最上オープンカレッジ・シンポジウム“もがみの
新たな学びの場の創造を目指して”に参加して

記:2003.5.1

 山形県新庄市で開催されました「最上オープンカレッジ・特別シンポジウム“もがみの新たな学びの場の創造を目指して 〜これからの高等教育と人づくりを考える〜”(2003年3月15日開催、主催:山形県最上総合支庁、新庄市、新庄TCM株式会社、最上地方高等教育機関設置研究会)に参加して参りました。山形大学の足立先生をコーディネーターとして、山形県立農業大学校の藤田校長、新庄北高校の山科校長、新庄信用金庫の井上理事長、新庄市社会教育委員の石川氏、日本福祉大学の丸山企画・事業局長を交えパネルディスカッションが行われました。一番上の画像は、シンポジウムの会場風景を写したものです。

 最上オープンカレッジは、最上版コミュニティカレッジをめざして、最上地域の方が自分の学びたいことを、身近なところで学ぶことができる新しい学びの場として誕生しました。自分たちの住んでいる地域をフィールドにして、産業振興と商店街の活性化など地域づくりに役立つ実践的な講座を開催しています。今回は、その最上オープンカレッジにおける特別シンポジウムとして開催されました。

 最上地域を少し紹介しますと、最上地域は、山形県の北東部に位置し、新庄市、最上町、真室川町、金山町、舟形町、鮭川町、戸沢村、大蔵村の8市町村から成っています。8市町村合わせて、人口約9万6千人です。山形県に関しては、これまでに山形市界隈を中心に春夏秋冬それぞれの季節ごとに視察レポート(秋の山形冬の山形春の山形夏の山形)で紹介しておりますので、併せてご覧頂けましたらと思います。

 今回のシンポジウムは、副題として〜これからの高等教育と人づくりを考える〜と付いていますが、“高等教育”とは、高度の知識を授けるとともに、専門的職業に必要な知識・技術を授ける教育の総称のことを指します。日本においては、専門学校、高等専門学校、短大、大学、大学院などが高等教育にあたります。ちなみに、初等教育が小学校、中等教育が中学校・高等学校で行う教育のことを言います。

 まず、今回のシンポジウムのなかで紹介されました最上地域における最近の高等教育という観点の動きを見ていきます。今回のコーディネーターの足立先生は、山形大学地域共同研究センターの助教授であり、今年(2003年)4月に最上地域と庄内地域に地域共同研究センターのサテライトを開設します。地域共同研究センターは、山形大学米沢キャンパス内にあり、すでに山形駅隣接の霞城(かじょう)セントラルの建物の中にサテライトを置いています。地域共同研究センターは、地域社会の発展に寄与し、民間機関等との連携を深めるために平成4年4月に設立されました。国立大学は、2004年度から独立法人化となるため、真に開かれた大学としての役割を果たす上でも、この地域共同研究センターは今後さらに重要になってくるように思います。県内の大学が最上地域にサテライトという形態で窓口をおく意義は、大きいと思います。地域の方が、どんどんと敷居が高いと思わずに、大学側に相談を持ちかけたら良いと思います。

 その他、昨年(2002年)9月に、新庄市に早稲田大学新庄バイオマスセンターが設立されました。また、今年(2003年)4月には、早稲田大学最上オープンカレッジ新庄校が開校しています。早稲田大学最上オープンカレッジでは、早稲田大学のオープンカレッジ遠隔講座を衛星通信により提供しています。「マーケティング思考をみがく」「英語トレーニング法」などの講座が衛星で最上地域にいながらリアルタイムで受講できます。また、会場からインターネットやFAXを活用して質議等も出来ます。

 早稲田大学新庄バイオマスセンターは、民産官学連携のもと、最上地域が持続可能な循環型社会モデル地域として、情報発信基地となることを目指しています。バイオマスとは、生物(バイオ)の現存量(マス)を表す言葉で、一定量集積した生物体に由来する有機資源(石炭・石油などの化石資源を除く)のことで、身近な例として、炭や薪、家畜糞などが挙げられます。化石資源の上に成り立っている大量生産、大量消費、大量廃棄の社会により、ごみ問題、二酸化炭素の増加、公害問題など環境問題をクローズアップされているなか、風力や太陽光などの自然エネルギーの中でも注目されているのがバイオマスエネルギーです。

