講演「〜今、コミュニティビジネスが面白い!」
を聞いて

記:2002.8.1

 商店街の空き店舗を活用して環境問題や高齢者支援など地域に密着した「コミュニティビジネス」を育成しようと、愛知県ではコミュニティビジネス、今年度(2002年度)モデル事業を始めます。愛知県は、安城市と一宮市の2市をモデル地区に指定し、両市では、商店街と地域住民らが協力して、地域が抱える課題や今後のまちづくりの検証を開始しています。

 「コミュニティビジネス」のモデル事業の一環として、私の住んでいる安城市で株式会社アモール・トーワの林千尋氏(専務取締役)を招いて、講演「〜今、コミュニティビジネスが面白い!」が行われました。講演は、主催が愛知県で、協力として、安城市、安城商工会議所、愛知県商店街振興組合連合会、まちづくりAnjoが入る形で行われ、ちなみに“まちづくりAnjo”は、中心市街地活性化に関わる各種団体の活動を図ることを目的として設立されたタウンマネジメント機関です。

 今回のコラムでは、講演の内容含めコミュニティビジネスの事例等を紹介していきたいと思います。コミュニティビジネスをおおまかに捉えますと“地域の問題を解決する”ビジネスであり、営利追求一辺倒ではなく、社会奉仕という概念も含まれます。しかし、ビジネスとして展開していく以上、継続して安定的に経営していかなければ、逆に利用者(お客様)が困ってしまうわけで、事業を継続していくための利潤を求めていく必要はあります。コミュニティビジネスは、従来の民間企業が行っているビジネスと違って、利潤と地域活性化・地域貢献などの奉仕活動のバランス感覚が求められている点、安定経営の難しさがあるかも知れません。働き手にとっては、社会奉仕(ボランティア)など仕事を通しての社会貢献ができて、なおかつ報酬も頂けるという点では、充実感をもって働ける環境と言えます。まあ、どんな仕事でも、何らかの形で社会貢献はしていますが、コミュニティビジネスは、限られたエリアの地域を対象としているだけに、より目に見える形で実感が感じられるものと思います。コミュニティビジネスの意味合い的なものついては、以前にコラム「コミュニティ・ビジネスを考察する(2001.6.2)」で紹介してありますので、併せてお読み頂けましたらと思います。

 冒頭で紹介しました愛知県のコミュニティビジネスを育成しようとする事業の正式名称は「商店街地域新事業発掘事業」で、安城市と一宮市の両市でモデル事業関連予算として、468万円を計上しています。事業の流れは、今年度(2002年度)に、商店街と地域住民による検討会を計5回開催し、具体的な事業を策定した後、来年度(2003年度)から空き店舗を活用し実際に起業していく計画です。愛知県商業流通課は、「商店街への単なる助成金ではなく、地域社会全体でまちの活性化を考えてもらうきっかけにしたい」と強調しています。起業の対象は、高齢者への宅配サービスやホームケア、リサイクル工房など地域に密着した事業を想定しています。また、住民の意向をできるだけ反映させるため、今夏までにアンケート調査も実施する計画です。

 ここで、コミュニティビジネスの具体例として講演されました株式会社アモール・トーワの特徴、事業内容等を紹介します。アモール・トーワは、東京都足立区にある東和銀座商店街が立ち上げた株式会社です。設立(平成2年6月)当時は、NPO法がなかったこともあり、株式会社形態でスタートしています。今では、収益を上げ株主に配当もしています。アモール・トーワの会社の数字をひろってみますと、資本金1350万円(出資者:東和銀座商店街振興組合員41名)、売上高約4億円、従業員約150名(うち正社員約30名)、代表者:田中武夫氏となっています。

 事業の主力は、学校給食事業で、足立区はアモール・トーワに小学校7、中学校1の計8校の学校給食を委託しています。アモール・トーワの売り上げの半分を学校給食が占め、安定した収入源になっています。学校給食以外には、病院内のレストラン・売店経営、高齢者への弁当宅配、清掃事業、鮮魚店、パン屋、漬物屋経営(アンテナショップ)などを行っています。講演の中で、林さんが話されていましたが、商店街の空き店舗を活用した鮮魚店、パン屋などは単独では収益を上げるまでには至ってないようです。しかし、商店街として鮮魚店がないことはお客様にとって不便(特に魚、肉、野菜の生鮮3品などは)であり、収益性よりもお客様の利便性を考えて、鮮魚店が店をたたむ時に、アモール・トーワが経営を肩代わりして引き継いだ形です。収益事業というよりも、不足業種の営業であり社会貢献活動と言えます。

 その他、コミュニティビジネスという視点では、商店街を蘇らせる豪快親父として安井潤一郎氏の率いるエコ商店街として有名な東京・早稲田商店街があります。安井潤一郎氏は、講演で全国を回っており、昨年安城市に来た時に私も聞いてきました。その時の模様と早稲田商店街の取り組みをコラム「早稲田大学周辺商店街の取り組みを考察する」で紹介しておりますので、併せてご覧下さいませ。安井氏は、早稲田商店会の会長の他に、全国の商店街をつなぐ組織「株式会社商店街ネットワーク(2000年8月設立)」の会長でもあります。主な業務内容は、上記のコラムで紹介してありますので、ここでは、これからサービスを始める新事業(2002年11月サービス開始予定)について述べます。それは、「震災疎開パッケージ」というもので、地震などの自然災害が起きた時に最長3カ月、提携先地域の宿泊施設に身を寄せられる“保険”です。この商品開発に至った経緯は、1997年の阪神・淡路大震災にさかのぼり、“地震が起きる前に疎開先を決めておくことが大事”ということから、地域ぐるみの助け合いのアイデアがひらめいたそうです。「震災疎開パッケージ」サービスは、全国の商店街と連携している商店街ネットワークだからこそできるサービスと言えます。

 最後に、コミュニティビジネスの需要が高まっているのを背景に、働き手自らが運営に参加し地域に密着した事業を展開する“ワーカーズコレクティブ”が注目されていますのでその紹介をします。ワーカーズコレクティブは、働き手が対等な立場で出資・運営する(働く人が全員で出資金を出し合い、事業を行う)ことを理念とした非営利の組織です。現行法に定義がないため、外部との契約などの便宜上、特定非営利活動法人(NPO法人)になる例も増えましたが、あくまで全員運営を基本に据えています。ワーカーズコレクティブは、地域に密着した事業を手がけ、担い手のほとんどは主婦です。この2年間で100団体以上のワーカーズコレクティブが増えるなど急拡大している背景には、主婦の経験が生かせる高齢者介護や子育て支援を求める声の高まりがあると言えます。

 今回のコラムでは、コミュニティビジネスについて見てきましたが、ある種の“ニッチ(隙き間)ビジネス”、かゆいところに手が届く部分のビジネス化と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。まさにそのようなビジネスであり、地域における人と人のつながり・交流の中から生まれていくと言えます。それと、再度繰り返しになりますが、“コミュニティビジネス”といえどもビジネスと付いている以上、コミュニティビジネスをマネジメントしていく人材、経営力も必要となってきます。そのような観点をきっちりと押さえた上で、皆様方も自分の周りにおける問題解決の手段として、コミュニティビジネスを起業されてはいかがでしょうか。

By Nagura

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