日本の風流・風雅(京都・奥座敷貴船の川床と
岐阜・長良川の鵜飼体験を通して)を考察する

記:2002.11.1

 今回のコラムでは、京都の奥座敷・京都川床料理貴船(京都市左京区)の川床(かわどこ)料理と岐阜県を流れる長良川の鵜飼を紹介します。どちらも夏の風物詩として有名ですが、秋の気配が感じられる9月にどちらも行ってきました。

 京都の貴船は、京都市の北部にあたり、京都駅から40分ほど車(バス)で行ったところにあります。水の神様として知られる貴船神社があり、貴船神社から牛若丸が修行した鞍馬山を越えて鞍馬寺へ行くこともできます。

 貴船の川床料理は、5月、6月くらいから9月末あたりまで楽しめます。一番上の画像を見て頂きますとわかりますが、川床料理とは、流れる渓流貴船川(鴨川の源流)の上に板を渡して、畳を敷いて座敷をつくり、その上で川のせせらぎを聞きながら会席料理を楽しむものです。川の水の流れとその川面から数十センチほど上で料理を楽しんでいる人々が画像からご覧いただけることと思います。盆地で暑い京都ならではの風流な楽しみ方と言えます。貴船は山間部にありますので、京都市内の街中より涼しいですが、川面はさらに涼しく、体感温度ではかなり違うと思います。私が行った時は、シーズンも終わりに近い9月中旬で天候も曇りであったため、肌寒さも感じられました。それでも、多くの方が川床で料理を堪能されていました。名物の流しそうめんを食べている子供たちの姿も見られました。

 川床料理は、夏の涼を求めて、川面の涼風による体感温度的な涼しさとともに、水の流れを見ることによる視覚的な涼しさ、川のせせらぎを聞くことによる聴覚的な涼しさもあり、そして、手を伸ばせば流れる水に触れることもできる中で味わう料理です。まさに“見る”“聞く”“嗅ぐ”“味わう”“触れる”という人間が持っている五感をフルに活用して楽しむものが『川床』と言えます。

 日本の“風流”“風雅”“わび”“さび”というものは、春、夏、秋、冬と巡ってくる四季が日本人の感性を豊かにし、そのあらわれだと思います。特に、夏暑く、冬寒いというメリハリのある京都は、歴史の深さも加わって、京都という風土が、より感覚的に自然に溶け込む術を育んできたような気もします。川床の貴船は、夏の風流を醸し出していますが、夏だけでなく、秋は紅葉、冬は雪見のぼたん鍋、そして季節は巡り春はさくらと四季折々、贅沢なひとときを過ごすことができます。

 ちなみに、貴船の紅葉は、2002年10月27日現在では、少し色づきはじめており、真っ赤に染まる見頃は平年並みの11月上旬〜中旬頃と予想されています。昨年(2001年)は、11月10日〜20日頃が見頃でした。貴船の紅葉の特徴は、貴船山と鞍馬山に囲まれた幽玄な谷間に位置しているため、モミジだけが紅葉するだけでなく、カツラ、カエデなどの紅葉樹、山全体が真っ赤に紅葉する点です。また、最後に、川床料理における蛇足ですが、貴船の川床料理は、京都ならではの舞妓さんと一緒に食べるプランも用意されています。華やかに、あでやかに、お座敷遊びを楽しんでみたい方にはお勧めと言えます。

 次に、日本の風雅とも言える“鵜飼(うかい)”を紹介します。私の住岐阜長良川鵜飼んでいる東海地域で鵜飼と言えば、犬山の鵜飼、岐阜の鵜飼が有名ですが、今回、岐阜の長良川の鵜飼を楽しんできました。

 鵜飼は、鵜(ウ)を使い鮎などの魚を捕る漁法で、長良川ではおよそ1300年(西暦702年の史料より)ほど前から行われています。鵜飼は、夏の夜にかがり火を燃やし、鵜匠のたくみな手縄さばきで、鵜がつぎつぎに水にもぐり鮎を捕らえます。鵜とは、ペリカン目ウ科の鳥の総称で、上から2番目の画像に鵜が写っていますが、中・大形の黒色の水鳥です。画像からも分かりますが、首が長く細長い体つきで、くちばしが長く先が鋭く下に曲がっています。水に潜って魚を捕り、のどにある“そのう”に一時貯える習性があります。この習性を利用して鵜飼が行われているわけです。「鵜の真似をする烏(カラス)」という諺(ことわざ)があるように、カラスに似ていると思われた方があるかも知れません。ちなみに、ことわざ「鵜の真似をする烏」は、姿が似ているからといって烏が鵜のまねをして魚を捕ろうとすると水におぼれることから、能力を考えないで、他人のまねをする者、また、まねをして失敗することのたとえとして使われています。

 昔は、織田信長や徳川家康など時の権力者によって鵜飼が保護され、川のいろいろな権限を与えられ、21人の鵜匠がいたと言われています。しかし、明治維新以後、特別な保護もなくなり、鵜匠をやめる人が続きましたが、明治23年からは宮内庁に属し、現在に至っています。鵜匠は、世襲で受け継がれ、長良には6人います。正式な職名は、宮内庁式部職鵜匠といい、長良川の鵜飼用具一式122点は国の重要有形民俗文化財、長良川鵜飼漁法は岐阜市重要無形文化財に指定されています。

 鵜飼は、毎年5月11日〜10月15日まで行われています。私は、シーズンの終わりに近い9月末の週末に行きましたが、観光バスも来ており、観光客でけっこう賑わっていました。1300年の歴史を誇る鵜飼を食事をしながら観覧船から見ましたが、夜7時半頃から始まり、かがり火の中で行われる鵜匠の鵜のさばきは、上から2番目の画像からも雰囲気がお分かり頂けるのではないかと思いますが、幽玄さとともに、幻想的な世界が感じられました。最後に、長良川を取り巻く最近の話題として、2002年10月12日に長良川鵜飼大使として、落語家の桂三枝さんが選ばれました。三枝さんの父方が岐阜県本巣町の出身だそうです。また、既に長良川鵜飼大使として活躍している方には、マラソン選手の高橋尚子さん(岐阜市出身)がいます。

 今回のコラムでは、“川床料理”“鵜飼”を見てきましたが、全国各地でその土地ならではの、その季節季節にあった旬の風物詩なる「日本の良さ、日本の風雅・風流を感じさせる行事」があることと思います。皆さんも一度、住んでいる地域の再発見、再認識をされてはいかがでしょうか。

By Nagura

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