日本の鎖国を破ったのは、たった4隻の蒸気船と言われている。この蒸気船と蒸気機関は、日本に驚異的なショックを与えたが、そのエネルギー源はボイラー。つまり、お湯を沸かす装置だが、古くは蒸気機関車から、現在は船の蒸気タービンや一般工場、航空母艦のジェット機発進装置にまで使用されている。

この装置は、いままで画期的な進歩がないとされていたが、このたび日本で非常に驚くべき発明がなされた。従来、ボイラーは、バーナーで燃焼させた高温ガスにより水管を熱し、蒸気をつくる構造で100年以上、変わっていなかった。ところが、大阪大学の石谷教授は、バーナーの中に、管を入れてしまうことを考えた。これは、管が破損する大変危険な事としてボイラー設計上は禁止されていた。石谷教授は、毎日家庭でガスの炎にかかるヤカンが焼損の問題のないことを見て、ボイラーでも同じことが言えるのではないか、と大学で実験をした。

ボイラーメーカーやガス会社、電力会社も加わり実験をしたところ、意外や意外、バーナー中に入れると、燃焼はかえって良好となり、焼損を起こさないことがわかった。それどころか、燃焼が管の間で行われるために低NOxとなり、省エネ化によるCO2の削減、容積や使用資材が半分と結構づくめの結果が出た。このため、地球温暖化の防止ボイラーとして脚光を浴びているのである。

この発明は、100年以上、誰も疑問を持たなかったボイラー界の常識に疑問を感じた点でワット以来のボイラーの大発明と言われている。今まで、技術的常識として守られてきた技術の中に、大発明が眠っているかもしれない好例と思う。