“防災の日”を迎えて
企業・商業施設の防災について考える

記:2005.9.1

 先日、お盆休みの東北地方を強い地震(2005年8月16日、マグニチュード7.2、最大震度宮城県南部で6弱)が襲いました防災イメージ。本当に地震はいつやってくるかわかりません。日本列島周辺には、「ユーラシアプレート」「北米プレート」「太平洋プレート」「フィリピンプレート」の4つのプレートが接し合い、互いにぶつかりあっています。世界中を見渡しても、これだけプレートが入り組んでいるところはなく、それだけに地震が発生しやすく、地震多発国の宿命を負っていると言えます。それだけに、我々は、日頃からの地震への備えが必要と言えます。

 また、本日9月1日は、「防災の日」です。この日は80年以上も前の1923年9月1日に関東大震災が起きた日です。関東大震災(マグニチュード7.9)は、東京、横浜を中心に死者・行方不明者あわせて14万人以上の被害を出しました。

 2005年7月26日に開かれた国の中央防災会議では、新潟や福井などを襲った昨年(2004年)の集中豪雨や新潟県中越地震などを踏まえ、防災基本計画を10年ぶりに大幅修正されました。一人ひとりの防災意識を高めるため、「国民運動」を展開する必要があるという認識で一致して盛り込んでいます。東海地震や首都直下地震などが迫っているとされる中で、行政、企業、市民が一体とならなければ、人的・経済被害は減らせないとの考えからです。地域や企業、自治体によって差がある防災意識や取り組みの底上げを狙っています。防災基本計画が見直されたのを受けて内閣府は防災への国民運動をどう盛り上げていくかを年度内(2005年度)にまとめる模様です。

 また、昨年(2004年)の集中豪雨で多くの高齢者が逃げ遅れ被災したことから、早めに避難を開始するするよう求める避難準備情報を出したり、避難に時間がかかる高齢者ら「要援護者」を支援するよう防災基本計画に明記しています。さらに、新潟県中越地震で車中での避難生活中に死亡するケースが相次いだことなどから、旅館を借り上げたりして多様な避難場所を確保する必要性についても基本計画に盛り込んでいます。

 その他、防災基本計画の見直しで盛り込まれた項目として「減災目標などを示した地震防災戦略策定」「企業の事業継続計画(BCP)の策定促進」「津波避難ビルの整備・指定」「洪水ハザードマップを通じた避難場所の周知徹底」「災害派遣医療チームの活用推進」「災害情報などを瞬時に伝達するシステムの構築」など挙げられます。

 これまで、毎年、防災の日(関東大震災)の9月と阪神大震災のあった1月に防災に関するコラムを書いておりますが、今回は、企業・商業施設の防災に焦点をあてて見ていきます。上記の防災基本計画のなかでも、企業の事業継続計画(BCP)の策定促進や行政、企業、市民が一体とならなければ、人的・経済被害は減らせないと延べていることからも企業・商業施設などの取り組みが重要視されています。

 防災基本計画の見直しのなかで、企業の事業継続計画(BCP)の策定促進が掲げられているだけに、各企業、商業施設の防災対策はまだまだ道半ばで、現場での試行錯誤が続いているのが現状です。消防法は百貨店や事業場などの施設に消防計画の作成を求め、災害時の避難誘導の手順などをあらかじめ決めておくように求められています。しかし、いつ避難誘導をするかを定めた基準はなく、決めておく必要もありません。消防庁の専門官は、「同じ地震でも建物や地盤によって揺れ方が違う。外の方が落下物で危険なこともある。基準をつくることは難しい」と述べています。それだけ、予測が難しく、こういう場合はこうするという一概にパターン化できない面もあり、その時その時の臨機応変な対応も要求されます。

 名古屋のある百貨店は、東海地震の警戒宣言が発令された場合は、すぐに避難誘導をすることにしていますが、一般の地震の場合は、被害状況を確認したうえで判断するとしています。また、福岡のある百貨店は、店内に地震計を設置して、震度によって自動的に館内放送が流れるようにしています。震度5なら「従業員の指示に従って下さい」と待機を求め、震度6だと「安全な場所に誘導いたします」と即座に避難開始を告げます。

 東北の電力会社では、復旧作業に向かう車両すべてにナビゲーションシステムを搭載しています。停電した地域の電柱の場所や電線のつながり方、他の作業車両の位置などが常に把握できるため、効率的な作業につながっています。従来は無線連絡だったため、作業が混乱したり、車両が道に迷うこともあったそうですが、2004年10月の新潟中越地震では、復旧完了箇所に別の作業車が後から到着するような無駄がなくなり、時間短縮につながったそうです。

 上記のように各企業、各商業施設は試行錯誤しながら進めている状況が伺えます。それでは、今回の防災基本計画の見直しのなかで、災害に強い企業への指針・ガイドラインとして示された部分を紹介していきます。一企業の業務停止でも世界的に悪影響を及ぼしかねないこともあるほか、被災地の雇用や物資の供給網維持のうえでも災害に強い企業が求められています。どんな災害・事故に遭っても業務を継続できる準備は必要ですが、まずは主要な施設に影響を及ぼす可能性のある地震を想定し、順次、検討対象を広げるよう勧めています。

 企業が事業継続計画を策定するに当たっては、業務に必要な製品・サービスの供給が受けられなくなったとき、生産量の減少、利益損失、顧客離れ、資金繰りの悪化などでどれくらいの影響がでるかを想定し、どの程度の期間なら業務停止に耐えられるか検討するよう求めています。すべての業務の継続は難しいため、人命にかかわる、利益が多い、供給先に大きな影響を与えるなどの視点で優先順位を判断し、重要な業務は復旧までの目標時間を設定するよう求めています。

 短期間で業務を再開するためには、指揮命令系統をあらかじめ定めたり、情報システムのバックアップを用意しておくことなど定めています。しかし、災害時にはお客さんや従業員の安全確保、二次災害防止なども重要として、事業継続を至上命題とするのではなく、地域住民の援助やインフラの早期復旧への協力なども併せて検討するようくぎを刺しています。また、取り組みの進捗状況を点検するため、約70項目のチェックリストを作成しており、経営者自らに現状把握を求めています。

 今回のコラムでは、企業の試行錯誤の取り組みと国がまとめた企業防災への指針・ガイドラインを紹介いたしました。企業、商業施設の防災への取り組みは、個々の企業でそれぞれ危機管理はされていると思いますが、国が指針を示したことで、全体的な取り組みがようやく始まったと言えます。しかし、いくら企業なり商業施設等の防災が進んだとしても、基本はひとりひとりの“自分の命は自分で守る”という心構えが必要です。企業の防災の指針が出され、ようやく本格的な「行政」と「企業」と「市民」が一体となった防災の取り組みが進んでいく上で、市民という立場から我々ひとりひとりの防災への備えや知識・知恵が求められています。

 地震についての必要最低限の備え(知識)については、「地震一口メモ」に載せていますので、一度ご覧いただき参考になさって下さればと思います。また、以前に、ある市の地域防災計画策定(地震対策編・一般対策編)に携わったことがあり、年2回、防災の日(関東大震災の起こった日)、阪神大震災の起こった日近くに、防災にちなんだコラムを今回同様に載せております。地震防災に関するコラムは、検索コーナー・テーマ別から見ることができますので、併せてご覧下さいませ。

By Nagura

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