大手化学メーカーを定年退職した会員の亀井さんと津田さん、杉山さんの3人は、「化学を身近で楽しいものに利用したい」と技術研究所を作った。この研究所で完成した第1号の発明は、契約金500万円と実施料3%で商品化が決まった。

発明の外観は、天然の苔で形作った熊やウサギなどのかわいい動物人形である。全体が苔で覆われているので、表面にはしっとりと水分を含み、鮮やかな緑色だ。

発明のポイントは、苔の造形物に特殊加工をして、メンテナンスを不要にし、2年間はみずみずしい緑色を保ち続けるという加工技術である。亀井さん達3人は、農芸化学の知識で、花や木の切り口からグリセリン等の多価アルコールを吸わせると、長持ちすることがわかっていた。そこでこの応用から、植木に多価アルコールを吸わせて永久緑化しようという計画を立てたのである。

しかし植木の根から吸わせた多価アルコールを、枝や葉の隅々までゆきわたらせるのは大変だ。そんなとき、苔は水分や養分を表面全体から吸収する性質をもつことに気が付き、苔の全体に多価アルコールを吸収させ、長持ちさせる方法に切り替えた。

今年の4月には、特許出願を済ませ、デパートや博覧会の展示事業を展開している企業に発明が採用された。ショーウィンドーや屋内外のインテリアとして、ガーデニングの飾りとして、今後の人気が高まりそうである。