数年前から、片手で開閉できる傘が商品化され話題になっている。傘を開く時は、通常のジャンプ傘と同じだが、閉じる時は握り柄を腰に当て、柄の端を押すと傘が閉じる方式である。この傘を発明したのは、当会会員の永井久男さん(神奈川県)。当商品は、商品化されて4年経つが、永井さんがこのアイデアを思いついたのはNTTの技術系管理職のときだった。

開閉の仕組みは、傘のパイプを外管と中軸の2重構造にし、中軸を上下にスライドさせることによって傘布を開閉できるというもの。中軸の下端が握り柄に固定されていて、握り柄を腰に当てながら外管を引くと中軸が上下にスライドして、傘布を閉じる。ボタンを押すと、バネの伸びる力で中軸を押し下げるにともない傘布が開く、という仕組みである。

この発明は全国発明工夫展で奨励賞を貰ったのがきっかけで、傘メーカーが商品化を決定。メーカーは、コストを下げるためにと、いきなり100万本を作成してデパートで販売したところ、宣伝もしないままに人気商品になった。永井さんの特許料は、これまでに約500万円くらいになり、定年後の小遣いになったという。

永井さんは、持ち前の技術屋意識から、技術的な完成度を高め、今第2弾の特許出願を進めている。次の梅雨ごろには、さらに理想的な傘が商品化されてほしいものである。