 バイオマスエネルギーとは、バイオマス(炭、薪、剪定枝葉などの林業系廃棄物、畜産廃棄物、農業廃棄物、蟹の殻や貝殻などの漁業廃棄物など)を燃料などに変化させ利用するエネルギーです。わかりやすく言えば、バイオマスは、木材や農産物を分解して燃料などで使います。アメリカやブラジルでは自動車燃料としても普及しつつあります。日本でも、滋賀県愛東町、新潟県上越市、滋賀県新旭町、三重県藤原市、兵庫県伊丹市、香川県善通寺市、鹿児島県曽於郡、千葉県などで菜の花プロジェクトという取り組みで、菜の花を栽培し、食用にした後で、廃食油を燃料化して、公用車やゴミ収集車の燃料として活用しています。これらの取り組みは、廃棄物の発生を抑制し、生物由来資源であるバイオマスを活用することで、持続的に発展可能な循環型社会を実現しようというものです。

 上記の山形大学、早稲田大学以外に、今回パネリストとして招かれました愛知県にある今年(2003年)創立50周年を迎える日本福祉大学も最上地域と深いつながりがある大学の一つです。最上地域にある最上町は、1990年代に入って、医療・保健・福祉の重視政策がとられ、総合福祉施設「ウェルネスプラザ」を開設するなど健康福祉の町として有名です。数年前から最上町長が日本福祉大学でゲスト講師として講議を行ったり、日本福祉大学の学生が最上町で福祉実習を行ったりと交流を深めてきました。そのような中、昨年(2002年)7月に福祉のまちづくりを進めている最上町と日本福祉大学が友好協力協定を結びました。そして、今春(2003年度)の入試では、自治体推薦枠制度を創設し、日本福祉大学社会福祉学部に2名の合格者を出しています。自治体推薦とは、最上町が地元出身者を中心に福祉やボランティア活動に熱心な学生を対象に推薦し、推薦入学試験を受けるものです。そして、日本福祉大学は、卒業後地元の最上町に帰って活躍できる人材を育てていきます。友好協力協定では、自治体推薦以外に、大学側が町の福祉施策や将来計画の策定作業に関わったり、高校生の進路活動の支援などを行います。一方、町側は、日本福祉大学の学生の教育研究や学習活動のフィールドの場として支援します。

 また、日本福祉大学は、地元で、福祉の先進地として有名な愛知県高浜市とも地域連携の取り組みを積極的に行っています。地域のものづくり拠点として高浜市が設置して、市の委託を受ける形で日本福祉大学が市民ボランティアの協力を得ながら運営している“ものづくり工房「あかおにどん」”はじめ、同様に公私協力方式で運営されている地域の活性化と市民のQOL(Quality of Life:生活の質、人生の質)の向上を目指して設置された「高浜市いきいき広場」など地域連携の取り組みを行っています。高浜市での取り組みは、以前に視察レポート「福祉の先進地として名高い高浜市を訪ねて」の中で紹介しておりますので、併せてご覧頂けましたらと思います。あと、地域連携という観点では、日本福祉大学が本部となって1999年10月に設立した愛知県知多地域を中心とする産業界との連携組織「知多ソフィアネットワーク」があります。知多ソフィアネットワークは、知多半島の特徴を生かした観光や交流事業の振興、知多のイメージアップを図る商品開発、景観整備などさまざまなプロジェクトの取り組みを行っており、地域連携の力で知多半島を盛り上げています。また、先程の最上町との友好協力協定を紹介しましたが、同様に、長野県宮田村、富山県平村とも友好協力協定を結んでいます。学生という視点では、岐阜県の郡上八幡で、日本福祉大学の学生たちがゼミの一環として、フィールドの場として地域活動している様子を視察レポート「“水の都”冬の郡上八幡を訪ねて」の中で紹介しておりますので、併せてご覧頂けましたらと思います。

