阪神・淡路大震災から9年目を迎えて、
防災について考察する

記:2004.2.1

 6433人が犠牲となった阪神・淡路大震災から、先月(1月)の17日で早いもので9年が経過しました。9年目を迎えた阪神・淡路大震災から9年2004年1月17日、被災地では地震発生時刻の午前5時46分を中心に、追悼行事や復興を願う催しが数多く行われました。

 9年前の1995年1月17日午前5時46分、私の住んでいる愛知県でも揺れが感じられ、目が覚めました。けっこう長く揺れがあったことを覚えております。その後、早朝のニュースで衝撃的な映像が飛び込んできて驚いた次第です。高速道路の高架橋が横倒しになり、新幹線、鉄道、道路が寸断され、周辺の木造家屋はほぼ全壊、三宮のビル群も途中階で崩落し、長田地区では火災が広がっている様子などの映像を、皆さんも記憶に残っていることと思います。

 皆さん方の地震への備えはいかがでしょうか。中でも、東海地震はいつ来てもおかしくない状態にあると言われています。そして、東南海地震、南海地震の発生確率もかなり高くなっています。さらに、この3つの地震が同時に発生するかも知れないと言われています。昨年(2003年)12月に東京都が「震災対策」をテーマにアンケート(東京都内に居住、通勤する成人男女500人を対象にインターネットを使って実施し、約97%の回答を得た)を行った結果をみると、9割を超す都民が阪神・淡路大震災のような大地震が起こるかもしれないという不安を感じながら、全体の約5割は食料などを備蓄せず、約6割は地元の防災訓練などに参加した経験がないという結果が出ています。

 今回のコラムは、このアンケート結果を念頭において防災について考えてみたいと思います。上記のアンケート結果から、地震への不安を持ちながらも、なかなか備えや地域連携ができていない現状が浮かび上がっています。さらに、不安に思っている具体的な被害の項目をみると、火災の発生が91.8%と最も多く、建物の倒壊(87.2%)、電気・ガスなどライフラインの途絶(86.0%)と続いています。

 これまでの防災関連のコラムでも書いておりますが、自分の命は自分で守るという心構えが必要であり、地震発生後、救助体制が整うまでの最低3日間は、個人レベルで各自が生き伸びるだけの水と食料を常に備えておくことが重要です。上記のアンケートで「建物の倒壊(87.2%)」が不安要因に挙がっていますが、阪神・淡路大震災における死者の約9割が「家屋、家具の倒壊による圧迫死と思われるもの」でした。すぐにできる室内の家具の固定をはじめ、家屋の耐震化を進めていく必要があります。また、救助された方のほとんどが、親族または近隣の地域の方々に助けられています。常日頃からの地域連携(地域コミュニティー)がいざという地震の際に発揮されます。それぞれの地域における地域防災力の強化が求められています。各地で自主防災組織が立ち上がり、その活動資金を自治体が補助しているところも多く、婦人消火隊ができるなど女性の力を生かす取り組みも進んでいます。本当にいつ起こるかわからない地震だけに、昼間、会社勤めで男性陣が少ない際の女性の力は大きいと言えます。

 上記のアンケートで、約6割の方が地元の防災訓練などに参加した経験がないと回答されているだけに、日頃の地域における連携の重要性を認識して頂きたいと思っております。神戸市消防局における阪神・淡路大震災時の救助活動のデータをみると、重いけがをするなどした人で、24時間以内に救助された場合の生存率は約8割(80.5%)ですが、「72時間以降」(2日目で28.5%、3日目で21.8%、4日目で5.9%、5日目で5.8%)で急激に下がっています。データより24時間以内の救出が重要であり、消防や自衛隊の救援体制が整う以前が想定されるだけに、地域の方々の救助活動の重要性がお分かり頂けると思います。

