400年の歴史を誇る尾張(名古屋)の
伝統工芸“有松絞り”を考察する

記:2003.3.2

 絞りの町有松は、名古屋市緑区にあります。江戸時代のはじめ、徳川家康が江戸に幕府を開いてまもない慶長13年(160有松しぼり作業風景8年)に、絞開祖竹田庄九郎らによって誕生しました。有松絞り400年余の歴史は、尾張藩が有松絞を藩の特産品として保護し、竹田庄九郎を御用商人に取り立てたことからはじまりました。

 江戸の当時は、東海道を行き交う旅人たちが郷里へのみやげにと、きそって絞りの手ぬぐいや浴衣などを買い求め、やがて街道一の名産品に成長していきました。当時の有松を浮世絵にした安藤広重は、東海道五十三次の宿場風景に、鳴海の宿「名物有松絞り」を描いて後世に残しています。

 有松絞りの話を進める前に、有松という地域について少し紹介します。有松は、現在も国道1号線に沿ってある旧東海道沿いに古い町並みが続いています。約200年前の大火事後に建てられた古い家屋は、どれも防火のためのうだつを設けた白壁づくりで、4軒が県や市の有形文化財に指定されており、有松一帯も名古屋市町並保存条例の第一号(昭和59年3月地区指定)に指定されています。また、「有松・鳴海絞り」も、愛知県で初めての「伝統的工芸品」に指定されています。有松の紹介は、以前に視察レポート「宿場町・有松」で紹介しておりますので、併せてご覧頂けましたらと思います。

 有松絞りの特徴は、その技法の多さにあります。有名な鹿の子絞りはもちろんのこと、巻き上げ絞り、蜘蛛入り柳絞り、三浦絞り、嵐絞り、桶絞り、筋絞り、板締め絞り、縫絞りなどその数は100近くにのぼるといいます。機械に頼らず、今も先人たちの考え出した道具を使って一粒一粒を丹念に縫い上げるため、同じ柄でも絞る人の力加減で柄が微妙に違ってくるのも魅力の一つです。豊富な技法と手縫いの技が多様なデザインを生み出しています。一番上の画像が、今も続く熟練の縫い子さんが機械に頼らず縫い上げていく様子を写したものです。この縫い子さんの絞り技法の実演は、有松の町並みの通り沿いにある「有松・鳴海絞会館」(水曜日休館)で常時見ることができます。また、毎年6月の第一土・日曜日に開かれる「有松絞りま神の井酒造つり」では、通り沿いの格子戸を大きく開けて、数十人の縫い子さんがさまざまな技法を実演します。

 現在の絞りの状況は、長引く消費の低迷で絞りの需要も落ち込みが続いています。後継者不足が問題化しており、有松絞りまつりを通して、伝統工芸を広く次世代に伝えていきたいという思いもあるようです。地元の方たちは、年に1回の祭り以外に、有松の白壁の町並みツアーの実施や絞り職人たちが近隣の小学校や幼稚園に出向き、子どもたちと共に、絞りTシャツの体験実習なども行って、伝統ある有松絞りの伝承にがんばっています。一番上の画像のおばあちゃんの絞り技法を目の前で見てきましたが、本当に“手仕事の美と技”であり、いとも簡単になにげなく作業していますが、長年の経験が育んだ技と匠に感動させられます。

 手作りだけに大量生産できないという面や後継者不足という課題はありますが、時代は、有松絞りのような伝統工芸という捉え方にも増して、本当に良いもの、素晴らしいものを見直し再発見する動きが出てきているように思います。時代の追い風が吹き掛けている今こそ、有松の地元の方たちが広く伝え伝承していくチャンスの時と思います。時代の流れを一つ二つ紹介しますと、最近、着物を着る女性が増えてきている点が挙げられます。それも、大正末期から昭和初期にかけて作られたアンティーク着物が人気を集めています。当時の柄が今の若い女性に新鮮に映ったり、人と違うものが着たいという思い、洋服のように流行を追わなくていいなどさまざまな理由で人気が出ているようです。また、アンティークという低価格で購入できる点も魅力であり、その観点では、一つ一つ手作りの有松絞りは難しい面はありますが、着物を着る女性が増えていく流れの中で、着物に対する見る目や価値観(付加価値)の高まりも予測され、売り出し方はいろいろあると思います。

 もう一つの後継者問題に関しては、就職難の時代、職人を目指す若者が増えています。さらに、親が望む子どもの職業にも変化が出てきており、1993年にはベスト10外だった職人(15位)が、2002年には、公務員、スポーツ選手、医師に続き、4位に“職人”(クラレ調べ)が入っています。職人には、大工はじめ、宮大工、靴職人、パティシエ(洋菓子職人)、時計職人など高校卒業生だけでなく大卒女性や社会人も目指す方が増えているようです。傾向としては、時計、靴といったファッション関係の分野、伝統工芸や宮大工、高級洋菓子といった製品の付加価値が高い分野に人気が集まっているようです。その観点から“有松絞り”は、手作りであり100近くの技法があるだけに、付加価値は十分高いです。付加価値が十分あるだけに、あとは、イメージ戦略的なものを打ち出していくと目指す若者も出てくるのではないかと思います。有松は、地元の方たちが、まちを盛り上げようと活動されていらっしゃるだけに、時代の転換期を迎えている今がチャンスの時ですので、是非がんばって頂きたいものです。

 最後に、同じ名古屋市緑区にある名古屋の地酒をつくっている酒造を紹介します。上から4番目の画像は、神の井酒造の入り口前を写したものです。JRの大高駅から徒歩で10分程度のところにあり、酒蔵見学と試飲ができます。それもすべて無料です。この界隈には、神の井酒造と山盛酒造があり、両方をはしごして酒蔵見学と試飲をしてきました。有松絞りの視察とは、別の日に行きましたが、試飲で酒を飲むことを想定して、両方行かれる場合は、JR大高駅と名鉄有松駅の間は、タクシーを使っても10分程度で数千円程度で行けます。次いでに併せて行かれてもいかがでしょうか。あと、日本酒の一口メモとして(特に女性の方に)、日本酒とお肌の間には、「うるおいを保つ」「つやを増す」「老化を防ぐ」「白さを与える」「ストレスを解く」の5つの効果があるそうです。日本酒は、お肌にとって若さを保つ水というお話もされていました。けっして、日本酒業界のまわし者ではありませんが、“酒は百薬の長(適度の飲酒はどんな薬にもまさって効果があるとの意味)”といわれるように、ほどほどに飲む分には健康に良いのでしょう。

By Nagura

リターンイメージリターンイメージリターンイメージリターンイメージリターンイメージ