昨年まで続いた人気テレビ番組「発明将軍」は、茶の間に多くの発明ファンを生んだ。この番組を通じて、当会の仲間になった人も多い。藤陽治さんもその一人で昨年の6月に入会した。普通の主婦やサラリーマンが皆、楽しそうに身近な生活の中からアイデアを出しているのを見ていた藤さんにも発明が親しいものになったのである。藤さんは、個人で小学校に学習教材を販売する仕事をしている。早速、自分の身の回りにアイデアのヒントがないかと探していた。

ある日、藤さんは、小学生の誘拐未遂事件を新聞にみつけた。その子供は、知らない人から声をかけられて、ついて行ったものだが、犯人は子供の胸の名札を見て名前を呼び、いかにもお父さんの友人かのようにみせかけたという。「校外では名札を隠すようにすれば、このような誘拐事件は未然に防げる」と、藤さんはアイデアの糸口をつかんだ。

名札は、裏面に帯が縦長に付いていて、ここに安全ピンが通されている。名札を上方にスライドさせながら即座に裏返せるのがポイントだ。藤さんにとっては、特許出願も初体験だが「自分の発明だから、出願書の図面を書いたり文章をまとめたりするのがワクワクして楽しかった」という。そして、仕事の仕入先に売り込んだところ、気に入られて商品化が決まった。実施料は小売価格の3%、契約金は5万円である。

藤さんの始めての発明は、何でも工夫しようとアンテナを張っていたからこそ、発明成功のチャンスをつかんだといえよう。