各地で協議が活発になっている
市町村合併について考察する

記:2002.6.5

 最近、全国各地で市町村合併に向けての取り組みや話し合いが活発になっていると感じられていらっしゃる方も多いのではないで平成の市町村大合併しょうか。最近の動きのことをちまたでは“平成の大合併”と言われていますが、平成になって現在まで44市町村が合併しています。

 ここ最近の主な市町村合併を挙げてみますと、新潟市と黒崎町が合併して新潟市(2001年1月合併)、田無市と保谷市が合併して西東京市(2001年1月合併)、茨城県の牛掘町と潮来町が合併して潮来市(2001年4月合併)、浦和市、大宮市、与野市の3市が合併してさいたま市(2001年5月合併)、岩手県の大船渡市と三陸町が合併して大船渡市(2001年11月合併)、香川県の津田町、大川町、志度町、寒川町、長尾町の5町が合併してさぬき市(2002年4月合併)、沖縄県の仲里村と具志川村が合併して久米島町(2002年4月合併)などとなっています。

 現在、262の市町村が合併協議会を設置しています。さらに研究会まで含めますと、全国の市町村の約7割にあたる2226の市町村が合併を検討中です。現在、市町村合併が活発になっている背景には、2005年3月までの時限措置の“合併特例債”(1999年に創設)が大きく影響しています。2005年3月までに合併すれば、それだけのメリットがあるということです。

 “合併特例債”とは、合併市町村が、まちづくり推進のため市町村建設計画に基づいておこなう事業や基金の積立に要する経費について、合併年度およびこれに続く10カ年度に限り、その財源を借り入れることができる地方債のことをいいます。合併した市町村が起債した合併特例債の元利払いの7割は国が配分する地方交付税交付金で補われます。要するに、この仕組みを使えば、合併後10年間は交付金が増えるという流れです。まあ、財政状況が深刻な自治体が多い中、特例債のメリットは10年間でなくなるため、その10年の間に支出削減、効率化を図っていく必要はあります。

 平成の大合併の急増は、特例措置の影響があることがお分かりいただけたことと思いますが、なかには自治体そのものも苦しい立場に追い込まれている現状もあります。税収が減る一方で膨大な借金の返済費や福祉関係経費の負担が増え、市町村の財政運営が立ち行かなくなっています。財政基盤が弱い自治体を国が交付税で救済する構造も限界を迎えており、地方分権の健全な受け皿のためにも体が大きくて力がある自治体にならざるを得ない背景もあります。現在、全国に約3200の市町村がありますが、明治以前は7万以上ありました。それが、明治から昭和中期にかけて着実に減ってきましたが、1970年代以降はほとんど減っていない状態です。

 次に合併のメリット、デメリットをみていきますと、合併の最大の利点は、役所の人件費や公共投資などの行政コストの削減です。問題視されているのが、北海道などでは合併の仕方によっては、都道府県並みの面積になってしまう地域もあり、市役所までの距離が地域によって遠くなってしまう点と合併後の新市役所など中心部に人口が集中して、市役所から離れている地域はますますさびれるという警戒心も根強いです。

 その他動きとしては、今回の市町村合併は、市町村再編にとどまらず、都道府県の形をも変えようとしています。県境を超えた合併や、政令市が周辺自治体も巻き込み都道府県並みの権限、規模を持とうという動きも出てきています。県境をまたぐ合併で最も動きが進んでいるのが、視察レポートで紹介しています観光地・馬籠のある長野県山口村と岐阜県中津川市の合併の動きです。山口村と中津川市は、任意の合併協議会を設立して2004年秋の合意を目指しています。実現すれば、1959年(昭和34年)の群馬県桐生市と栃木県の旧菱村以来の県境を超えた合併となります。山口村と中津川市以外では、岩手、宮城両県境や島根、山口両県境でも同様の構想が浮上しています。

 政令市の権限強化を目指す動きでは先頭を走るのは、大阪市です。政令市より権限が強大で、大阪府から事実上独立する「特別市」への移行を模索しています。特別市を巡っては、京都市神戸市も関心を示しています。(補足説明:特別市は、1956年の地方自治体法改正まで存在していた制度で、復活を働きかけている状況)その他、都道府県の枠を超えた広域行政単位とする「道州制」についても研究が始まっています。国、都道府県、市町村という現在の3層制は何らかに見直しが必要という機運が高まってきています。

 ここで、先日公表された合併に関する市民アンケート結果を参考程度に記載します。私の住んでいる愛知県安城市が実施した碧海5市(安城市刈谷市知立市、高浜市、碧南市)の合併について実施した市民アンケート(2002年6月3日公表:3月〜4月に20歳以上の同市民5千人を対象に郵送で実施し2,313人から回答))をみますと、肯定的な意見(賛成とどちらかというと賛成の合計)が46.4%を占め、否定的な意見(反対とどちらかというと反対の合計)の31.1%を上回った結果となっています。主な結果をみますと、賛成理由で最も多かったのは「経費削減ができる」で、合併特例法の期限内に合併すべきだという意見が目立っています。一方、反対理由では「きめ細かい行政サービスが受けられない」が最も多くなっています。
 その他、特徴として男性は高年齢ほど賛成が多く、50代と60代の賛成は6割を超えています。また、女性は男性よりも反対意見が目立ち、20代と30代では4割近くが反対で賛成を上回っています。ただし、今回のアンケートの回収率は46.3%と5割に届かず、合併問題への関心の低さも浮き彫りにされています。

 ちなみに、先ほど紹介しました県をまたぐ合併の動きのある長野県山口村の住民投票結果(2001年11月6日〜12月26日にかけて実施、村内16歳以上の村民1783人に配布し1478人から回答)は、肯定的な意見(賛成とどちらかというと賛成の合計)が71.2%を占め、否定的な意見(反対とどちらかというと反対の合計)の17.8%と圧倒的に肯定的な指示が多くなっています。また、回答率が82.9%と関心の高さも伺えます。

 今回のコラムでは、駆け足で市町村合併の動きを見てきましたが、皆さん方の地域でも合併の話が持ち上がっているのではないでしょうか。各地域ごとの特性もあることですから、一概に合併がすべて良いというわけではありませんが、各自治体が生き残りをかけて真剣に考えなければいけない時期を迎えていると思います。その一つの選択肢が市町村合併と言えるのではないでしょうか。一昔前までは、潰れないと思われていた銀行も破綻、大学・短大など高等教育機関の学校法人も破綻する時代です。方向性・判断を誤ると自治体もばたばたと破綻していく時代を迎えようとしている中、行政とともに地域に住む住民側も自分たちの地域は、自分たちで守っていくという気概をもって参画していく時を迎えていると思います。

By Nagura

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