 今回のコラムでは、山形大学、早稲田大学、日本福祉大学のさまざまな取り組みを紹介してきましたが、今回のシンポジウムの焦点である最上地域における人づくりのパネリストの方々の意見を集約しますと、“地域で活躍できる人材・郷土を誇れる人材を育てたい”“最上地域の良さ・持っている資源を生かした高等教育を提供したい”“子供たちが戻ってくるような魅力ある地域づくりを続ける必要がある”などが挙げられます。山形県は、地域地域で独自性というか気風の違いがかなりはっきりしている県であり、その中でも最上地域は人口規模が少ないことからあまり大きな開発もされずにいい意味で日本の原風景が残っている地域です。それだけに、今持っている自然なりの地域資源を最大限に生かしながら、さまざまな地域とさまざまな大学とネットワークを組んでより良い高等教育のあり方を作り上げていって欲しいと思っております。

 大学も大競争時代を迎え、これまでの既成概念にとらわれない新たな高等教育機関のあり方を最上地域から発信して頂きたいと思っております。余談ですが、今春開校したある大学の入学式における来賓の方が祝辞の時に、新入生に向かって「日本の大学生の特徴は何でしょう」と問いかけて、虚をつかれた表情を浮かべる学生たちに向かって間髪入れずに「世界一勉強しないことだ」と言い放ったそうです。ある意味、的(まと)を得ていると言えますが、高校生はじめ社会人、留学生などのニーズを広く吸い上げた教育を実践している、いわゆる流通業界では当たり前に行われている“顧客マーケティング”を実践している大学がまだまだ少ないことも確かです。受け入れる側の大学、そして、学ぶ(受験する)側の高校生はじめ社会人、留学生など双方のより一層の向上がこれからの日本における高等教育に求められていると言えます。

 山形県の話題のおまけとして、政府が地域限定で規制緩和する構造改革特別区域(いわゆる特区)の第一弾として、2003年4月21日に認定書の授与式が行われました。全国で57件が認定を受け、山形県でも2件が受けています。山形県が申請した「超精密技術集積特区」と鶴岡市が申請した「鶴岡バイオキャンパス特区」の2件で、どちらも大学と企業が協力して、新産業を育てる産学連携のタイプです。

 最後に、読者の方から情報提供を頂きました愛知県の学生の皆さん向けに公募を紹介します。愛知県(担当部署:企画振興部企画課)が今年度(2003年度)、学生提案型地域づくりモデル事業を実施しています。学生グループから地域づくりに関する施策アイデアを募集しています。概要は、選ばれた優れたアイデアについて、県の関係部署でインターンシップの受け入れ等を通じてアイデアを具体化計画の作成を支援し、その計画に基づく研究や活動について、県がモデル事業として実施に要する経費を負担することにより、学生グループの取り組みを支援するというものです。

 アイデア募集が2003年5月30日までで、選ばれますと1グループ50万円以内で研究または活動資金が支給され、2003年3月まで事業展開されます。応募締めきりまで1カ月余りですが、愛知県の学生の皆さん是非、応募されてはいかがでしょうか。詳細は、愛知県企画振興部のホームページをご覧下さい。あと、愛知県では、商店街インターンシップ事業を昨年度に続き実施される予定です。昨年度は、瀬戸市の中心市街地商店街と名古屋学院大学において実施され、今年度は、名古屋市八事界隈の商店街と中京大学において実施される予定です。

 学生はじめ大学と自治体や商店街との連携は、ざまざまなところで進んでいます。視察レポートとしては、まだまだ少ないですが、検索項目「学生・大学における連携の取り組み事例(商店街・行政などとの連携)」を設けています。クリックして頂きご覧頂けましたら幸いです。学生・大学とまちづくりという観点では、これからも数多く紹介していきたいと思っております。

By Nagura

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