 次に、上記のアンケートで3番目に挙がっていた不安要因の「電気・ガスなどライフラインの途絶(86.0%)」について、阪神・淡路大震災のライフラインの復興状況をみていきます。阪神・淡路大震災では、水道の断水が約130万戸、ガスの供給停止が約86万戸、停電が約260万戸、電話の不通は30万回線を超えました。1月17日に地震が発生して、その復旧状況をみていきますと、電気が1月23日に復旧、電話が1月31日に復旧、上水道が3月29日に復旧、ガスが4月11日に復旧、下水道が4月30日に復旧しています。交通網に関しては、新幹線が4月8日に復旧、名神高速が4月20日に復旧、中国自動車が7月21日に復旧しています。都市機能の全面復旧には、時間がかかるのがお分かり頂けると思います。(部分復旧に関しては、上記の期日より前倒しとなっています)

 私たちは、阪神・淡路大震災の教訓を忘れずに、次の地震に常日頃から地域と連携を図りながら備えていきたいものです。9年を迎えたばかりですが、現在、阪神・淡路大震災の地域では、官民が「創造的復興」の目標年次とする2005年1月を控え、震災10年の節目に向けた取り組みが本格化しています。兵庫県が「阪神・淡路大震災10周年記念事業推進会議」を、神戸商工会議所が「We Love KOBE運動実行委員会」を立ち上げました。神戸市も2004年12月から2005年12月を実施期間とする各種事業を予定しています。また、神戸大学も事業委員会を設置しています。

 ドラマの世界でも、現在、NHK朝の連続テレビ小説では「てるてる家族」が放映されていますが、阪神・淡路大震災から2005年1月で10年になるのに合わせ、次の次となる今年(2004年)秋に始まるNHK朝の連続テレビ小説では、震災で父を亡くした神戸市生まれのヒロインの物語になることが決まっています。ストーリーの概要は、ヒロインが高校時代に被災して母の故郷の宮崎県に移り住み、自然と建物が調和する住宅づくりを志した建築家の父の夢を実現しようと決意します。そして、大学卒業後に神戸に戻り、造園家の道を歩みます。プロデューサーは「復興した街並みや産業、震災を通じて生まれた人のつながりを描き、神戸の今を知ってもらいたい」と語っています。ちなみに、次回の2004年3月29日から始まる朝の連続テレビ小説は、仙台のささかまぼこを舞台にした天花(てんか)です。

 最後に、最新情報を提供いたします。死者約1万人、倒壊家屋約46万棟の被害が想定される東海地震に関する国の情報発信が2004年1月5日から大きく変わりました。地震発生の切迫度が高まるのに合わせて「観測情報」「注意情報」「予知情報」の3段階で情報が出ることになり、住民らは「黄信号」にあたる「注意情報」の段階で、これまでより早く、防災準備に取りかかることになります。地殻の伸び縮みを検知する「ひずみ計」の観測結果に基づき、「観測情報」や「注意情報」などが出され、切迫度が最も高くなると気象庁が「予知情報」を出し、同時に首相は「警戒宣言」を発令して交通や経済活動を規制します。従来は警戒宣言で防災準備に入る仕組みでしたが、より早く防災態勢が取れるよう、今回新たに「注意情報」を導入し、準備開始の基準としています。

 連携という視点では、被災後のまちづくり支援として、阪神・淡路大震災の教訓を生かして、弁護士や建築士、税理士ら専門家が知恵を出し合い住民を支援しようとする動きが各地で広まっています。阪神・淡路大震災の復興では、住民らは崩壊した町の再開発、全壊や半壊したマンションの再建など、これまでに経験したことがない事態に直面しました。土地の境界線の画定、マンションを補修するのか立て直すのかなど住民間の利害が対立し、復興が進まない例も多かったようです。被災後のこのような際に支援を行おうという動きです。我々は、様々な視点から阪神・淡路大震災の教訓を生かして、地震のみならず災害に強いまちづくりを地域住民挙げて進めていく必要があります。

 地震についての必要最低限の備え(知識)については、「地震一口メモ」に載せていますので、一度ご覧いただき参考になさって下さればと思います。また、以前に、ある市の地域防災計画策定(地震対策編・一般対策編)に携わったことがあり、年2回、防災の日(関東大震災の起こった日)、阪神大震災の起こった日近くに、防災にちなんだコラムを今回同様に載せております。地震防災に関するコラムは、検索コーナー・テーマ別から見ることができますので、併せてご覧下さいませ。

By Nagura

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