阪神・淡路大震災から10年目を迎えて、
防災について考察する

記:2005.1.23

 6,433人が犠牲となった阪神・淡路大震災から、2005年1月17日で10年目を迎えました。昨年(2004年)は、年末にその年を表す言葉にも「災」が挙げられたように、台風、地震などにより自然災害が多かった年でした。新潟県中越地震、そして、海外でもスマトラ沖大地震・津波などが発生し、大きな被害をもたらし、私たちひとりひとりが、防災について考えさせられる出来事が多くありました。

 新潟県中越地震、スマトラ沖大地震・津波は、まだまだ復興中の最中ではありますが、そのような中、国連防災世界会議が神戸市で2005年1月18日〜22日まで開催されました。国連防災世界会議は、日本が提案した国連決議により、国連の主催で行われたもので、国連の全加盟国191カ国、国際機関、NGO(非政府組織)等が参加対象です。国連では、1990年代を「国際防災の10年」と定め、1994年に横浜で第1回目の国連防災世界会議が開催され、今回が第2回目となります。(神戸での第2回国連防災世界会議では、168カ国・地域と、78の国際機関、国内外からの161のNGOが参加しました)

 神戸市での今回の第2回国連防災世界会議では、防災に関する今後の10年間の指針といえる「兵庫行動枠組」と努力を誓う「兵庫宣言」が採択されました。さらに、20万人を超える犠牲者を出したスマトラ沖大地震・津波に関して、防災が世界的な緊急課題であることが改めて認識され、インド洋の津波早期警戒システムを国連の調整の下でつくるとした声明もまとめられました。

 神戸宣言では、災害への対処を国際社会の最重要課題の一つとして位置づけ、「災害予防の文化が強化されなければならない」と呼び掛け、さらに、災害から国民の財産を守ることは国の第一義的な責任と明記しています。兵庫行動枠組では、3つの戦略目標として「開発における減災(災害被害の軽減)の観点を導入」「防災体制の整備」「緊急支援や復興の段階でリスク軽減手法の導入」を挙げています。

 兵庫行動枠組と兵庫宣言の内容をみますと、地震予知という観点から地震が起こった際に、如何に被害を最小限にとどめるのかという減災への流れとなっているのが伺えます。そして、ひとりひとりの防災力(防災への備え、知識、地域コミュニティの構築など)が問われています。地震予知に関して、数年前から賛否両論いろいろと議論されていますが、私自身は、減災を念頭においた上で、地震予知の地道な研究を継続的に推進していくことが必要と思っております。今回のインド洋の津波早期警戒システムにおいても日本の研究および技術的な果たす役割は大きく、地震予知に関しても世界における“地震列島・日本”の役割であり使命の一つであると考えています。

 それでは、阪神・淡路大震災から10年を迎えた神戸市の復興状況をみますと、神戸市の人口が昨年(2004年)11月に、震災前にようやく戻りました。しかし、神戸市全体では人口は戻りましたが、コミュニティという小さい地区エリアでみると、被害の大きかった長田区御菅東地区では、住民帰還率が10年経ってなお、50%を切っています。長田区全体でも、人口は震災前よりも2万5千人も少ないままです。

 災害復興公営住宅の入居者への調査(2004年11月下旬、神戸市など被災9市の24団地計500世帯を対象に朝日新聞が面接調査)をみると、震災から10年を経た現在の生活回復状況について、44.8%が「ほぼ戻った」、13.0%が「完全に戻った」と答えており、6割近くが復興宣言をした形となっています。しかし、「戻っていない」と回答された方も41.8%ありました。さらに、問題なのが、入居者のうち60歳以上が55.7%を占め、全体の58.4%が自分や家族の健康を一番の不安材料に挙げており、高齢化の進行が進んでいる点です。高齢化は、被災地に限らず、我が国全体の課題でもあり、直面している問題だけに、新たな枠組みのコミュニティづくり(助け合い・相互扶助)が望まれています。

 また、旬な話題として、企業という立場から国の企業防災策について紹介します。政府は、地震などの災害に対する企業の備えを評価する制度を導入します。企業が災害による業務の中断から早く復旧できるようにする事業継続計画(BCP)を広めるため、指針を今夏(2005年夏)までにまとめる予定です。防災に力を入れる企業が評価される仕組みをつくり、今後発生が予想される首都直下型や東海、東南海・南海などの大地震で経済活動への被害を小さくすることを目指しています。中央防災会議の「民間と市場の力を活かした防災力向上に関する専門調査会」2005年1月下旬に作業部会を設け、8月までに具体案をまとめる予定です。

 事業継続計画(BCP)とは、自然災害やテロなどによる企業活動の中断から早く復旧できるように備える計画です。各企業が優先して復旧する業務分野などを決め、原材料調達や輸送代替手段を盛り込んでいます。導入する評価制度は、「防災にどのくらいの費用をかけているか」「事業継続計画(BCP)を作っているか」「防災訓練を年に何回しているか」などの基準を設定し、それに基づいて防災態勢を企業自身や業界団体などが数段階に分けて「格付け」できるようにします。

 今回のコラムでは、直近の動きを中心に見てきましたが、阪神・淡路大震災をきっかけとして、個人パワーとも言えるボランティアが活躍して、ボランティア元年と言われました。また、阪神・淡路大震災をきっかけとして、国もそれまですべての災害を網羅していた地域防災計画を地震対策編と一般対策編の2本立てに改めました。阪神・淡路大震災をきっかけとして、ひとりひとりの防災意識、そして、わが国の防災体制が大きく変わったことは確かです。そして、次の10年に向けて神戸の国連防災世界会議では、国が国民の財産を災害から守るという責任を明確にし、さらに、国を超えた国際的というか地球規模の災害への対応の取り組みも認識されました。

 国や世界が協力して行う取り組みが国連防災世界会議で再認識され、いわゆる「公助」部分が整備されつつありますが、まずは、“自分の命は自分で守る”という「自助」が大切です。国連防災世界会議でも、災害予防の文化の強化が謳われています。スマトラ沖大地震・津波では、地震が起きたら津波が来るという認識が低かったことが被害を大きくしています。スマトラ沖大地震・津波においても、ある島では、波が引き始めたら津波が来るという昔からの言い伝えを守り、高台に避難して、被害が少なかったところもあります。それだけ、「自助」が大切です。「公助」、「自助」ときて、そして、最後に大切なのが「共助」です。共助は、助け合うということで、隣近所など日頃からのコミュニティづくりが大切です。地震に備えて、今から行動して頂きたいと思います。本当に地震はいつやってくるかわかりません。

 地震についての必要最低限の備え(知識)については、「地震一口メモ」に載せていますので、一度ご覧いただき参考になさって下さればと思います。また、以前に、ある市の地域防災計画策定(地震対策編・一般対策編)に携わったことがあり、年2回、防災の日(関東大震災の起こった日)、阪神大震災の起こった日近くに、防災にちなんだコラムを今回同様に載せております。地震防災に関するコラムは、検索コーナー・テーマ別から見ることができますので、併せてご覧下さいませ。

By Nagura

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