくなっています。身体障害者補助犬に種類があるのは、ご存知でしょうか。盲導犬はご存知の方が多いと思いますが、介助犬、聴導犬もあります。介助犬、聴導犬は、数がまだまだ少ない状況です。

 冒頭で、東横イン偽装工事問題がバリアフリー、ユニバーサルデザインをクローズアップさせるきっかけになったと申しましたが、世論を騒がせた一番の問題だったのは、障害をもった方の施設整備は、お金にならないとかお客さんとして捉えていなかったところです。最後に、障害をもった方や高齢者を顧客という視点で捉えていく重要性を述べていきます。流通業など商売人としては、福祉という視点とともに、それを如何に販促(売り上げ)につなげていくかという視点が重要になってきますし、そのことが継続的なユニバーサルデザインへの取り組みにもなっていきます。

 企業の本格的な取り組みをみていきますと、TOTOが20億円かけて「ユニバーサルデザイン研究所」をつくりました。そこでは、実際に台所の使用状況を再現して、人間の動作を赤外線カメラで分析し、製品づくり(商品開発)に生かしています。また、トヨタ自動車はじめ自動車業界も本格的にコスト削減を図って福祉車両を作りはじめています。その模様は、コラム「東京モーターショー2005を見学して“ものづくり”を考える」の中で触れていますので併せてご覧頂けましたらと思います。

 障害をもった方や高齢者の顧客層としてのマーケット規模を少し見ていきますと、2004年10月1日時点の高齢化(65歳以上)率は、19.5%で、90歳以上の高齢者も100万人を超えています。2015年には26.0%、2050年には35.7%に達すると予測されています。障害をもった方(2003年時点)は、約575万人おり、国民の5%ほどが何らかの障害を有している状況です。約575万人の内訳は、身体障害者が約325万人、知的障害者が約46万人、精神障害者が約204万人となっています。高齢者、障害をもった方の両方に重複されている方を差し引いても、日本の人口の20数%のマーケットが存在します。商売、商売という視点だけでは、いけませんが、中心市街地の衰退が進んだ商店街など経営がままならない状況にあるのも事実で、売り上げと誰もが暮らしやすい使いやすいユニバーサルデザインとのバランス感覚が求められていると言えます。

 最後に、もっと大切な障害をもった方や高齢者へのおもてなし・接客に触れて終わりにしたいと思います。商売の基本として、障害をもった方や高齢者の立場にたった接客が求められています。それに特化した資格として、鉄道会社、デパート、行政など多くの団体が取得している「サービス介助士(ケアフィッター)」があります。当方は、障害をもった方、高齢者にやさしい商店街づくりをしていきたいという思いから、商店街の方々に勧めるにあたって、まず自分自身が取得しました。

 サービス介助士(ケアフィッター)については、コラム「サービス介助士(ケアフィッター)の資格を受験して」で紹介しておりますので、併せてご覧頂けましたらと思います。東横イン偽装工事問題が発端となって、クローズアップされ、企業のモラルが問われましたが、それだけで終わりにすることなく、企業も努力していく必要がありますが、交通バリアフリー法の中ではしっかり国民の義務を謳っていますので、我々ひとりひとりが誰もが暮らしやすい、使いやすいことに対して協力していく必要があります。

By Nagura

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